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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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曲者策士な母の企みで?-3

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 ジョギングのお供は定番のミルカだった。
 彼女(ミルカ)は黒っぽい柴犬で、先代のシェトランドシープのミルキー氏には、ある種の後輩や、ほとんど義理の娘みたいなものなのだろうか? 老齢の彼が長すぎる散歩もといジョギングをだんだんに億劫がるようになったため、助手兼後任者として貰われてきたのであった。けれども若い牝犬が同居したせいなのか、はたまた幼い仔犬に娘のような父性愛を感じたのか、晩年の忠犬紳士ミルキー氏は晴れ晴れとして元気を取り戻して幸福だったようである。
 成長したミルカは先代のミルキー・パパの遺志と任務を引き継いだのであった。およそ柴犬という犬種は元来が猟犬であるため、意外に性格がクールで誇り高いところがあり、小柄な割りに体力豊富なのでうってつけなのだ。
 こうして三沢サエは朝夕に愛犬の散歩がてらジョギングに出るのだけれども、生来に活動的な性格で運動やらスポーツが好きなためなのか、三十代後半になっても健康的でプロポーションはさほど崩れていない。その「親友で義姉妹」でもある二宮玲の母・アヤによれば「サエさんのおかげで自分まで健康になった」とのこと。
 彼女はしばしばジョギングがてらに立ち寄ってコーヒーなぞ飲みながら、女同士で雑談に花を咲かせることも多いのだ。
 そんなときに玲はミルカと遊ぶことも多かったのだが、心ある犬は彼を「身内の者」とでも見做しているらしい。それも単に懐いているだけでなく、自分の主人の一人とさえ思っているようで、嬉しそうなだけでなく耳まで寝かせてじゃれついてくるのが常だった。

「あら」

 Tシャツとジャージ姿で、熟した女の肉感的なボディラインを浮かび上がらせたサエは、窓から眺める玲に玄関先で足を止めた。
 たぶん休日ゆえの遠出なのだろう。
 少なくともサエの家からは、3キロくらいは歩かなければいけない。
 とはいえ、母のアヤの兄と同じ高校に通っていたのだから、微妙な距離ではある。
 サエからすればこうしてジョギングがてらに、長く家族ぐるみで交際のあるアヤと玲の母・息子を訊ねるのは、ちょっとした励みでもあるらしい。

「玲君! 来ちゃった!」

 うちとけた笑顔で手を振るサエに、玲は手振りで自分も下に降りていくことを示し、心そぞろに階段を下りた。

(そうだ、飲み物くらい出してあげないと)

 せっかく来たのに雑談相手の母がいないのでは、きっと残念がるだろう。三秒で折り返しUターンで帰路につかせては流石に可哀想というものだ。

(とりあえず三十分か一時間くらい、お茶飲み話でもするかな)

 つかぬ事を考えながら、玲は妙にソワソワとして、あらぬ考えと本能的な興奮が鎌首をもたげてくるのを自覚せざるを得なかった。
 今、アヤは観測で天文台に泊まっていてこの家にいない。
 しかも祖父母は夫婦で旅行に出ているのだった。
 つまり、サエと自分しかいないことになる。
 けれども「母はいません」などとあしらって追い返すのでは不人情になってしまう。たかが3キロとはいえ、徒歩としてはかなり長い距離を訊ねてきてくれたのだから、多少はおもてなしするのが礼儀だし慣例でもある。母のアヤからも「私がいないときだったらアンタがお相手しなさいよ」と仰せつけられてるのだった。

(あー、どーしよう?)

 玲としては不意打ちされたようで、変に鼓動が高鳴る。
 何故か母のさりげない「別に嫌じゃないでしょ? サエさん大好きだし」という、ほんの数日前の意味ありげな言い方が、ふと蘇って脳裏を過ぎった。これも常識的に考えれば飲み物でも出してしばしトークにお付き合いしろ、くらいの意味なのだろうけれど、それだけではないような響きを感じてしまうのは欲望のせいだろうか。
 しかし何度か泊まったこともあれば、母のアヤとの「濡れ現場」にも遭遇している。夏場などにはアヤの勧めで、サエはこの家でシャワーを浴びて裸同然だったことなどもある。それらの過去の経緯を考えれば、今日だって何が起こるかわかったものではない。


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