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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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番外編:Oと麗美とMM号 (2)-2

 麗美に続いてMM号から降りる。
「なんか変な汗かいちゃった」だの「意外と緊張したね」だのと彼女は無邪気に話しかけてくるが、私はどぎまぎするばかり。こんなファーストキスでよかったのか。いいに決まっている。何しろ相手は恋い焦がれた麗美なのだから。いやしかし――。

 彼女の髪が外の風になびき、また甘い香りがした。さきほど唇同士が触れ合ったときは、今より少し濃厚で、汗の匂いが混ざっていた。
 麗美と付き合えば、毎日あの匂いを嗅ぎながらキスできるのだろうか。でも彼女は後輩に告白されたという。「友情」は今後も大丈夫だと元気よく断言されてしまったのが少しショックだった。それはそうだろう。デートで女性に気も使えず失敗ばかりするこんな男とは、愛情に発展しようがない。

 告白は、結果としてしなくて正解だったということか。
 彼女は今、他の男にも告白され悩んでいる。私が告白してもきっと迷惑でしかない。これ以上「気の利かない男」にはなりたくない。もし麗美が後輩の告白を断ってくれたならば、その時改めて再アタックすべきではないだろうか。
 ああ、それにしても麗美のあの唇の感触、あの匂い。頭にこびりついて離れない。

「うわっ! すっっっっっごい美人さん……」
 麗美が立ち止まり、小声でつぶやいた。
「ねぇねぇ見て? あの人……めちゃくちゃ可愛くない?」

 ちょうど私たちと入れ替わりでMM号に入っていく男女の後ろ姿が見えた。ということは私たちと同じく、友人同士なのだろう。
 女性の方がドアを締めるためこちらに振り向いた。私と目があった。すらりとモデルのようなスタイルの透き通るような美人、いや、美少女といったほうが適切だろうか。女性は恥ずかしそうに私に軽く会釈し、脱いだ靴を綺麗に揃えている。
「あ、ゆきさんありがとう。僕の分まで……」
「あ、うん。いいよー、Iくん」
 女性はいそいそと立ち上がりドアを締め、MM号の中に姿を消した。

  *

「ちょっとOくん、ガン見しすぎ」
 麗美がにやにや笑ってこちらを見ている。
「な、なんだよ。麗美が見ろって言ったんだろ?」
「ふふふ。でもほんとに綺麗な人だったね。見とれちゃうのもわかる」
「まあたしかに美人、というか、可愛いというか」
「女子アナにいそうじゃない? ああいうタイプ」
「いるいる! 俺も同じこと言おうとしてた」
「髪型もメガネもファッションも垢抜けない感じだったけど、ちゃんとお洒落したらまさに女子アナだわ」
「さすが女。あの短時間で細かいとこまでよく見てんな」

 美人かそうじゃないか、おっぱいが大きいかどうか、せいぜい二×二の四マスに雑にカテゴライズするだけの男とは大違いである。ちなみに私の中で麗美は「おっぱいの大きな美人」マスに入学以来君臨している。そしてさきほど「ゆき」と呼ばれていた女性は「おっぱいの小さな美人」マスに格納された。

「パンパンに膨らんだおじさんバッグもちょっと意味わからなかったわ」
「仕事の書類かな」
「どう見ても学生だよ」
「あそこに呼ばれて入っていったってことは、あの子も検証に参加するんだな」
「どこまで行くと思う?」
「ステップ〇ですら俺には想像できないけど」
「MM号に入った時点で、なんとなくここまでならオーケーというラインがあるはずよ」
「たしかに。じゃあ、ステップ一」
「普通に考えればね。でもああいうおとなしそうな子が意外と……ってこともあるのよねえ」
 MM号の外から中を覗き込もうとする麗美。
「まさか」
 私も並んで覗き込む。何も見えない。
「女は外見じゃわからないものよ。ふふふ」
「あんな真面目そうな子が単なる男友だちとなにかするとは思えないけど。誰かさんと違って」
「Oくんがぜんぜん協力的じゃなかったからステップ三どまりだったわ」

 私が麗美のあの行動を茶化すと、彼女もまたにやにや顔で反撃してきた。
 彼女特有のこの笑い方が私は嫌いではない。彼女なりの照れ隠しなのだと理解しているが、美人が照れて可愛くないわけがないのだ。麗美のように普段すかした女性であればとくに。

「協力したらステップ二十まで行ってたってこと?」
「ふふふ。どうでしょうねー」
「せめてステップ二は今からでもさせてくれよ。なんで飛ばしちゃったんだよ」
「えー。ステップ二ってなんかもうエッチじゃん。なんであれが千円なのかわかんない」
「キスはエッチじゃないの?」
「それももう忘れて」
「へーい」
 こうして雑談する分にはスムーズに会話できるのに、いったん女性として意識してしまうととたんにしどろもどろになってしまう。童貞の悲しいところ。
「ねぇOくん?」
「なに?」
「手、繋ごっか?」
「え?」
「デートなんだからいいでしょ? そのくらい」

 麗美が差し出した手を握り返す。MM号では余裕がなく気が付かなかったが、あらためて握ると麗美の手は想像よりもずっと華奢で可愛らしい。
 夏の日の夕方、じんわり汗ばんだ手を握り合い、私と麗美は帰路についた。

  *


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