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愛欲の日々 -心と身体-
【熟女/人妻 官能小説】

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智司(三.)-2

 と、そのとき、玄関のドアが開いて母が帰ってくる音がした。
 母はあわててリビングのとびらを開けると、帰宅が遅くなったことを智司にわびた。
「ごめんなさい、残業をしたあと、パートのみんなで飲みに行こうってことになったのよ。断ろうと思ったんだけど、ひさしぶりのことだったし、ほら、いろいろ付き合いってものがあるじゃない」
 母は冷蔵庫を開けると、「ちゃんと食べたみたいね、母さん、先にお風呂入ってくるから」と言って、脱衣所のほうにむかった。
 リビングで一人きりになった智司は、母が風呂場に入ってシャワーをあびる音を確認すると、ソファから立ち上がり、テーブルの上に置いてある母のかばんを開けた。
 本当はこんなことなどしたくはなかったのだが、頭の中にこびりついた疑念を晴らすためには、こうするしかなかった。
 かばんを開けると、すぐに母のスマートフォンが出てきた。電源をオンにすると暗証番号を求められたので、適当に思いつくかぎりの番号を入力してみた。母の生年月日、父の生年月日、自分と姉の生年月日、それから母がよく使いそうな番号など……すべて試してみたものの、結局ロックを解除することはできなかった。
 やがて風呂場から母が出てくる音がしたため、智司はあわててスマートフォンをかばんの中に戻そうとしたそのとき、四角い箱のようなものが手に当たり、気になってそれを取り出してみた。はじめは化粧品の箱かと思ったのだが、すでに封は開けられており、中を確認してみると、出てきたのは男性用避妊具の束だった。それもだいぶ数が減っており、もうあとわずかしか残っていない。
 智司の疑念は確信に近いものになった。やはり母にはべつの男がいるのだ。
 動悸がして、胸が苦しくなり、呼吸が浅くなったような気がした。
 なぜ母さんが? ――そう思わざるを得なかった。
 そのとき、母が脱衣所から出てくる音がしたので、智司は急いで箱をかばんの中の元の位置に戻した。そしてソファに座ると、なにごともなかったように態度をつくろった。
 ――このことを、父や姉は知っているのだろうか?
 おそらく姉は気がついている。気がついているから、母にあのような態度をとっているのだ。
 父はどうだろう? ――気づいていないかもしれない。いつも仕事の日は帰りが遅いし、休日でもあまり母のことに気を配っているようには見えなかった。
 だがいちばんの問題は、相手が誰かということだ。
 やはり母がはたらいているパート先の誰かなのだろうか。
 しかし母が入っているシフトは、母と年齢の近い既婚者女性が一人と、地元の女子大生と若いフリーターの女性が一人ずつ、それから店長の男性が一人しかいないはずである。
 だから、そんな相手がいるとすれば本命は書店の店長だということになるのだが、店長はたしか七十歳を超える高齢者。智司も何度か会ったことはあるが、あの柔和で気さくな店長が母とそのような関係になるとは考えにくかった。
 では、スポーツクラブは?
 母はパートをはじめた時期とほぼ同じくして、年の近い同僚の佐々木さんにさそわれてスポーツクラブに通っている。頻度は週一、二回という程度だが、そこで知り合った人と仲良くなったという可能性もある。
 また、それらとはまったく関係がない人ということも考えられた。
 母は今年で四十二歳だとはいえ、身体の線は同年代の女性と比較しても引き締まっているほうだし、近頃は腰のまわりや太ももに肉がついてきたと嘆くこともあったが、それでも見た目には無駄な脂肪はついていなかった。また容姿も美人とまではいえなくとも、化粧をすれば多少は若い男の人に声をかけられるくらいには整っているはずである。街の中で知らない男の人に声をかけられ、素直についてゆく母ではないと思いながらも、その可能性をまったく排除できない自分が悲しかった。
 夜も更け、就寝する時刻になっても、智司はムラムラとする気分が落ち着かず、パソコンの電源を入れてアダルトサイトの動画を見ながら手淫をし、射精をすることで、ようやく昂る気持ちをしずめることができた。


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