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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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巨根の男-4

 記憶が戻ったとき、男はわたしの身体から既に離れて、横に寝て様子を見ていた。わたしは、男と繋がっていたときの体勢のまま股を大きく開いていて、ただ天井の照明をぼんやりと見ているだけ。幼児に投げ出された着せ替え人形のよう。右手はバンザイしているように頭の上に投げ出し、左手は肘をまげて乳房の辺りにある。

 「すごく…よかったです」

 男が声をかけてくる。はしたない姿勢をなおそうと思うが、思うように身体が動かない。それでもゆるゆると体を起こそうとするわたしを男が気遣う。

 「いいですよ、そのままで。余韻に浸ってください」

 膣口からぬるい液体が垂れてくる感触がする。男は膣内で精液を噴いていたようだ。

 「すみません…ティッシュを…」

 男がティッシュの箱を手渡してくれる。ペーパーを何枚か抜き取って股間を拭おうとして、わたしは変わり果てた自分の膣を目にする。膣は巨大な肉棒で押し拡げられたようでパックリと口を開けたまま。肉襞はプリプリと充血して光沢を放っている。陰毛はあふれ出ていたのであろう愛液でべっとりと皮膚に貼りついている。ただ、どこかが裂けて出血したりはしていないようだった。

 辛うじて股間を拭うと、男がティッシュをゴミ箱に捨ててくれる。開いたままの股を閉じようとするが、関節を外されたように思うに任せない。

 男はわたしを寝かせ、脚に手を添えて布団の上に伸ばしてくれた。大汗をかいたようで男がタオルでわたしの身体を拭いてもくれる。

 「…すみません。わたし…どうなってしまったのかしら」
 「…特になにもおかしくなかったですよ?」
 「貴男が…イッたのを覚えていなくて…」
 「そうでしたか? しっかりイカセていただきましたよ。そのときだけ気を失っていらっしゃったのかもしれませんね。でも、ほんの一瞬だと思いますよ…」

 男と逢うときに『1回』だけで終わることはほぼないけれど、今日は『お腹いっぱい』になった。男もわかっているようで2回目をねだったりすることもなく、一緒に湯船に浸かってお開きということになった。わたしは身体を支えられて風呂場に移動する。

 身支度をととのえて二人で旅館を出る。

 「タクシー拾いましょうか?」
 「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
 「では、駅までご一緒します」

 入院から一時帰宅する妻と付き添う夫のような風情で駅までゆっくりと歩く。出産を終えて産院を出るときのようでもある。股間の異物感が尋常ではない。感覚に任せたら『がに股』で歩いてしまいそうだ。

 (この異物感…『はじめて』のとき以来かも…)

 駅に着き、丁重に礼を述べて去っていく男を見送りながら、頭の中で処女喪失の思い出の引き出しが開く。身体中の関節のギクシャクした感じまで同じ…。

 改札を抜けてエスカレーターに乗ってホームに出る。快速とか急行とかいろいろ種類があるのだけれど、とにかく最初に来た電車に乗った。席は空いているが、つり革につかまって立ったままでいる。身体中の関節が自分のものではないような感覚になっているせいもあるが、何より、座ったとしても膝頭を揃えていられそうにない。

 つり革につかまっていると、膣の中を粘液が垂れ落ちていく感触が続く。口もしっかり閉じていないから下着もどうなっていることやら…。わたしは座っている乗客の前に立っていることを止め、つり革から手を放すと、転んだりしないように慎重に歩を進めながら、車両の隅のドアの際に移動した。

 男が、特に次回の約束を決めることもなく去っていったのは、次のオファーがあることに自信を持っているのか、それとも、わたしに見切りをつけたのか…。流れる景色を眺めながらそんなことをぼんやりと思う。これっきりになってしまうのだろうか…。

 ようやく電車が自宅の最寄り駅に着く。普段は家まで歩くところだが、停まっていたタクシーに乗り込む。帰宅するなり、ソファーに倒れ込んだ。

 一息ついてゆるゆると体を起こし、レトルトの総菜を温めて食卓に並べ、最小限の家事はしたように取り繕う。そのような日に限って夫はいつもの時間には帰って来ず、わたしは『先に休みます』と書置きを残して床に就いた。

 翌朝、目が覚めると、関節の違和感の代わりに筋肉痛が加わったような感じだ。手すりにつかまりながら階下におりると夫が体調を問うてくる。

 「大丈夫よ…」

 と答えた声に自分でも驚く。声が完全にかすれている。

 「なんだ、ひどい声じゃないか。風邪でも引いたんじゃないか? メシはいいから寝てろ」

 再び寝床に入るが、いったいこの声はどうしたのだろう。

 『ア…ア…』

 一人で小さく発声してみるが、やはり声はかすれている。喉が嗄れてしまったかのようだ。

 『ハァックション!』

 不意にガラガラ声のくしゃみが出る。あの男がわたしのことを想い出してくれているのではないか…などとオトメチックな感傷に浸…らないでもない。

 「ほら見ろ、やっぱり風邪じゃないか。ひどい声だ。ちゃんと寝てろよ」

 階下から夫が叫んでいる。

 (還暦にはまだ十年早いけど、昨日わたしは『リセット』されたのよ…。それなのに…)

 『リセット』の翌朝になぜか夫とのまともな会話が復活している皮肉に苦笑いしているわたし。


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