投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

よくある若い男女の話
【その他 恋愛小説】

よくある若い男女の話の最初へ よくある若い男女の話 0 よくある若い男女の話 2 よくある若い男女の話の最後へ

よくある若い男女の話-1

「急に呼び出しちゃってすみません…」
通り過ぎる車のライトが、助手席に座る彼女の顔を断続的に照らしていく。
「どうしてあんなこと、したの…?」
心成しか声が震えている。しかし、俺は答えられない。なぜなら、その時のことをあまり覚えていないからだ。
「…ごめんな」
ただ罪悪感だけが俺を襲う。
「あたし、先輩は違うって思ってたのに。先輩が、俺は違うって言うから信じたのに…」
一瞬照らされた彼女の瞳は、かなり潤んでいた。泣かないようにと我慢しているのだろう。歯を食い縛り、肩が小刻みに揺れている。
「本当にごめん…」
俺はハンドルに手を掻けたまま、横目で彼女を見る。彼女は、俯いて目元を拭う動作をした。まるで、昨日のように…。
昨日、彼女が信じた人以外話したことの無い秘密を俺は教えてもらった。彼女の辛い過去…。


地元に帰ってきた俺は、車で適当に走っていると、たまたま彼女と擦れ違った。卒業式以来だから、五ヵ月ぶりか。どうりで、可愛くなった訳だ…。
車を端に止めて降り、傍を流れていた川の淵に座りいろいろ話していた。自然と話の矛先は恋愛のことに…。
彼女はどうやら、今彼氏はいないようだ。
「彼氏?いらない、いらない!作る気ないもん」
そう言って、彼女はパタパタ手を振った。
俺は深く考えもそず、彼女が彼氏を作ろうとしない理由を問う。
「絶対、先輩ひくよ?」と笑った彼女に俺は「俺、他の奴とは違うから」と言って彼女の頭を撫でた。
彼女はびっくりしたように俺を見て、顔を赤くしながら、ゆっくり口を開いた。
「…昔、彼氏に両手両足押さえられて無理矢理…。まっ、何とか阻止したけどね。それから、あたし男の人が怖くて…。そんで、高校で先輩に会って…ヘヘッ、フラれたけど。でも、先輩のおかげで恋っていいなって思えた。その後に好きになった人とは、すごくいい感じになったんだぁ。…だけどね、連絡くれなくなったと思ったらね、元カノとヨリ戻してたの。何かね…あたしは元カノが機嫌直して、謝ってくるまでの遊びだったみたい…。はぁ。馬鹿だよね、自分だけ舞い上がっちゃって…。それで、やっぱ男の人ってそんなモンかぁ、って思っちゃったら、何か信じられなくて…」
笑顔の印象的な彼女が、寂しそうに俯いていた。小さくて、無くなってしまいそうで、俺は支えなきゃと思った。
「俺は他の奴と違うから…」
そう言いながら、そっと彼女に近付き、俺は抱き締めた。「ひゃっ」と彼女は驚いたように声を上げ、俺から抜け出そうと体を捩る。
「やだっ、先輩!は…離して…」
理性が切れた俺はそのまま強く抱き締め、彼女を押し倒した。
「いやだっ、やだ…やだってばッッ!!」
彼女は俺を思い切り突き飛ばし、走って逃げていく。俺は、誰もいない川原に腰を下ろしてさらさらと流れる川を見つめていた。


結局、俺も彼女が出会ってきた男と同じ。
「ごめんな…」
もう一度言う。
「答えてくれないんだね。もういい…。あたし、帰る…」
彼女が呟いた。
「だめだよ。もう外は暗いんだから送ってく」
彼女はゆっくり顔を上げ涙に濡れた大きな瞳で、俺を見つめた。
「先輩といるよりだったら、暗い道歩いて帰ったほうがいい…」
車を降りていく彼女を、俺は止めることが出来なかった。
彼女を抱き締めたのは、恋愛感情からじゃない。ただ『抱き締めたかった』から。それなのに、今彼女を追い掛けるのは、理不尽なような気がした。
俺は彼女を支えるどころか、余計に傷を深くしただけだった…。

…所詮、俺もただの男。

[fin.]


よくある若い男女の話の最初へ よくある若い男女の話 0 よくある若い男女の話 2 よくある若い男女の話の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前