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ネメシス・コアラの逆襲
【コメディ その他小説】

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復讐志望の少年-3

3
 かつてカリーナの父親は工場の飯場のコックやら小さな食堂をやっていて、母は中国からの出稼ぎがきっかけで結婚したらしい。
 けれども幸せは長くは続かず、景気悪化や疫病流行が原因で経営難になってしまった。そうなると店舗の出資者からの苛斂誅求、しかもヤクザによるシャバ代・ミカジメの取立ても過酷で破綻に追い込まれた。
 そんなとき、店に出入りしているヤクザのシャバ代・みかじめ料集金担当の男から彼女に「イメージビデオに出ないか」という密かな提案、もとい騙しの勧誘があった。
 それでカリーナは父親や店が助かるのならと、フラフラついて行ったのが運の尽きだった。「ちょっと水着を着るだけ」などというのは考えるまでもなく真っ赤な嘘で、その日のうちに麻薬を嗅がされて輪姦され、未成年裏ビデオの女優もとい材料にされてしまった(高校一年生の処女だったのに)。
 さらにはそれをネタに脅され、逆らえずに従って更なる暗黒の深みに嵌まる。何も知らなかった父親は「お前の娘はシャブ中毒でビデオに出ているよ」と別口の強請りにあい、口止め料は店の経営にも致命傷になる。警察が逃げて組織内部の不良警官のスパイからヤクザに密告され、弟もヤクザに殴りかかって変態ビデオで女装で犯される羽目になる。
 とうとう見かねた警察の一部の真面目な人たちが動いても、今度は検察が裏切って「理由不明の不起訴」にして逃がしてしまう。さらには警察を頼ったことへの逆恨みで、ヤクザども(不良外国人多数)による一家への虐めは、嗜虐的な極限にまでエスカレートした。不憫な弟は最後はふがいないばかりの父親を「親父のせいでお姉ちゃんが!」と恨んで刺し殺して、当てつけにヤクザの事務所の前で自殺してしまった。とうとう中国人の母親も耐え切れなくなって首を吊ってしまったし、絶望したカリーナ自身も列車に身を投げて、ついには一家全滅の憂き目に遭ったのであった(これは暗黒利権の都合で揉み消された数々の悲劇の一端である)。

 話を聞くマコト君は完全に圧倒されてしまっているようだった。
 もう感想の言葉すら出ない。
 カリーナは弟のことはほとんど伏せたし、両親の悲惨すぎる末路などもぼかし、ほんの事のあらましの概要をどうにかこうにか伝えただけなのだが、それだけでもインパクトは充分だったようだ。気配だけでも深刻な思いやりは察せられただろう。
 やがて少年は声を潜めて搾り出した。

「ものすごく、大変だったんですね」

「大変だったのよ」

 カリーナは語り終えて力が抜けたのか、フウッと区切るように溜め息して、椅子の背もたれに体重を預けた。


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