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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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番外編:Oと麗美とMM号 (1)-4

「ふふふ。やだぁ、Oくん。私の身体まさぐらないで」
「あ……う……」
 そんなつもりはなかったのに誤解を与えてしまった。まずい。手が動かないよう固定しなくては。腕に力を込める。でも、あれ? これってハグなのか? きつく抱きしめてしまっていないか? さっきの映画で見た恋人たちのように。しかしここでまた緩めたら、またまさぐっていると思われてしまう。
 しかしなんだ、このムニムニとした指先の感触は。気持ちいい。しっとり汗ばむ美人女子大生と密室で抱きしめ合っている。やばい。パニックに陥った私はもうそのままじっと動かずにいることしかできなかった。
「んん……ん……」
 心なしか、私の背中にまわされた麗美の両手両腕にも、ぎゅっと力が込められたような気がした。

  *

 ハグまで済ませてしまうと、私たちはもう手持ち無沙汰である。

 結局三十秒どころか、二、三分は抱き締めあっていたのではないだろうか。最初はうろたえてしまったが結果オーライ。麗美の体温も胸の感触も匂いも息遣いも、思う存分堪能できた。

 終わったらスタッフを呼ぶよう言われているが、なんとなく呼ぶ気にもならず、かといって次のステップに進むでもなく、ただソファベッドに座り道行く人を眺めている。
 アダルトビデオの撮影スタッフにしたらエッチなことが始まりそうもないカップルに居座られていい迷惑だろうが、この際気にしないでおこう。

「今日はさ。いろいろごめん……」
「ん? どしたの? いきなり」
「俺デートとか慣れてなくて。麗美あんまり楽しめなかったんじゃないかって」
「ふふふ。最初キョドってたもんねー、Oくん」
「あとで考えて気がついたんだけどランチも麗美の都合聞かずに勝手に決めて勝手に歩き出しちゃうし、ヒール穿いてるのに歩くペース考えてなかったし、転んだの俺のせいだなって、そのこと自体、気づいてなかった」
「なんだそんなこと? 転んだのは私がヒール慣れてないだけだから。慣れない女の子っぽい格好するもんじゃないなって。あはは……」
「女の子っぽい格好、可愛かったよ」
「あ、ありがと……」

 らしくない言葉をつい発してしまった私も私だが、麗美は麗美で照れているのか? なんだか可愛い。

「そ、それで俺舞い上がっちゃってさ。他にもきっといろいろやらかしてんだろうなって、今反省してるところ……」
「そ、そんなことないよ! 今日麗美、楽しかったよ!」
「れ、れいみ……?」
「あ、いや……私とにかく楽しかったから!」
「ちょっと待って。今麗美、自分のこと麗美って言った?」
「あーーあーーあーー! 聞こえない。何? なんかしゃべってる?」
「照れてる?」
「いいからほら、さっさと反省しなさい」

 笑い合う。自然と肩と肩が触れ合う。
 幸せに浸っていたら、麗美が思い出したように口を開いた。

「あ、そうだ。反省といえば……」
 またいつものにやにや笑いに戻っている。不吉な予感。
「あのさ、ランチのデザートのあと私のコーヒーまだ残ってるのに『じゃあ行こうか』ってどんどんお会計行っちゃうのはどうかと思いました」
「う……」
 なんだ、やっぱりまだやらかしてるじゃないか。その失策にはまったく気がついていなかった。むしろ麗美が美味しいと喜んでくれていたので、意気揚々とお会計してた気がする。デートって難しい。
「あ、あとポップコーン買うときは味も聞いてね。勝手にバター味にしてたけど、私はキャラメルが良かったなぁ。どっちにするかで口喧嘩したりして最後はじゃんけんで決めたりしたいじゃん?」
「ああ……」
 麗美とポップコーンの味で口論してじゃんけんしたかった。楽しそう。恋人同士のデートっぽい。
「あ、ポップコーンといえば、Oくんなんで三回に一回、私に手をぶつけてくるの? 最初は偶然かなって思ったんだけど測ったように三回に一回のタイミングだったから少しキモかったよ。何かのおまじない?」
「うぅぅ……」
 バレてた。穴があったら入りたい。

「あ、ついでにもう少し言っていい?」
「どうぞ……」
 麗美のにやにやが止まらない。これが彼女の本性なのか。
「まず」
「まず? こんなに言ってまだあるの?」
「まずOくんの趣味で行ったトレーディングカードショップ? 趣味はもちろんいいしOくんの早口の解説も知らないなりに楽しめたんだけど、あのお店、男の人たちの汗と熱気ですごく臭かった。ぜったいお風呂入ってない人、何人かいたからね? 私完全に浮いてたしじろじろ見られて怖かった。デートで行くならもう少しお店は選んでほしかった」
 たまに彼女連れで来ているイキりオタクが私は羨ましかったのだ。それがやりたかっただけなのだ。しかし言われてみれば、たしかにごもっとも。
「はい、気をつけます……次はなんでしょう……」
「次は私も悪いんだけど、ここにくるまでの話。ひと駅散歩がてら歩こうってなって歩いたけど、真夏の炎天下はちょっと辛かった」
「ですね」
「でもこれは私も悪いの。Oくんとのおしゃべり楽しいからそれもいいかなって思ったから。あとヒールで長時間歩くのは大変なんだなって学習したから、Oくんも今後覚えておいてね」
「わかりました」
「あと最後に」
「はい」
「さっき流されちゃったけど、大事なことだからもう一回言うね?」
「勘弁して……」
「今日は楽しかったよ。ありがとう」

 麗美がにっこり笑った。学校では見せない、柔らかな笑顔。
 ああなんて可愛い女の子なんだ。最高すぎる。

 よし、告白しよう。
 実は今回のデート最大の目的が麗美に告白すること。今がその最大のチャンス。
 今日一日チャンスはいくらでもあったのに一歩踏み出せなかった。しかし麗美の笑顔に勇気づけられた今なら言える。

 私は、大きく息を吸う――。


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