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愛欲の日々 -心と身体-
【熟女/人妻 官能小説】

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聡美(六.)-1

 ところがそれから三カ月ほど経ったある日、前田から突然連絡があった。
 近いうちに会えないかという連絡だった。
 聡美はパートが休みで家族が誰もいない日を指定して、それを前田に伝えた。
 三カ月ぶりに会った前田はとくに変わった様子にはみえなかった。ただ無精ひげはキレイに剃っており、以前よりさわやかな印象は受けたが、ボサボサに伸びた黒髪はそのままだった。
「急に連絡がなくなったから、心配しちゃったわ。なにかあったの?」
 前田はあいかわらず口数少なく近況の報告をした。
「じつは就職先がきまって、引っ越すことになったんです」
「そうだったの……」
 聡美は、前田から急に連絡が来なくなったのは、就職活動をしていたからだったのかと納得した。
「どこへ引っ越すの?」
「名古屋です。そこの製薬会社に就職しました」
「そう、おめでとう。じゃあわたしたち、もう会えなくなるわね」
「今日はそのことで相談があって来たんです」
 そこで前田が申し出たことは、聡美が夢にも思っていないことだった。
 家族を捨て、自分といっしょに名古屋まで来てほしいと言ったのである。
「バカなこと言わないで――そんなことできないわ」
「なぜです?」
「なぜって――それは……」
「おれたち、あんなに愛し合っていたじゃないですか――なのになぜ?」
「……」
 聡美はどう答えていいのかわからなかった。
「――わかりました」前田はそう言うと、ソファから立ち上がり、帰る素振りをみせた。
「おれたち、これでもう終わりみたいですね。もう会うことはないかもしれませんが、どうぞお元気で……」
 前田がリビングから去ろうとしたそのとき、聡美は急に立ち上がり背後から前田に抱きついた。前田は振り返り、聡美の顔をみつめた。これほど聡美を愛しいと感じたことはなかった。
 二人はソファの上に倒れ込み、衣服を脱ぎ棄て全裸になると、そのまま身体を重ねた。
 もうこれで最後かもしれないと思うと、聡美の身体は燃えあがった。それは前田も同じだった。
 その日は聡美も積極的に前田の身体を求め、前田もまた、その求めに応じるように激しい欲情を聡美の身体にぶつけた。
 聡美は行為のあいだ何度絶頂をむかえたかわからなかった。どんな淫らな行為も、どんな無茶な要求も、すべてその身体で受け止めた。
 ――もう何もかもがどうでもよくなっていた。家族なんかどうでもいい。この人と思う存分愛欲を貪りあうことさえできれば、他はもうなにもいらないとさえ思ったのである。
 やがて前田が聡美の身体の上にのしかかり、最大限に膨張して熱り立った男性器が身体の奥深くまで届いたとき、もう理性など残ってはいなかった。前田が力強く腰を打ちつけるたび、自然と声がもれるようになり、いつのまにか獣のようなせつない声をあげるようになっていた。
 前田は聡美の中で果てた。すべての愛欲が聡美の中にそそがれた。今日は安全日ではなかった。
 行為が終わったあとも、二人の性器はつながったままだった。そのまま抱き合って呼吸を整えていると、ふと、裏庭のほうで物音がきこえた気がして、真っ白になっていた聡美の頭は現実に引き戻された。
 前田の身体を押しのけ、引き戸の近くまで行くと窓ガラスから外をうかがってみた。
 ――だれもいない。気のせいだったのかもしれない、と思ったが、ざわつく胸騒ぎが消えることはなかった。
 やがて前田は去っていった。聡美は前田の申し出をはっきりと断り、もう二度と会わない約束をした。
 ずぶ濡れになった智司が帰宅してきたのは、それから二時間が経ってからだった。


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