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『Game of M』
【ミステリー その他小説】

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『Game of M』 第2話-1

 翔吾は頭に装着していたヘルメットを外すと両手を扉の両脇に掛け、黒い立方体のボックスの中から出た。

 【スーパーバーチャルファイト】

 略してSBFは、シュミレーターボックスと呼ばれる黒い立方体のボックスに入りヘルメットを被ることでログインし様々な環境でのバトルを楽しむ事が出来る。

 開発されてから3年、SBFは世界中で流行り、遂には世界大会が開かれるまでになったのだ。

 翔吾は拍手の渦の中をステージに向かって歩いて行った。 
 
 翔吾が通る両脇からは一際大きな歓声があがり握手を求められる。

 翔吾がステージに向かう様はリングインする格闘家のようだ。

 ようやくステージに上がると先程翔吾の名を呼んだ司会者らしきマイクを持った男が近寄ってきた。

「世界チャンプに輝いた『澤村 翔吾』君にもう一度大きな拍手をー!!」

 また大きな歓声があがったが、翔吾はまだぼーっとしていた。

(SBFの後はいっつもこうだ)

目覚めの時の様な心地よい倦怠感と覚醒の不快感。

 バトルの後いつも感じる憂鬱、しかしそれも醒め始めた。

翔吾がステージを見回すと隅の方でさっきのバトルの対戦者がこっちを見ていた。

さっきのバトル中の様な荒々しい感じはまったく無く、今は翔吾に向かって満面の笑顔で拍手をしている。

 翔吾の視線に気付き、彼はステージ中央にいる翔吾に歩み寄り右手を差し出した。

 それに答えて翔吾も右手を出し握手をすると、

「おめでとー!!君ぃ、強いなぁ!俺、かなり自信あったんだけどなぁ」

「はっ?」

見た目外国人なのにかなり流暢な日本語を話すので翔吾は面食らってしまった。

「あっ、ビックリしてるねぇ、初めての人はだいたいそういう反応するからね、俺『アレク』!!本名はアレクサンドラなんだけど女みたいだからさぁ、アレクでいいよぉ♪SBFは出てからすーぐにハマってさぁー、もぅ、好きすぎて好きすぎてSBFの生まれた日本も好きになっちゃったんだ、それでこっちの大学に留学してるってわけなんだよ♪」

一気に捲くしたてられて思わず翔吾は腰が引けて押し黙る。

(こいつ、プレイ中とギャップありすぎだろ…)

まぁ、たまにこういう奴もいる、と自分に言い聞かせ気持ちを表彰式に移した。

 その後、表彰式は滞りなく終了したので翔吾は会場を後にしようかと人の少ない廊下を選んで歩いている。

(帰る時まで騒ぎに巻き込まれるのは勘弁してくれぇ…)

 人混みが苦手な翔吾は人を避けるようにして歩いてきたが既に10人ほどの観客にサインをしてくれ、握手をして、写真撮って、などと、もういい加減うんざりしていた。


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