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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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番外編:Oと麗美とMM号 (2)-1

 告白するぞ。

 MM号(丸見え号)で麗美と二人きり、肩を並べ座っている。
 この上なくいい雰囲気。だと思う。
 麗美も同じように思ってくれている。気がする。

 大きく息を吸う。吸っては吐く。
 さっきから同じことを何度も繰り返している。
「好きです。付き合ってください」
 たった一言、言えばいい。たった一言発することのなんと苦しいことか。
 時間ばかりがいたずらに過ぎていく。
 ああ、もう――。

  *

「私ね、一昨日、サークルの人に告白されたんだ……」

 先に口を開いたのは麗美だった。
 しまった。千載一遇のチャンスを逃した。しかもなんだって? 告白された?
 思わず聞き直した私に、麗美は同じ言葉を繰り返した。
「一年生の後輩なんだけど、告白されちゃった……」
「……そ、そうなんだ」
「ふふふ。モテるでしょ?」
「はは……知ってる」

 麗美がモテるのはよく知っている。告白された話は風のうわさでよく聞くし、たぶんそのうち一人とは付き合ったことがあるはず。正直私なんかとよくデートしてくれたものだと思う。きっと彼女は処女ではないんだろうななどと余計なことを考えてしまい、辛くなるときがある。
 それにしても、くそ、自分の告白どころではなくなってしまった。
 返事はしたのだろうか? 怖くて聞けない。

「返事は?って聞いてくれないの?」
 麗美の方から催促されてしまった。自分め、ヘタレすぎる。
「あ……えと……返事は……したの?」
「ううん。してない。迷ってる……」
「そ、そっか」

 その場で断らなかったんだ。迷ってるということはまんざらでもないということ。どうするのだ。なんて返事するつもりなのだ。やっぱり怖くて聞けない。

「なんて返事するか気になる?」
 気になるに決まっている。麗美が他の男と付き合うなんて考えたくもない。なのに動揺のあまり言葉が出ない。
「気にならないの?」
「あ、いや……気に……なる」
「なんか私が言わせたみたい」
 麗美が白い頬をぷくっと膨らませた。まずい、機嫌を損ねてしまった。違う、そうじゃない。気になりすぎて聞けないだけなのに。
「ち、違う! ほんとに! 気になってる!」
「教えてほしい?」
「はい」
「ふふふ……。内緒」
 くそ。おちょくっているのか。モテモテ美人女子大生バーサス非モテこじらせ男。圧倒的格差社会。

 それにしても今日の麗美。いつもこんなキャラだっけ? いや、にやにやおちょくってくる部分はいつもどおりなのだが、なんかこう「女」を見せているというか、あざとさを感じるというか――。大学で皆といるときのクールなお澄ましキャラとは違い、全体的に「可愛いオーラ」がすごい。思い返してみると、待ち合わせのときからそうだったかも。

「んーー。どうしよっかなー。迷っちゃう」

 大きく伸びをする麗美。つるんと綺麗に手入れされた腋の下に思わず目が行く。甘い匂いがふわりと立ち上る。ノースリーブのワンピースの袖口から、ブラジャーの紐とカップの縁がちらりと見えた。白地に、薄いピンクや黄色の花柄があしらわれている。なんだこれ、超可愛い。

「あー、いまOくん、私のここ見てたでしょ?」
 自らの胸の膨らみを指差す麗美。
「みみみ、見てないよ!」
「ふふふ。ねぇ、Oくん?」
「な、なに?」
「こっち向いて、そのままちょっと目閉じて?」
「え? あ、うん……」

 言われたとおり麗美のほうを向き目を瞑る。
 次の瞬間、甘い匂いが近づいてきて、唇に、柔らかい何かが触れた。
 一、二、三、四、五、六、七、八、九、十――。

「やったー! 二千円ゲットー!」
「ちょ…………麗美……」
「お互い今は彼女彼氏いないんだからいいでしょ? このくらい」
「あ…………う…………」
「せっかくここ来たのに五百円じゃもったいないなーって思ってたんだ」
「うぅ…………」
「じゃ、行こっか? すみませーん! 終わりましたー!」

 麗美が声をかけると、奥からさきほどの怪しい男と女性スタッフが出てきた。

「はーい! おつかれさまでしたぁー! どうでしたか?」
「いやぁ、緊張しちゃいました」
「可愛らしいキス、されてましたね」
「二千円のために頑張りました。ね、Oくん?」
「あ……う、うん……」
「見てるこちらもきゅんきゅんしちゃいましたよ?」
「やだあ、恥ずかしい。うふふ」
「もう少し行くのは、さすがに難しかったですか?」
「まあそうですねー。そんな人たちいるんですか?」
「たまにいらっしゃいますよー? 中には最後までなんて方も……」
「えーー!? ありえない! ねぇ、Oくん?」
「え? あ……うん……さすがにね、あはは……」

 最後までどころか、実は今のが私の記念すべきファーストキスなのだが、そんなことを言える雰囲気ではない。

「なんだか仲良しなお二人なんですね! 男女の友情、今後はどうでしょう?」
「大丈夫だと思います!」
「男性の方も、どうですか?」
「そそ、そうですね……だ、大丈夫だと思います」
 友情などいらない。愛情がほしい。
「ありがとうございます! それではっ! 『密室で男女の友情は成立するか検証』の結果は、『成立する』ということで、よろしいでしょうかあー?」
「はい!」
「は、はい……」
「ではこちら、謝礼の二千円になります! 本日はデート中ご協力ありがとうございました!」
「ありがとうございました」
「お出口はこちらになります。お気をつけてお帰り下さいー!」

  *


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