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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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暗黒司祭とカリーナの対決-3

4
「ようこそいらっしゃいました」

 青白い顔に尖った耳、禿頭でどこか禍々しい司祭服を着た呪われた「暗黒司祭じょるじゅ」は、嬉々として丁重な態度でカリナを出迎えた。まるで騎士か道化のような仰々しいお辞儀をしてみせるのが憎らしい。
 カリナはこの暗黒僧侶のハゲ頭に、饅頭のように焼印でも押してやりたいと夢想する。
 しょせんこの慇懃無礼な態度は舐めきった本心の裏返しでしかない。

「また会えて嬉しいです」

 じょるじゅは上得意客を相手にするように嬉しげである。
 この世界線でのカリナは、以前にじょるじゅのケルベロス号を使って、願いを叶えたことがある。しかし勝利したのではなく、一時は魂と肉体を囚われることになったのだ。彼女が無事に元の世界に戻れたのは、水母天使宮殿駅が捕虜交換して(車掌をやっていたカリナと融合させて)解放・現世回帰させたからでしかない。
 悪魔めいた笑顔のじょるじゅは愉快そうに、直径一メートルくらいの大きな水晶玉をどこからともなく取り出して、それに病室の莉亜を映して見せた。

「さっきお亡くなりになりました。ご臨終です、アーメン。それからファックフレンドのリョウ君とやらは、こちらの白く濁ったヨーグルトが大好きな病弱ブルガリア嬢(さりげない愚弄発言!)の早死にがきっかけでこれから別の悪い女に引っかかり、これからとんでもないことになって破滅する予定でゴザイマス」

 暗黒の神父は「きひっ」と笑った。嬉しくてたまらないらしい。
 挑発に載せられていることくらい自覚していたが、カリナは後に退く気はない。

(鵺さんやコアラさん、怒るかも)

 せっかく助けられて現世に復活した命を、また安易に賭けるのは褒められたことではない。
 けれども四の五の言っているときではなかった。

(莉亜、必ず助けてあげる!)

 こんのときに彼女を救うにはケルベロス号の奇跡の力はたしかの決定的だろう。
 カリナは顎を上げて睨みつけた。

「やってやんよ。かわりに絶対に莉亜を助けるんだぞ?」

「こちらへ。フフ、それにしても学校の夏服もお似合いですよ」

 丁重で邪悪なじょるじゅに導かれ、漆黒のケルベロス号へと乗車する。
 そして車両の中の物体に目を瞠った。

「は?」

 それは椅子に縛られた裸の男。カリナと同い年くらいで、しかも一糸纏わぬ全裸だった。
 拘束されたまだ若そうな男は、頭からスッポリと荒布の袋を被せられて、その顔と表情は見えなくなっている。雰囲気からすればほとんど意識もないようである。
 目を白黒させるカリナに、じょるじゅは鷹揚とした態度で言った。

「私は今は機嫌がいい。今回の対価はあなたの処女です。そのどこの馬の骨ともわからない男で改めてバージン捨てやがりください。
 車掌時代のあなたは素晴らしく穢れて芸術的にヤサグレた、うら若い中古女だった分際で、何事もなかったように元の世界に戻ってやり直してやがるの、けっこうムカつくし悲しくなる。私は程好くぶっ壊れていた、かつてのネメシス号のあなたの方が好みなんです」

「テメーの好みなんか知るか、ボケ。その禿げた頭見てると粗末な亀頭みたいなんだよ」

「哀しいことをおっしゃらずに。私はあなたの純潔破滅の顔が是非見たい」

 吐き捨てるカリナに、じょるじゅはニヤニヤ陰険な喜びに顔を輝かせている。
 考えてみれば女の「処女」は世間だけでなく、この変態暗黒ミラクル列車のケルベロス号の相場でも高く売れる取引材料であるし、たとえ非処女でも異常極まりない陵辱を代償とすれば死者蘇生も可能らしい。これこそ男性差別で、およそ男にはない、女性客だけの優待や特権ではあるけれども、やっぱり侮辱的で悲惨な代償に変わりはなかった。


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