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精神科医佐伯幸介のカルテ
【女性向け 官能小説】

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カルテ1の2 藤堂倫 27歳 新聞記者-2

3週が過ぎた日曜、たまりかねてメールを送った。
今まで何度もメールしようと思ったができなかった。
別れ際、「また連絡するよ」と言った幸介の言葉が倫の行動を抑制していた。
頭の良い倫だからこそ、幸介の言葉が呪いのように心を縛った。
「幸介さん何しています? 倫」
一行だけのメールを書いた。
絵文字もないシンプルなメール。
一行に思いをこめた。
無理強いはしない。 
重荷にはならない。 
でも、でも逢いたい。
気持ちをこめて文字を並べた。
幸介ならわかってくれるはずだと、祈る気持ちで送信ボタンを押した。
 
その後がたいへんだった。
携帯を手放せなくなる。
マンションの中でも持ち歩いた。
トイレに行くときも持ち込むありさまだ。
困ったのはシャワー、防水携帯にしなかったことを悔いた。
それほど幸介の返信を待っていた。
声が聞きたかった。
文字が読みたかった。
 
その日、返信は来なかった。
 
月曜の朝、ようやくうとうとできた倫が飛び起きた。
携帯の呼び出し音が鳴っていた。
枕元に置いた携帯を手に取る。
だけど単なる目覚まし機能のブザー音だった。
倫は、そのままベッドに伏せた。
涙がこぼれ落ちた。

その日、出社することができなかった。
風邪をこじらせたと偽って会社を休んだ。
入社以来はじめてだった。
その日も携帯電話に縛られた一日だった。
何度か友人や同僚からのメールが入ってくる。
それが倫の心を苛立たせた。
返信することが面倒だった。
倫には他のことを受け入れる余裕が無かった。
幸介からの連絡はない。
 
火曜は出社した。
家にいては気がめいるだけだったから、せめて忙しくしていたかった。
これほど胸を焦がせたことはない。
出社しても手の届くところに携帯を置いた。
しかし幸介からの連絡がない。

心焦がした1週間が過ぎ、土曜になる。
休みなのが辛い。
家にいると考えこんでしまう。
でも外出する気にはならない。

幸介、何しているの?
もう忘れちゃったの?
それとも事故?
それとも他のひとと・・・

胸が熱く焼けるようだ。
食事が喉を通らない。
 
倫の精神が限界を超えようとしていた。
屈折した心と花開いた性に対する欲望が倫の精神を侵食していく。
(会ってやる。私も男と会ってやる。)
倫は携帯から出会いサイトを立ち上げると、幸介のプロフになるべく近そうな男性を選び早速会うことにした。
 
露出度の高い服を選んだ。
普段の自分と変わりたかった。
胸元から裾までボタンで留めるタイプの白いワンピース。
上下ひとつずつのボタンをはずしてみる。
胸の谷間と太ももが露出する。
下着は待ち合わせ場所に行く前に買えばいいと考えて家を飛び出した。
下着専門のブティックに立ち寄ると、一組の真赤な上下を選び購入した。
カードで代金を支払ったあと、試着室を借りて下着を替える。
中央に寄せられた乳房が谷間を強調している。
白い布地に真紅の下着が透けて見えた。
うん、この方がいい・・・と思う。 
心が攻撃的になっている。
そうしていると、幸介のことが忘れていることができる。


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