ボクとボクの家族-2
お昼寝をしたら、あっという間に夜になってしまいました。もうお外が真っ暗です。ついさっきご飯を食べたのですが、もうお腹がぺこぺこなのです。
でも夜ご飯はいつも、お父さんが帰ってきてからなのです。ボクはお腹がすいて死にそうなので、早くお父さんに帰ってきてほしいのです。
そんなボクの祈りが通じたのか、お父さんが帰ってきました。ボクは玄関まで迎えに行きます。
玄関の扉が開くと、お父さんが「ただいま」と言いました。ボクは、早くご飯を食べよう、とお父さんを急かします。
「いただきます」
それはご飯の合図です。ボクは勢い良くご飯を食べます。今日は一番早くご飯を食べ終わってしまいました。
ご飯の後は、家族団欒というのですか、お部屋の中で遊んだり、テレビを観たり。こういう時間にボクは、幸せだなぁ、と思ってしまいます。
ボクは幸せ者です。
そうしてしばらくすると、ボクはまた眠くなってきて、ボクのお部屋で寝てしまうのでした。
お外が明るいです。雀さんの鳴き声が聞こえます。もう、朝になったみたいです。
でも何故か体が重くて動かせません。朝はお父さんに、新聞を持っていかなくちゃいけないのに。
「おはよう」
お兄ちゃんの声です。どうやら今日はボクが一番のお寝坊さんみたいです。なんとか元気に声を出したいのですが、うまく出せません。
薄く目を開けると、兄ちゃんの心配そうな顔が見えました。ボクは何とか立ち上がりましたが、フラフラしてしまいすぐまた眠ってしまいました。
気がつくとお布団の上に居ました。お布団はいつも通り、ぽかぽかお日様の匂いがします。何故かボクだけがいつも通りじゃないです。
また薄く目を開けるとお医者様が居ました。お医者様もお父さんに負けないくらいかっこいいな、と思います。
お母さんがボクの頭に手を乗せました。お母さんがボクの頭を優しく撫でてくれています。お母さんの優しい匂いがします。
それがとっても気持ちよくて、ボクはまた眠くなってきました……。今日は……寝てばっかりです……。明日は……また、お兄ちゃんと……遊びたい……な……。
「心臓停止しました。ご臨終です」
リビングに低い声が響く。布団の上でボクと名づけられた一匹の犬が、今安らかに息をひきとったのだ。
「そうですか……。ありがとうございました」
窓から暖かく柔らかい日差しが差し込む。死の世界への旅立ちとしては、中々の陽気かもしれない。
そこで小学生くらいの子どもがひょっこり顔を出し、母に質問をする。
「お母さん、ご臨終ってなに？」
「ご臨終はね、死んじゃったってことよ」
子供は布団に横たわる、家族だったものを見つめる。
「死んじゃった？ ボクは寝ているだけだよ」
母はそう言う子供を後ろから優しく抱きしめた。
「そうね……。でもね、ボクはもう目覚めないのよ。もう、ボクとは遊べないのよ」
母の言葉に、子供はなにやら難しい顔をして悩む。母の言葉の意味を理解しようと。
十数分ほど経った時、子供は突然母にこう言ったのだった。
「ねえ、もう遊べないなら、新しいの買ってよ。今度はもっと大きくてカッコいいヤツがいいな！」