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惨酷メカ(裏):凌辱のガラパゴス/ゲリラ村の虜囚日記(ケータイSF愚弄小説・18禁)
【SF 官能小説】

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(番外編)遠い過去からの男とロボットたち-1

1
 「何故に存在があるのか、無があるのではないのか?」というハイデッガー的な問いかけについて、「不完全な世界でも「ない」よりは「ある」方が優れており、それならば世界の根源に「善」があるのは明白」とアリストテレス学派ならば答えるだろう。その至高の根本的な「善」を中世のキリスト教徒たちは「神」と呼んだ。
 そしてギリシャのプロティノスやユダヤ神学のカバラ神秘主義は「根本善からの段階的な流出」というアイデアで、世界の形而上学的構造と不完全さを説明しようとしたのだそうだ。つまり「悪」や「不幸」「未熟」を、光の十分でない薄暗がりや影のような「善の不在」によって理解する考え方。
 だが、逆に「悪」を積極的で実在的と見る思想もある。
 たとえばゾロアスター教やマニ教の善悪二元論がそれで、悪神(根源悪)が善と闘争していると説く。キリスト教徒の「堕天使・悪魔」の物語も、善に重点を置きつつ、悪の存在を考えた類似のアイデアである。
 極端な異端宗派(カタリ派?)によれば、世界を創造したのは悪魔であり、人間は善(キリスト)に縋ることによってようやく救済されると説く。それは絶望的で救いのない中世の気分と心情を表しているのだろう。


2
 時代を遡って古代メソポタミア人たちは、人間が創られた理由は「神々のための奴隷」なのだと考えた。つまりは善悪以前の思想的原初の段階。
 ロボット大戦争による世界破滅後に、コールドスリープから目覚めた「彼」にとって、世界はまさしくそのようであった。
 人間は存在した。
 しかし、彼の時代の人間ではない。
 文明退化のみならず、遺伝子そのものが修復や改良を重ね、あるいは模造品・再版品でしかなく、彼にとっては「同じ人間」とは思うことが出来なかった。ちょうどメソポタミアの神々が、人間に対して抱いた「奴隷人形」という感覚のように。
 滅んだ世界の残滓と追憶のための玩具でしかない。たとえ「再生」したところで、元の世界ではない。女にしたところで、生きたダッチワイフと大差がない。
 略奪もレイプも悪いこととは思えない。
 むしろ優良遺伝子の正統な血統の子供を効率良く増やすためには、自分は可能な限りレイプしてでも妊娠させるべきだし、たとえ模造品同然でも人間を増やすためには人形同然の配下の男たちにも、推奨すべきだろう。
 ここは「善悪以前の世界」で、そこからやり直し。
 暴力と破壊も悪いこととは思えない。
 物事というものは、飽和と余剰を浪費や破壊することで再生を促進し、進歩が促進されるからだ。もしも低次の段階で現状の州軍閥などによって「安定」してしまえば、そこで世界は停滞してしまうだろう。それならば自分が「敵対者」となることによって、自助努力を促すことも出来る。それで壊滅するような世界なら、そんなものは「自己責任」だし、しょせんは未来を受け継ぐ価値がない「出来損ないの模造品・泥人形どもだった」ということだ。
 そんなことを考えて、彼はカルトゲリラの一派の凶悪強盗団を起こしたのだそうだ。本当は何もかも嫌になって絶望し、退廃していただけだっただろうか。それはますます狂気を強めていった。


3
 彼が望み願うことは(無茶苦茶好き放題やらかした上で)「本物の人間」である子供たち(たとえ母親が泥人形でも、半分でも本物の戦争前の人間の血を引いていることになる)が増え、彼らのために「奴隷人形人種」が増えて多少とも再建した世界で死ぬこと。
 娘の一人であるチェルシーは有望な後継者候補の一人だった。しかし女であるから、作れる子供の数が限られるのが惜しいところだった。ひとまずは覇気のない弟と小エリアの支配者になれば良し。別に離反しようが楯突こうが、それ自体はどちらでも良かった。
 近ごろはラッキーが多い。昔に乗っていたガラパゴス・グレートが、どこの馬の骨ともわからないゲリラに乗られていたので、チェルシーにプレゼントした(場所を教えて機会を見て強奪させた)。あれは初期生産品の「オリジナル」と呼ばれる代物で、宇宙製造の特殊金属フレームに、スペシャルなブラックボックスを搭載している。チラと聞いたところでは遺伝子認証はちゃんと機能したらしかった(正規パイロットの娘だから)。


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