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えんそうかいのあと
【同性愛♂ 官能小説】

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お兄さまのお側で僕は-1

 ピアノの演奏会を無事終えたお兄さまと、助手である僕は、マンションに帰ってきました。

 僕はお兄さまの手を軽く握って、防護の固いエントランスからエレベーターに移り、ふたりの住む部屋に入っていきます。

 玄関で靴を脱いだまま、目を見開いて立っているお兄さま。僕はお兄さまの服を、ズボンを、靴下を、そして下着もすばやくはぎ取ります。
 全裸になっても、遠くを見つめて立ったままのお兄さま。同時に全裸になった僕は、お兄さまを王子さま抱っこして浴室に向かいます。

 お兄さまをひざの上に抱いて浴室の腰かけに座った僕は、ほどよい温度になったお湯を放つシャワーヘッドを手にして、だらりと垂れたお兄さまの足にお湯をかけてゆきます。

 お兄さまの股間でなりをひそめていた性器が、突然黄色い細い流れを放ちはじめました。僕はシャワーヘッドを太ももに寄せて、そのあたりを温めます。お兄さまは何も言わず表情も動きません。
 でも僕にはわかります。お兄さまは足があたたまるにつれて、自分が安心できる場所にいることを感じ、演奏会のあいだがまんしていたオシッコを思い切り放ったのです。

 「今日の演奏も、美しく仕上がってましたよ。」
 僕は声をかけます。でもお兄さまは黙っています。それは当然です。演奏に三十分以上かかるソナタを二曲演奏したお兄さまの心と身体は、達成感からくる疲労と虚脱感で、エレベーターのボタンすら押せない精神状態になっているのです。

 ちょっと大ぶりなバスタオルに、隠れてしまいそうなお兄さま。僕はシャワーで潤ったお兄さまを胸にかかえて寝室へと向かいます。

    ▽

 お兄さま、とは言いますが年齢は僕よりずっと下です。
 お兄さまと僕は、ピアノの選考会でいつも一緒でしたが、お兄さまはいつも僕より下の成績でした。

 (なぜ……なぜだよ。)僕は選考者たちの感想にいつも納得いかず憤っていました。
 「譜面を忠実にたどっているだけで演奏者の個性がない」
 (ただ単に譜面をたどってるんじゃないよ。『あのひと』の演奏には譜面に隠れてる、作曲家の意志が入ってるんだ。僕なんか、自分の感情を伝えてやろうなんて邪心でかえってつまらない演奏になってしまうんだ。『あのひと』は自分を入れていないから、聴いてる僕たちに作曲家の意志がダイレクトに伝わってくるんだ……)

     

 


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