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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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入院暮らしの莉亜-3

3
「お風呂、行こうか?」

「うん」

 汚れていない方の手で頭を撫でられて自然に優しい笑顔が零れてしまう。

「サエさんも、一緒に入ったら?」

「そうね、汗だけでも流そうかしら? ウフフ」

 下着の替えを取り出し、二人で連れ立って浴室へと向かう。
 そこは長期入院患者や、泊り込んだ看護婦たちのための場所なのだ。

「そうだ、彼氏さんの話」

 莉亜は思い出したように言う。
 何しろ彼女にとって、サエの彼氏である二宮リクとの話を聞くのはもう一つの楽しみなのだ。なんでも高校の同級生で今は大学院の文系過程に通っているのだとか。しかも彼はこの病院でお世話になっている女医さんの再婚先のお相手の、義理の息子さんでもあるのだという。しかも重度のシスコンなのだそうで、かつてサエにレズの趣味を仕込んだ、あの亡くなった義理の妹のことを未だに引きずっているのだとか。

(そのうち会ってみたいかも)

 莉亜としては興味をそそられること、この上もない。
 それにたとえ自分に直接の恋愛の機会がなくとも、女の性で恋愛話には目がない。しかも親しい友人のサエさんのこととなっては、なお更なのだった。話を聞いて幾らかでも経験をお裾分けのように共有することで癒され満たされる面がある。


4
 お風呂には新しいお湯を入れてあり、手狭なので莉亜が先に投げ込まれる。
 しかもシャボン。
 サエは横でチャッチャとシャワーを浴びて昼間の仕事の汗を流していた。そして「カラスの行水で性格だわ」と自ら笑うのである。

「そいったらさー、勉強の方は進んでる?」

 スポンジで自分の身体を洗いながら、サエが訊ねてくる。
 莉亜も隣りの浴槽でスポンジを繰りながら返事をする。

「どうにか、こうにかですよ。一年くらい留年したようなものですけど、今年で卒業資格ゲットです」

 とりあえず高校は中退するしかなかったものの、その後に病室で自習して、ようやく高校卒業レベルの検定試験を受けられるところまで漕ぎつけた。
 もちろん大学に行くのは厳しかったが、それでもやって悪いことはなく、一度などは母に付き添われて大学試験の模試を受けに行ったことまであるのだ(本来進学に使われる予定だった貯金のお金は入院生活で心もとなくなっているし、持病を考えれば日々の通学も難しいだろう)。

「無理しないで頑張って」

 サエはニッコリして言った。それから腹案を話す。

「前に二宮先生と話してたんだけど、莉亜ちゃんは私なんかより頭は良いんだし、高卒の検定の後で専門の資格とか取ってみたら? たとえば医療事務とか。それで体調のいいときだけでも、ここの病院スタッフでパートしてみるとか、さ」

「!」

 そんな話を聞いて、数瞬の間の後で莉亜の目が輝いた。

「そしたら、サエさんともお仕事の仲間ですよね?」

「そうよ。莉亜ちゃんだったら、みんなも歓迎するわ」

 サエは楽しげに返事をする。実際に友人を誘って楽しいのだろう。

「それに通信制の大学とかだったら、学費とかも安いところもあるでしょうし。それで短大とか専門の勉強しても良いんだし」

 これは実は、サエの彼氏である二宮リクの入れ知恵で、その義母の女医さん先生や莉亜自身の両親にも話は通っている。リク本人からすれば直接の面識はないにしても、早くに亡くした妹のアヤのことと重なって、全くの他人事とは思えないのかもしれなかった。
 この少女はそう長くは生きられないのかもしれないけれども、その間に人生を充実して過ごして悪いわけがない。何かしら希望や生きがいがあれば内臓疾患の病状に抗う精神力にもなるだろうし、将来的に好転する可能性だってないわけではないだろう。
 だいたいこの莉亜は元がアクティブで活動的なところがある性格だから、やることや目標があることだけでも、生きる励みになるはずなのである。

「ええ! 頑張っちゃいますよ」

 背中をスポンジで洗ってもらいながら、全幅の信頼を置く姉貴分に答える。
 どうも三沢サエは運動部気質なところもあってなのか、同性である女同士で一目置かれたり、特に年下からは慕われる傾向があるようだ。
 サエはニヤッとお日様のように笑って、背中を軽くパチンと叩く。シャボンとお湯で濡れた裸の玉の肌がつややかな生命の音色を響かせるようだ。それだけでも生きている実感が湧いてくる気がするのだった。

(彼氏の妹さんも、きっとサエさんのこと好きだったんだろうな)

 莉亜は漠然とそんなふうに思う。
 今亡き彼女が(ほんの短期間の交際で)サエに百合行為の愉楽を教え込んだのだそうだけれでも、普通に考えて女の場合にはそんな親密な真似は好きな相手にこそするものだろう(純粋に性欲だけの生理反応で簡単に勃起できる男どもとはやや性質が違う)。もちろんただの面白半分の場合もあるのかもしれないが、それでもサエの口ぶりからすれば、お互いに気に入って仲が良かったとしか思えない節がある。
 少しだけ真顔になって莉亜は話しかけた。

「いつか元気になったら、それか卒業試験終わったらでも」

「?」

「いつか私がサエさんをヤッてあげます。サエさんをエッチさせてください!」

 サエは目を丸くして「生意気な」と呟き、そのまま莉亜の頬に音を立ててキスをした。


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