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不二子のウインク(ルパン三世part2 ルパンの敵はルパン より)
【二次創作 官能小説】

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第一章 不二子の敵は忍者-2

壊れたクルマがあるのなら、死体もあるはず。
(飲み水くらいはありそうだけど……)

(死んだ兵士がいるのなら、死体から拝借するのは気がとがめるが、彼らが携帯していた食料や水筒が……)

(……!!)

…あるのでは?と思う間もなく、半ば砂に埋もれた水筒が目に入って、思わず不二子は走り寄った。

(…でもヘンね)
駆け寄りながら、脳裏に違和感がよぎる。

(持ち主は……水筒の持ち主はいったい)
違和感の正体が明確な言葉になりかけた瞬間。

パシュッ。

という音とともに、あと数歩先に転がっていた水筒が、内容物をまき散らしながらはじけ飛んだ。
「キャッ!?」
思わず悲鳴を上げてしまった不二子だったが、すぐにそばで未だ燃えているクルマの残骸に身を潜めた。
(ナニ?……ただ水筒の中の水が火炎で熱されて、破裂しただけ?……それとも)
何者かの攻撃を受けたのか。

水筒があった場所に広がった水たまりは瞬時に乾いてゆく。
不二子が着目したのは、はじけ飛んだ水筒の方だった。

沸騰の内圧で爆裂して飛んだようなそれではなく、まるで鋭利な刃物で切断したかのように、鋭い切断面を輝かせて真っ二つに転がっていたのである。

(え……ナニ?)

いったいどんな武器を使っているのか。
銃のたぐいなら、こんなふうに切断されはしない。
ブーメランのような投擲武器なら、飛び去る瞬間ぐらい目撃できたはず。
レーザーメスにしては、砂地に焦げ跡も何も無い。光りも見えなかったと思う。
何かを噴出したような、パシュッ、という音がかすかにしただけだ。

パシュッ。

「アァッ!?」
今度は不二子のすぐ目の前で、その音が鳴り響いて、思わず目を閉じてしまう。
(え?)
だが次の瞬間、右手が急に軽くなった気がしてすぐに目を見開いた。

その原因はすぐにわかった。
グリップだけを残し、持っていたベレッタの銃身はきれいに切断され、足元に転がっていたのである。

「ククク……武器はその銃以外もうないはずだな?……両手を上げるんだ、峰不二子」
いつの間に接近されていたのか。

不快なしゃがれ声で笑いながら、背後から忍び寄る気配があった。

「あら、こちらの様子はすっかりお見通しってわけね?……レディをコッソリのぞき見するなんて、悪趣味の極みよ?」
素直に両手を上げ、それでも憎まれ口をききつつゆっくりと後ろを振り返る。
「悪く思わんでくれ……この周囲数キロメートルに渡って、無数の監視カメラが仕掛けてあるのだ。これはワシらではなく、我らのあるじの趣味だがな」
ニヤリと笑った長身の男は、全身を黒ずくめの衣装に身を包んでたたずんでいた。

黒色の、和風の襟のある上着。
襟元から見えるのは上着の下に着込んだ、よく手入れされた鎖かたびらである。
むき出しのたくましい上腕と、黒光りする手甲をはめた両腕。
それらがこの男に生半可な攻撃を仕掛けても容易に倒せない事を物語っていた。

武器は、背中の黒塗りの鞘に収まった、日本刀。
先程からの攻撃は、この日本刀による斬撃によるものか?

「……のぞき趣味もどうかと思うけど、趣味が忍者ゴッコっていうのもどうかしらねえ」
そう。
不二子がからかうまでもない。
異国の砂漠に現れたその男は、いかにも日本で言うところの忍者の姿をしていたのである。

「ゴッコ遊びにしても、もう少しこの砂漠のステキな雰囲気をぶち壊さないように気を遣ってくださらないかしら?」
そう言いながら、ホールドアップの姿勢を大胆にも解き、胸の谷間からリップスティックを取り出し、不敵に微笑んだクチビルにうるおいを与える。

「クックック……面白いオンナだ」
忍者は不二子をにらみながら
「丸腰のクセに生意気を言うとは、そんなに早く死にたいか?」
そう言った時だった。

ガアン!!

大きな銃声が、砂漠一帯に響き渡ったのだ。

忍者装束の男の眉間と、不二子のリップスティックの先端双方から、細く白煙が立ち昇って、それはすぐに砂漠の風に吹き消された。
…キス・オブ・デス。
武器の名を「死の口づけ」とは誰が名付けたか。
そのリップスティック型の銃から放たれた弾丸が、見事に忍者を仕留めたのである。
「残念だけど早死にするのはそちらのほうだったわね?」
そう言ってウインクして見せるのと、男が砂の上で倒れたのが同時だった。

まだ他に敵がいるかもしれないが、不二子は倒した男の体を探ってみる。
「……この日本刀くらいは頂いておかないと」
ベレッタを破壊され、そのうえ1回しか使えないキス・オブ・デスを撃ってしまった今、彼女は今度こそ丸腰なのだった。
切実な思いで男の背中からカタナを抜き取った。

つもりだったが。
「え?……何よコレ!!」
不二子が嘆くのも無理はない。
彼女が抜き取ったそれは、鋭く重い刀身のない、鍔と柄だけだったのである。
(…忍者なのは格好だけで見せかけ?)
心底ガッカリした様子でツカをサヤに戻す。
「でも変ね…」
ではこの男、どうやって斬撃を繰り出したのか。
(……???)
答えが出るはずも無かったが、考え込んでいる余裕はない。

(いただけるものは頂いて、サッサとここを離れなくっちゃね)

眉間から血と脳漿の混じった体液を流して動かない忍者を見下ろし、行動を開始する不二子であった。


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