投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

出会い
【ガールズ 恋愛小説】

出会いの最初へ 出会い 12 出会い 14 出会いの最後へ

乙女心-3

『まあ、これ以上二人の邪魔をしちゃあ不粋よね。華帆、詩帆』
 それに頷くお二人方。以前涼子ちゃんが言った通り、まさに嵐のような人たちよね。


 嵐が去ったあとにはもとの静けさがやってくるのも道理。
 あたしたちはただしばらく手を繋いであるいていた。
『ところで、涼子ちゃん。さっきどこかに連れていこうとしていたけど』
『ああ、大丈夫。実は今も向かっているのよ』
 そうは言っても、あたしたちは祭りの中心部から外れ神社の境内へと向かっていた。
 ここの神社がお祭りの発祥ではあるけれど、今では市街地のほうのイベントのほうが賑わっている。
 だからこんな時、神社なんかに行く人なんて、あたしたちくらい。
 それでも進む。しかも若干早足になった涼子ちゃんにあたしは続く。

 ついに屋台はなくなって、心許ない電灯と、星月の光だけがあたしたちを照らす。その情景はとても素敵なものだった。けれど、あたしは不安になって涼子ちゃんを見る。
 僅かな光に照らされた彼女はとても綺麗で、触れたいのに、すぐ壊れてしまいそうで。
 涼子ちゃんの瞳に見つめられると、あたしはそこから目が離せなくなって。いつのまにか彼女の小さな顔が眼前にあった。

 そのとき、遠くで何かを打ち上げる音が聞こえた。それは闇夜に咲く一輪の花。
 あたしと彼女の頭の上で、それは大地をも轟かす音をたてながら赤々と咲いていた。
『綺麗』
 思わず口からもれる感嘆の言葉。
『あたしが、それとも花火が?』
 あたしをからかっているのか、涼子ちゃんはそう言った。
『そんなっ。両方ともだよ。って言うか、涼子ちゃんは始めからこれをあたしに見せるつもりで?』
『そう。彩夏さんはやさしいね。』
 あたしたちは境内の端に寄り掛かりながら、次々と打ち上げられる花火を見ていた。
 今日見る花火は千鶴と見ていた花火と違って見える。
 それは千鶴がいないからなのかも知れないし、神社から涼子ちゃんと見ているなのかも知れない。
 けれど、あたしはこういうのもいいなと実は思っている。彼女と二人で。

 花火を見て満足気なのか彼女は笑みを浮かべて振り向く。その笑顔を見て本当に綺麗なのは貴方よ、と思ったあたしは馬鹿でしょうか。
『また来年も来ようね』
 月並みな言葉ではあったけど、今のあたしは彼女といることがなにより大事な事になっていた。


出会いの最初へ 出会い 12 出会い 14 出会いの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前