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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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番外編:Oと麗美とMM号 (1)-3

「ひょっとしてアダルトビデオってことですか?」
「まあそうですね! 一般的にはそのように称されるような類の、映像作品にはなってまいります!」
「何もしなくてもいいんですか?」
「もちろんです!」
「え? ちょっと……MM号、めっちゃ丸見えじゃないですか」
「はい! こちらはですね、マジックミラーになっておりまして、ほら、このようにすると外からは何も見えなくなるという特別仕様車になっております!」
「中からは見えるんですか?」
「中から外は丸見えでございます! このドキドキ感がMM号最大の特長となっております!」

「ふーん……。ステップ〇くらいなら。ねぇ、Oくん」
「麗美さえよければ俺は全然」
 正直それだけで飛び上がりたくなる気持ちなのだが、表情には出さず我慢する。
「ステップ一も、まあ……」
「そうだね」
 麗美とハグできるのか。十秒も。金を払ってでもしたい。
「ステップ二から急にハードル上がってません?」
「友人同士じゃやらないよね、普通」

 十秒も麗美の胸やお尻を触れたら――。私はごくりと生唾を飲んだ。
 先日大学の男女グループ数名で海に行ったとき、麗美のたわわに膨らんだ胸と尻は私たち男子の、というよりビーチ中の注目を集めていた。あのときの写真と記憶でいったい何度マスターベーションしたことか。

「最後のほうとか、恋人同士でもしないこと書いてあるし。あはは」
「そうですね! その分謝礼も弾みますんで! ぜひ!」
「このくらい俺は平気だぜ」
「ふふふ。ばーか」
 リラックスしていればこのくらいの軽口は叩ける。童貞のくせに。
「制限時間は三十分! 中は冷房も効いてて涼しいですよ? 挑戦いたしますか!?」
「んー、じゃあ飴玉と五百円もらって帰ろっか?」
「いいよ」
「ありがとうございます! ぜひ飴玉と言わず二十万円ゲット目指して頑張って下さい!」
「ふふふ。がんばります」

 女性スタッフに案内され、MM号の荷台部分に乗り込む。中にはソファベッドが道路に向けて置いてある。
 スタッフが奥に引っ込むと、私たちは本当に密室に二人きりとなった。

  *

「まさか麗美とアダルトビデオに出演することになるとは」
「ちょっとそういう言い方やめてよー。変なことしないからね」
 ソファベッドに並んで腰掛ける私と麗美。本当に外が丸見えだ。
「ははは。もちろん。モザイクもかかるしそもそもハグしたくらいじゃ採用されないでしょ」
「ほんとに外からは見えてないのかな?」
「こっちからはめっちゃ見えてるのにね」
「あ、さっきの怪しいおじさん、また声かけてる」
「見事にスルーされてるな」
「普通そうでしょ。私も疲れてなかったらそうするよ」

「どうする? とりあえず手、繋ぐ?」
 内心のわくわくを悟られないよう、せっかくだからといった体で話しかける。
「いいよ」
「じゃあ」
 右手を麗美の方へ差し出すと、彼女が左手を重ねてきた。
「ふふふ。いざするとなったら、少し緊張するね」
 初めて触れ合う私の手と麗美の手。ああ、幸せ。これだけで股間が固くなってしまう。大丈夫。座っていればバレることはない。

「なんか変な感じ。Oくんとこんなことしてるなんて」
「意外と恥ずかしいね」
「うん」
 つい口数が減ってしまう。
「何秒だっけ?」
「三十秒かな」
 本当は十秒だが嘘をつく。
「……」
「……」
 麗美が私の手のひらをごにょごにょやってきたので私もやり返す。くすくす笑い合う。どさくさに紛れ「恋人繋ぎ」をしてやったが、麗美もとくに嫌がるそぶりはない。あー幸せ。
「そろそろかな?」
 ちぇ。もう終わりか。
「飴ちゃんゲットだね」
「うん」
 しかし麗美はその後もしばらく手を繋いだままでいてくれた。事務的にそそくさ切り上げられると思っていたのに、少し意外。

「じゃあそろそろ。ステップ一に挑戦しようか」
「いいよ」
 もちろんハグ童貞でもある私だが、手を繋いだせいか思ったより緊張していない。麗美も同じだったようで、私たちは自然と身体を互いのほうに向け、座りながらハグをした。
 その瞬間、全身に電流が走った。なんだこの暖かい物体は。なんだこの柔らかさは。どこからともなく漂ってくるいい匂い。髪の毛か、うなじか、腋の下か。可愛い女の子の体臭、美人女子大生の体臭の圧倒的破壊力。
 麗美の息遣いが聞こえる。温かい吐息が首筋にかかる。
「これも三十秒?」
「うん」
 また嘘をつく。

「ふふふ。Oくん、なんか心臓バクバクしてない?」
「う……」
 密かに心寄せる女性と抱きしめ合い、バクバクしないわけがないだろう。とも言えず、わけのわからない呻き声しか出せなかった。
 手の置き場だってわからない。あまり下だとお尻に触ってしまいそうだし、上すぎるとワンピースの布地越しではあるがブラジャーの紐に指が触れることになる。おまけに麗美の胸のボリュームが想像以上。最初普通にハグしようとしたら、乳房の弾力でぽよんと弾き返されてしまい、以降ずっとどの程度の力で抱きしめるべきか迷ってしまっている。
 結果として手の位置も腕の強さも落ち着きなくころころ変更することとなってしまった。ガサゴソという衣擦れの音だけが密室に響く。なんとなくエッチな音である。


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