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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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暗黒司祭とカリーナの対決-2

2
 親友の家の前に来たら、救急車が止まっていた。
 しかも酸素吸入マスクをつけて、ストレッチャーで運び出されていくところだった。
 どうやら発作でも起こしたらしく、薄目を開けた莉亜はつい駆け寄ったカリナの姿を認め、微かな微笑だけ浮かべた。だがそれで力尽き、そのまま意識を失ったようだった。
 サイレンを鳴らして走り去っていく救急車を呆然と眺めながら、思い出す。

(そうだ、リョウ君)

 莉亜が命の瀬戸際から回復したのは、彼のおかげだとか何とか。
 それでカリナは、急病に陥った友人の彼氏に一報してあげるべきだと思い至る。
 面識があっていざというときのことを考えてアドレスを聞いていたのだった。そのことは莉亜も知っている。ただしカリナの方はアドレスを教えなかったのは、友人への心情的な配慮もあってのことである。こと色恋沙汰に関しては、女の不安と嫉妬というのは、純情で真剣であるほどに洒落にならないからだ。
 そも、リョウが(女性の目に)男として価値が一番輝くのは莉亜とセットであるからで、カリナからすればただの好男子でしかない。素敵なカップルには幸福な時間を長く過ごして欲しいと思うのは、親しければなお更でもある。

(でもお見舞いに行っても、病室に入れるのかな?)

 聞いていた話では、幼馴染のリョウのことは莉亜の家族も知っているから、たとえ面会謝絶でも家族並みに、ほんの短時間なら病室に入れて貰える可能性がなくもない。たとえお見舞いの電話で伝言を託したり、ちょっとした励ましのメモなんかを付き添いの家族に渡すだけでも、意味はあろうというものだった。

(やっぱ、親友としては、ね!)

 カリナは使命感のような気持ちで携帯電話を取り出す。
 けれどもスマホの画面を見たら、想定外の変てこなメールが届いていた。
 カリナはこんな普通ではないやり方に覚えがないわけではない。
 これは「知っている奴ら」の仕業だったのだ。

(あいつらの仕業なのかな?)

 しかし偶発事象に便乗するやり方、タイミングを見計らった提案に乗って、自発的に飛び込んでくるような客を好むことからすると、おそらくは偶然なのだろうが。
 いずれにせよ、これはカリナへの「挑戦状」だった。


3
 漆黒の呪われし「ケルベロス号」の利用ルールと効用は、オルペウス号やネメシス号と良く似ている。つまり招かれたお客の願望を叶えてくれる。
 しかしケルベロスの掟は、効果が強力ではあるかわりに優しくない。
 望みをかなえるためには代償を支払うか、提案されたゲームの賭けに勝たなければならない。そして敗北すれば、ペナルティを負わされることになる。
 こんなタイミングで招待のメールが届いたことからしても、明らかな挑発行為だった。
 どうやれば行けるかは知っている。
 カリナは決然として足取りを速める。目が人殺しに行くような怒気で鋭くなっている。
 その場から近くのメトロの入り口は、カリナの訪問を待ち構えるかのように禍々しいオーラを放っている。地下への階段を下り下る途中の通路は超常の現象によって、地獄の通用門のように変わっていた。


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