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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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深夜のオフィスで (3)-5

 クチュリ。

 恥ずかしい音ともに、ゆきの下腹部はきゅぅっと収縮し切なさがこみ上げる。切なさは生い茂る陰毛の外まで染み出し、ショーツのクロッチの布地を通してゆきの指先に伝わった。
 小さくため息をつくと、そろりと起き出しトイレに入る。下ろしたショーツの股間部分に恥ずかしくなるほど大きな楕円形の染みができていた。
 今まで夫との行為で満足できなかった夜は常にそうしてきたように、今日も自らの指を股間の割れ目に滑らせる。

 最近Yとまた同じ部署となり部下となった。かつてけじめを付けず放ったらかしにしていた気持ちと向き合わざるを得なくなるのをゆきは恐れた。が、ここまで意外にも落ち着いたまま普通に接することができた。夫とのセックスレスが完全解消したからだろうか。
 彼にとっても、なにしろ八年である。まだ若く引く手あまたの彼は、四十近い自分になどもはや見向きもしないだろう。それでいい。八年前の一時期、燃え上がるように愛し合った彼のことは、良い思い出として大事にしまっておく。たまに取り出して自らを慰める。夫を裏切ってしまった後悔と罪悪感はあるが、不倫を犯した妻として一生背負っていかなければならないもの。それですべてが丸く収まる。そう思っていた。
 なのに数日前、キスされた。うろたえた。嬉しいと思ってしまった自分の心にうろたえた。ああ、自分は今でもYのことが好きなのだ。今日、流されるままに抱かれて自らの気持ちにあらためて気がついてしまった。八年経ち少し肉づいた腰回りやヒップを見られるのはどうしようもなく恥ずかしかったが、求められる喜びが勝ってしまった。彼は幻滅してしまっただろうか。もう二度と求められなくなるのが怖い。セックスする前はそれでいいと思っていたくせに、いざ一度抱かれると二度目がないことが不安で仕方なくなる。
「一度だけだから」「もうしないから」――セックス後にYに念押ししたのを、彼は人妻としてのせめてもの貞操と受け取ったはずだが、実は違う。今後二度と誘われなくても自分が傷つかないための自己防衛だった。

 サークルの先輩Dに教え込まれてから二十年以上、二日と空けず繰り返してきたマスターベーションは、ゆきにとってもはや日常の一部とも言える慣れた行為である。充血しぷっくり勃起した蕾を優しくこね、摘み、はじく。黒ずんだ花びらが織りなす複雑な襞に指を絡ませ、めくり、引き伸ばす。すべての動作が淀みなく行われる。どうすれば自らが頂に達することができるか、最短距離を把握している。

 しかし今日は寄り道をした。
 クリトリスを優しく捏ね、唇で吸うかのように摘んではじいて、指の腹で軽く押し込んで――一連の動作をあと一、二度繰り返せばオーガズムというところでゆきは陰核への刺激を中止し、大きく股を開き大陰唇の外側の縁を両手指でなぞる。
「Yくんは、たしかこうしてくれた……」
 同じようにしてみたかった。八年前もそうだった。Yはクリトリスへの刺激でゆきをイカせる少し手前で一転、ゆきのむっちりした両太ももをぐいと広げ、大陰唇の外縁を指でなぞり舌で舐め上げる。高みを取り上げられたゆきの身体は不満でくねり、しかし「クリトリスをもっと触って」とも恥ずかしくて言えず、切なさで満たされる。ゆきの身体のことをよく知っている男たち――C、D、E、F、G、それにZ――ならあまりしない寄り道を、Yは今日も楽しんでいた。愛おしい男に、股を思い切り広げられ、大陰唇の周りにふさふさと茂る陰毛を晒すのはとてつもなく恥ずかしい。そこをYはわざわざ指先で撫で、鼻先を押し付けジョリジョリ、クンクン、スンスン、赤ん坊のように股を広げた格好のゆきが恥ずかしさで耳まで真っ赤になっていることを知ってか知らずか、一心不乱に彼女の股間に顔を埋める。ああ、もうだめ。やめて。羞恥地獄に震えた下半身は気付くと燃え上がり、きゅうと下腹部が締めつけられたかと思うと、オーガズムに達してしまう。

 はぁ、はぁ、はぁ――。

 便器の上であられもなく大開脚した人妻が深夜のトイレで果てている。人妻は両手指に付着した自らの愛液の匂いを嗅ぎ、舌でぺろりと味見した。普段はこんなことはしない。今日はYにされたから、そうしている。人妻の股間からはまた熱い液体がとろりと溢れ、便器に糸を引いて垂れた。

 人妻は身体を起こし、下の処理を終えてトイレを出る。リビングではやはり起き出してきた夫がパソコンでなにやら聴いている。この人は八年前の私の不倫も、私が今トイレで何をしていたかも知る由もないのだと思うと、彼女の胸は罪悪感と切なさでチクリと傷んだ。眠っているようにも見える夫への愛おしさが溢れてくる。ちょっと驚かせてやろうか。夫の背後に回りいたずらっぽく微笑みかける。

「パパ、何聴いてるの?」

 ゆきの顔は、もうすっかり妻の顔に戻っていた。


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