投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

ある熟女の日々の最初へ ある熟女の日々 68 ある熟女の日々 70 ある熟女の日々の最後へ

名器-1

 出会い系サイトにアクセスして見知らぬ男と性行為に及んでいて、今さら…という気もするが、初めての男と逢うときは、やはり緊張もするし羞恥心は感じている。待ち合わせた場所で男と対面したときに『この程度のクセによくのこのこ来たものだ』などと思われているのではないかと思うと恥ずかしい。

 だから会う前のやり取りでは、いたずらにハードルを上げてしまわないように、『本当にただのオバサンですけど、いいですか?』というセリフが常套句になっている。このセリフを受けて『じゃあ、やめときます』と言われたこともないけれど。とにかく、できるだけ過分な期待を抱かせないようにしているつもりだ。
 
 そのくせ『思っていたよりもずっときれいですね』とか『オバサンっておっしゃっていたのにスタイルいいですね』などと言われると、過分な期待は抱かせないという目的は達したはずなのに、男が何のトキメキも持たずにやって来ていたことが露見したようで、ちょっとがっかりしたりもするのだから、我ながらわがままだとは思う。

 むしろ『奥さん、もっと自信もっていいですよ』とか『本当は随分遊び上手なんじゃないですか?』とか『わたしも結構遊んでいるんですが、奥さんは”名器”ですよ』などと言われると、もちろん『そんなことありません…』と小さな声で否定はするものの、内心はうれしかったりするのだから、結局は自分に自信がないことが羞恥心につながっているのだろう。

 こちらにしても、初めて逢った瞬間には、男の風体から、平たく言えば『当たり』、『ハズレ』みたいな感情に捉われもする。お互い、身体だけの付き合いを求めているのだから、本当はそんなことにいちいち構わないでいればいいのかもしれない。経験上は第一印象が『ハズレ』でも、声を聞いてみて、何か話をしてみて、そしてベッドでの振る舞いやカラダの相性で、評価はどんどん変わっていく。

 そこまではわかっているから、直感にかかわらず一喜一憂はしないようにしている。それに、どんなにカラダの相性が良かったとしても、その後、ストーカーみたいに付きまとわれたりしたら恐い。お互い家庭を壊さないように…という点で一致している相手が『当たり』なのだろうと思っている。そのように思える前に、会うなり逃げ出したくなるような男と遭遇してこなかったことは幸運だったのだろう。

 こちらも相手も一応の『納得』をして…双方の合意の下にホテルなりに場所を移すことになるが、部屋に入ってからの振る舞いにも気を遣う。裸になってすることをする…というだけなのだが、だからと言って、自分でさっさと服を脱いだりすることはしない。何度も逢っている相手とであれば、余計な時間を費やさずに…というところだが、初めての相手に対しては、裸を晒すのも初めてだから、自ずともじもじしながら…という風情になる。

 そんなとき『こういうの初めてなんですか?』などと問われて黙って頷いたりすれば、男はより興奮するようだし、自分がリードしなくてはとも思うようで、こちらとしてはありがたいし楽だ。そのうちに相手が『外していいですか?』などと言いながら、ブラジャーのホックを外してくれる。

 下着の中で盛り上がっている相手の股間を触ってみたいと思っても、決して自分から触ったりしないで、手を取られて導かれるのを待っている。フェラチオにしても、自分からしゃぶりに行ったりしないで、せめて顔に近付けられれば、相手の意図を察したように(この歳ですからそういう性戯くらいは知っております…)と勿体ぶって始める。

 甲斐甲斐しく尽くしてくれる男であれば文句はない。『一期一会』とばかりに激しい行為を追い求められたりしなければ、次回からはかえってもっと大胆になっていける。アダルトビデオで見たのと同じ行為をしたいだけ…みたいなことが垣間見える男は、ほとんど次には続かない。

 今日は膣で出されてもいいという日なのに、わざわざ顔面に射精しようとして、髪に精液が飛んでみたり…。ベッドの寝心地がよくてゆっくり楽しみたいと思っていたのに、わざわざ立ちバックの姿勢にさせられて、腰や背中、さらにはふくらはぎにまでいやな違和感を感じてしまったり…。不倫相手とハメながら…という設定で夫と会話してくれと携帯電話を渡されたり…。大股を開いてオナニーしているところを見せつけてほしいと懇願されたり…。

 同じ『熟女』かもしれないけれど、プロの女優さんではないのだから…。焦ることなく前回よりも今回、今回よりも次回…と、いつも何か新しい刺激があった方が、いい関係を築けていけると思っている。カラダだけの関係に『いい』も『わるい』もないのかもしれないけれど、こちらが内心(また、逢ってもいい)と思っているときに、相手から『また、逢いたい』などと言われれば素直にうれしい。

 最近、逢った男も『また、逢いたい』と言ってくれた。

 「貴女とはフィーリングが合うのかな…」
 (わたしも同じことを思っていました…フィーリングが合うのでしょうね)
 「いつもは我慢できずにすぐに終わってしまうのですが、今日はゆっくり楽しめました」
 (スローで楽しめればいいですものね…。…えっ?)

 特に皮肉を言っている風でもないから、『望んでいたスローなペースで今日は楽しめた』とただ称賛しているだけ…って素直に受け止めればいいのよね…と思いながら身支度をして別れた。

 すぐに逝くのが男として恥ずべきことなのなら、すぐに逝かせられないのも女として恥ずべきことなのかしら…。『名器』と言われたことがあると言っても、それはその相手にとっては相性がよかったというだけのこと。相性によってはただの『迷器』…。

 家に向かう電車に乗って先程までのことを思い返していると、ふと若い男と目が合って我に返る。恥ずかしくなって目をつぶりながら、どちらにしても相手が悦べば『名器』なのだろうと結論付けて寝たふりをする。


ある熟女の日々の最初へ ある熟女の日々 68 ある熟女の日々 70 ある熟女の日々の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前