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方言ダッシュ
【エッセイ/詩 その他小説】

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方言放談-1

 自分の部屋の書棚に、雑誌『少年倶楽部』の復刻版がある。
 昭和8年10月、11月、12月号の3冊セットだ。
 当時の学童たちの世界をナマで感じられるから、しばしばひっぱり出してながめている。

 この10月号の『学校だより』に、目をひく当時の小学生の投書がある。出来るだけ原文で引用してみた。

   ─━─

 僕の方の学校には一つの悪風があります。
 それは言葉の悪いことです。その悪さといったらまづ県一です。
 例へば、漬物のことを『ガッコ』といひ、御汁のことを『オヂケッコ』といひます。
 『みんなここに集れ』といふことを僕達は『イガガダ、コサコヂバレ』といふのです。
 だからよその人が来ても、言葉が通じなくて困ることがあります。
 僕達の学校では、この言葉を直さうとしてゐますが、なかなか直りません。

  ━─━

 漬物をガッコという時点でピンときた方もあろうが、これは今の秋田市の小学校生徒の投書だ。
 「イガガダ、コサコヂバレ!」を当時の学童たちのリアルな声で聞きたくなってくる。

 「方言=悪い言葉」扱いしてるのが少々残念ではあるけど、「よそから来た人に言葉が通じない」のは深刻な事態であったのだろう。

 この10年ほどあとに、戦争の激化で学童疎開という名目で学童たちが地方に移っていく。
 学童たちを都市部から地方に移した狙いのひとつに、「言葉の均一化」ってのもあったそうだ。

 でも、言葉の壁ってのは同一県内の疎開なのに、都市部から移ってきた子どもたちに疎外感を持たせるほど、高かったそうなんだなぁ。
 


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