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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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腹上死ハネムーンの花嫁(最終話)-2

3
 もう一つの世界で。
 あの別パラレル世界の莉亜との出来事の後、ずっと莉亜は不機嫌だった。
 面会謝絶というわけでもなかったのだが、リョウが見舞いに行くと言っても、その都度につれない返事が返ってくるばかりなのだ。
 彼女の言い分は「嬉しいけど疲れるから」「痩せてやつれてるから見られたくない」「たまにメールや電話してくれるだけで十分」などとのことでもあったのだが、どうもそれだけではなく、リョウと関係を持ったもう一人の自分自身への嫉妬と彼の即物性への怒りと哀しみで気分を損ねているものらしい。たとえ自分で思いついて願ったアイデアであったとはいえ、それでも女心としては複雑なようだった。

(莉亜って、すごい面倒なヤツ)

 そんなふうには思いながらも、リョウも会いたいと思うのは変わらなかった。
 とうとう病室に強引に押しかけてみたところ、莉亜は病身と驚きで少し大きくなった感じのする瞳で、怯えるような哀しげな表情を浮かべるのだった。

「何で来たのよ」

「会いたかったから」

 彼女は返事に詰まったが、それでも拗ねた言葉を口にする。前に会ったときよりもやつれた様子が痛々しくはあったけれども、それでもリョウからすれば、やっぱり可愛らしくて綺麗な女の子だった。

「あっちの私、良かったんでしょ? それでいいじゃない」

「でも、あれは別の世界の莉亜だし」

「何よ」

 まだ莉亜は険のある横目でチラリと睨む。

「まだヤリ足りないわけ?」

「いや、そんなことじゃなくって」

 リョウからすれば性欲だけのために来たと思われたのが心外だったし、彼女の体調のことも有るから無理強いできないことくらいわかっているつもりだった。
 しかし莉亜はやんわりとした否定にかえって柳眉を逆立てた。

「だったら私はもう、用済みってことなのね! あっちのもう一人の私のことでも考えながら、また便所でシコってきたら?」

「そんなこと」

「だって、私とはしたくないんでしょ?」

 口を尖らせる莉亜に、リョウは期待の予感がした。

「いいの?」

 すると莉亜はものすごく不機嫌そうな顔で睨みつけてくるのだった。

「はァ? こんな病人の痩せっぽちに性欲処理して欲しいっての? あのとき私が、どれだけ惨めだったかわかってる? アンタがあの身代わり女と散々ヤッてるのパソコンで見ながら、私は、私は! 自分で作り物のコピー突っ込んで処女喪失したのよ?」

 小さく力ないはずの手が、グイッとリョウの襟元を掴む。鬼気迫る形相の莉亜の目尻には悲壮な女の悔しさの涙が溢れていた。
 リョウは想像を絶する告白に驚きを隠せないでいるのだった。あのとき「見られているだろう」とは感じていても、まさかこちらの莉亜が同時にそんなことまでやっていたとは、流石に思いも突かぬことだった。

「そうだ」

 莉亜は涙目のまま、急に明後日の方向に話を振る。

「リョウ。水筒持ってる?」

「? 持ってるけど」

「かして」

 リョウが水筒を手渡すと、莉亜はその蓋を外して、中身がほとんど残っていなくて空なのを確認する。それからベッドの上でパンティを下し、指で引っ張って病院服の裾から脱ぎ捨ててしまう。真っ白な布を、交換のようにリョウの手元に投げると、そこにはまだ体温のぬくもりと湿気があるようだった。

(どういう?)

 それでもリョウにも薄々は察しがついた。

(まさか? あのときの?)

 莉亜はまだ目が据わっていて、見ているリョウに有無すら言わせない様子で、リョウから受け取った水筒を股間の姫割れにあてがう。横目で視線が合ったが莉亜はそ知らぬ顔で溜め息するのだった。
 今度こそリョウの水筒を尿瓶に使うつもりらしい。
 ほどなくして水音が聞こえる。
 莉亜の頬と目許には赤みが差していた。リョウは以前の出来事を思い出す。

「私って、「上付き」って言うんでしょ? こーゆーとき、やりやすいのよね」

 冷静に薄笑いを浮かべて短い放尿を終える莉亜。
 これも衝動的な怒りと思いつきでやらかした腹いせで、どちらかといえば無理にやったらしく、排尿の水量も少なかったのだろう。そうでなかったらシーツや布団に零れていたに違いない。


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