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ネメシス・コアラの逆襲
【コメディ その他小説】

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暗黒司祭とカリーナの帰還-1

1
 地下世界の列車の十字路で、滑り込み止りこんだ車両が、片一方の通行を封鎖する。
 それはあのネメシス号だった。
 あいにくと本日の業務はお休みで、サリーナとカリーナは乗せていない。替わりに他の職員による特別ミッションで、普段はめったに通らないような地域に進行したのだ。
 垂直方向から向かってくる、別の呪われた車両のライトが、暗黒の広大なトンネルの彼方に見えてくる。

「来やがったな、アフォどもが」

 なんとなくヤサグレ、そしてオラついた雰囲気を放つコアラ(大型で背丈が一メートル以上の古代種?)が、グレネードランチャーを手に運転席から降りてくる。もう一匹、黄金色の瞳の鵺(「ぬえ」、つまりそのモデルになった過去に絶滅したジャポニカレッサーパンダ、大型で一メートル半くらい?)も降りてきて散弾銃を構えている。
 進行してきた列車は、三十メートルほど前で停止した。
 降りてきたのは司祭服のような黒い出で立ちの男。顔は青ざめて耳は鋭く、頭はそり上げている。胸元には黄金の逆さ十字のマークがあった。彼らはコアラや鵺の(車両と人員が)属する水母天使駅とは異なる、別組織の路線駅(「アンチ・クリスト城」「岩窟要塞駅」などと呼ばれる)に所属する呪われた神官なのだ。
 その後ろから降りてきた、直立する獰猛そうなパンダ(マオ)は口の周りを人間の血で赤くしていた。専属用心棒の獣は、生のままの千切れた子供の腕をクチャクチャ齧りながら、本質的な捕食者の鋭い眼差しでコアラと鵺を見ている(ライバル関係にあるらしい)。

「それでは取引といこうか。我が方の捕虜を帰すという話だったはずだが」

 闇のように澄んだ声が、この横着な会談の目的を表明する。
 やり方を見ればわかる通り、両者は必ずしも友好関係にはなく、むしろ敵対や競合関係なのである。メトロの駅同士でも考え方と利害で抗争や対立があるのだ。
 暗黒司祭の「じょるじゅ」君が指をパチンと鳴らすと、同じような逆十字の司祭服の男二人(いずれも出家的に剃髪している)が、死体袋を持って降りてくる。様子からすると中身は軽くて、包装された人物は背丈や体つきも小さいようだった。
 地面に置かれたあと、下がってから黒い司祭たちが交代する。
 コアラが死体袋を開けて中身を確認し、背後に控えた味方車両の運転席に頷く。
 運転席のタスマニアンデビルが無線で取り次ぐと、ネメシス号の側面扉から大柄な灰色熊(グリズリー種?)が降りてくる。眼鏡なんぞをかけているがその腕力は凄まじいようで、手にしたロープを引っ張ると、数珠繋ぎの捕虜が転がり引きずり出されてきた。
 一人、二人、三人、四人。

「アン、ドゥー、トロワ、キャトル! 四匹の家畜ですか、ヒヒッヒ!」

「フレンチジョークはわけがわからねえな?」

 吐き捨てるコアラ。
 たとえ意味を理解しても、コイツの言うことに理解を示したくない。

「カトルだからキャトル。人は皆、家畜だからです」

 四はカトル、キャトルは家畜の意味だっけか? 無意味でくだらない駄洒落だった。


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