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"Tacki" for prudish Meg
【調教 官能小説】

第二話 提案-3

「うん、そこでさきほどの話を踏まえての提案なんだけど、芽美ちゃんと僕が恋人同士としてお付き合いしているフリをしてみて、それを孝君に3ヶ月間くらい見せ付けてみてはどうかと。正確には、僕が芽美ちゃんに惚れて恋人にしようとあの手この手で口説きはじめる。芽美ちゃんはそれをまんざらでもない様子であしらいながら、時々デートの誘いに乗ったりして僕達二人の仲がだんだんと深まっているようにみせかける。このまま手をこまねいていたら、芽美ちゃんは自分と別れて僕と本当にお付き合いしてしまうにちがいない!そんな風に彼に思わせるんだ」
「・・・・・・・」
「彼は仕事が忙しい間、君のことを放っておいても他の男に奪われるようなことはないと考えてる。それに加えて自分のエッチに自信を失ってしまっているのだが、このことに正面から向き合うことを避けている。だから、孝君からみて、君が他の男に口説かれる様子をみせて危機感を抱かせ、その一方で、孝君が自信をもって初エッチに再度望めるよう、男性としてのアドバイスを与えてみてはどうかなと思うんだ。」

「・・・それで本当にうまく行くんでしょうか?正直疑問です。」
「もちろん。100%とは行かないけど、それなりに依頼者の望む方向へ行くことが多いよ。」
「お付き合いしているフリって、どんな風にするの?」
「普通の恋人達が普通にしているようなことをするのさ。ただし仕事として契約を交わしてね。」
「恋人達が普通にしているようなことって、まさかエッチなことも?」
「そこは微妙なところなのではっきりとは言えないけれど、いちおう恋人関係になるわけだから、そんな雰囲気になることもあるかもしれないね。契約書の見本を持ってきたから、そのあたりも含めてどうなっているのか、目を通してみるといいよ。」

 拓海はそういって黒のビジネスバッグからA4の紙を取り出し芽美に差し出した。それを受け取って両手で目の前にかざしてさっと読む。
「恋人パートナー関係」締結書
 ◯◯◯◯(以下、甲)と◯◯◯◯(以下、乙)は、甲の女性的な魅力の向上を目的に、以下の契約を締結する。
(契約内容)
1.甲と乙は仮の恋人同士として、原則、毎週末(土日)毎に会ってデートをする。
その際、
1)乙は甲の女性としての魅力向上に資する内容のデートを、甲の「彼氏」になりきって企画・遂行しなければならない。
2)甲は乙の企画するデートプランを、乙の「彼女」になりきって、可能な限り楽しまなければならない。
2.デートをしていない日(月〜金)は、
1)乙は甲に対して、甲の「彼氏」になりきって、毎日、連絡しなければならない。
2)甲はそれに対して、乙の「彼女」になりきって、毎日、応対しなければならない。
3.甲は乙の企画するデートプラン及び甲からの連絡に不満がある場合、乙に対して改善を要求することができる。この場合、乙は甲の改善要求に対して誠意を持って対応しなければならない。
(契約期間)
4.契約期間は◯月◯日から◯月◯日までの三カ月とする。ただし、契約期間中に甲に本当の恋人ができた場合、又は上記3項の義務を乙が果たさない場合、甲は当契約を乙の了承を得ずに解除することができる。契約期間満了後は、甲乙双方の合意の上、当契約を修正し、また延長することができる。
(報酬)
5.契約締結時において、甲は乙に手附金として金参万円を支払う。契約満了又は解約後、諸経費に企画運営費として20%分を加えた金額から手附金を除いた金額を、成功の是非にかかわらず、甲から乙へ報酬として支払う。                                                              以  上
                               平成○○年○月○日
                               甲 ○○○○
                               乙 ○○○○
  
「思ったよりあっさりしてますね。」
芽美は率直な感想を口にした。
「デートの内容というか・・・その・・・エッチなことをするかどうかっていう点が全然・・・」

「うん、これは契約書のひな型だからね。実際のものはクライアントさんの要望を取り入れてもっと具体的な内容になっているものもあるんだが、それは見せられないから。エッチ関係についても、禁止事項を細かく決めて書いておくケースももちろんある。キスまでとか胸をさわるくらいまでとか、はっきりとは書かないけど必要なら最後まで大丈夫とか。逆に肉体的な接触は手をつなぐ事も含めて全て禁止という場合もあるよ。」
「大胆な人もいますけど、手をつなぐのもダメっていうのもまた厳しすぎるような?」
「その通り。仮とはいえ恋人として交際している姿をみせつける必要があるのだから。そういう契約で成功した経験はないから、芽美ちゃんはもっと大胆になることをお勧めする。」
「えっ、私はまだやってみるなんて・・・」
と、芽美が断りのセリフを言おうとしたとき、拓海のスマホの着信メロディが店内に響く。日曜夜の国民的アニメのテーマ曲の、シティホテルのバーにそぐわないコミカルさに芽美は思わず吹き出してしまった。

「ちょっと失礼。」
 電話のためにバーの外へ出た拓海を待つ間、明るい気持ちになった芽美はもういちど契約書の雛型にゆっくりと目を通しながら、千佳先輩がいつも言っているセリフを思い出していた。

―若い私たちは自分の可能性を広げるために、チャンスを逃さずできるだけ色々な経験をしたほうがいい。それが必ずしも楽しいこととは限らないかもしれないけれど、だからこそ見えてくることもあるのではないか。じっとしているだけではなにも変わらない、生きることは動くことだ―


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