投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ハツミ
【OL/お姉さん 官能小説】

ハツミの最初へ ハツミ 34 ハツミ 36 ハツミの最後へ

ダイチ 〜4th story〜-7

『棗ちゃん、優しいんだね。』
俺は彼女に満面の笑みを向けた。
そして彼女の優しさを知り、緊張の糸が切れた俺はジントニックを一気に飲みほし、おかわりのドッグス・ノースをオーダーする。良く冷えたグラスにジンと黒ビールを注いだ、俺のお気に入りのカクテルだ。
「棗さ、ダイチ店長が元気無いとなんか調子狂うよ。棗になんか話したくないって言うなら仕方ないけど、良ければ何で落ち込んでるのか話して。」
そう言った彼女の表情は真剣そのものだった。
『ありがと。その前にさ、昼間…俺何か棗ちゃんに悪い事言っちゃったよね?棗ちゃん、なんだか急に悲しそうな顔したからさ。』
俺の事をこんなに真剣に心配してくれている彼女に、俺は素直に落ち込んだ理由を話そうと思った。
そんな事で?!とバカにされてしまうかも知れないが、それでも彼女には聞いて欲しい。
だがその前に、昼間の事をキチンと謝っておこう。
「え〜?!別にダイチ店長は何も悪くないよ!だからそんな事気にしないで。」
彼女はにっこりと笑って言った。
『でもさ、ちゃんと謝っておきたいんだ。ごめんね?』
「わかった。ダイチ君のそんな所、大好きだよ。」
彼女の言葉に俺は、顔が真っ赤になるのを感じた。深い意味はないと思っていても、これ程照れる言葉はなかなか無いだろう。
俺は真っ赤になった顔を彼女から少し背け、テーブルに届けられたばかりのドッグス・ノースを口に運んだ。
「ダイチ君ってお酒強かったんだね??」
折角背けた顔を、わざとのぞき込む様にして彼女は言った。
『いやっ、そんなに強くないよ?!もう顔だって赤くなっちゃったし!』
俺は彼女の言葉によって赤くなった顔を、アルコールのせいにした。
本当は少量のアルコールで顔が赤くなったり、酔いが回ったりする事はないが、そうでも言わないと彼女にのぞき込まれた顔の赤さはごまかし様がない。
「そぉ?ま、いっか。」
彼女は納得してはいない様だったが、自分もカクテルのグラスを口元に運んだ。
『…あのさ、バカみたいな話なんだけど、聞いて貰ってもいいかな??』
俺は彼女がテーブルにグラスを置くのを待って切り出した。
「その為に待ってたんだから、当然でしょ?どんな話でも聞くよ!」
この優しい笑顔に励まされるのは何度目だろうか。これまでにも彼女の笑顔があったからこそ、頑張ってこれた仕事がいくつもある。
きっと、だからこそ彼女は俺にとって特別なお客様なのだろう。
『実はね。昨日、霧島に恋人を紹介されたんだ。葉摘ちゃんって言う、俺も知っているコなんだけど…。』
そして俺は彼女に昨日の出来事を話し、微笑ましい2人の様子を見て恋がしたくなってしまった事、けれど恋する気持を忘れてしまった事、そんな事を考えていたら気分が沈んでいってしまった事を順に話した。
だが、夢の中でヒワイでミダラな妄想が繰り広げられてしまった事は伏せておいた。
『もう俺、恋とか出来ないのかなぁ〜。恋がどんな気持ちになって始まるのか、すっかり忘れちゃったよ。』
俺の話が一通り済んだ頃、互いにグラスの中身はすっかり減っていた。
それを見た彼女がすかさず新しいカクテルをオーダーする。
『あ、ありがと。』
「ねぇダイチ君?」
俺は今の彼女の言葉に違和感を感じた。
<ダイチ君>?!彼女はいつも、俺の事を<ダイチ店長>と呼んでいなかっただろうか?
一体、いつの間に<店長>と言う堅苦しい呼び方が消え、<君>という親しげな敬称に変わっていたのだろうか。
「ダイチ君?!聞いてる??」
暫しの思考に沈黙していた俺に、彼女が問掛けた。
『いや、何でもないよ。ごめん。』
そうは言ったが、何でもない訳は無い。
彼女の俺に対する呼び方の違いに気付くのと同時に、俺は胸の高鳴りに気付いていた。


ハツミの最初へ ハツミ 34 ハツミ 36 ハツミの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前