「早くアナルセックスがしたい」-5
耳を舐められるのが好きだった。それはもう、ずっと彼に伝えていた。大きく口を開けて、甘噛みする歯のあとは、舌を中にいれてぐちゃぐちゃと犯すその口。
全部全部、私が教えたそれが私の身体全体を襲ってくる。あぁ気持ちいい。思わずつぶやいた私の言葉に、王川君は生唾を飲み込んで、笑った。
「ちせ先輩…っかけていい…っ…?」
「服の上は、だめだよ…っ…?」
「うん…っ…」
あぁ、もう。なんなんだ本当に。
さっきまであんなに落ち込んでる風だったくせに。部屋にきたら急に発情しちゃって。ダメだとかシないとか言ったくせに、ちゃっかり彼に素股されてる今の自分にも驚きものだが、彼のその性欲の膨れ上がり具合にも驚く。
何がどうなって、そうなってしまったのか。震えてる肩を握って、彼の腰に両足を巻きつける。いつものようにセックス中の素振りでもしてあげればもしかしたら、王川君も喜ぶんじゃないかと思って。
背中に回した足に力を入れて、彼の下半身に擦り付けるように腰を上げた。王川君は一度、びくりと身体を揺らしたあと、私の首元に噛み付いて不規則に肩を大きく揺らした。
どろりと暖かいものがタイツに掛けられる。服の上はダメと言ったのに、しっかりとタイツに射精するとは、怒られる覚悟はできているのだろうか。
「…ダメって言ったよ?」
「っ……だって……先輩の足が…」
「足が?」
「気持ちよくて……」
中に挿れてるみたいだったから。
王川君は、顔を真っ赤にしながらそう言った。素股でそこまで気持ちよさに喘げるなら、王川君はもう百点満点だな。
ぎらついた瞳、荒い呼吸。熱い手で頬を撫でて、私の顔を慈しむように見下ろすその表情。全てにおいて及第点以上の点数をあげたいし、こんな子にここまで求められてる自分に疑問さえ浮かびそうになる。
彼は顔を歪ませたまま、まだ去らない快感に身を委ねて、小さい声でこう言った。
「……早く、アナルセックスしたい…」
やっぱりか、やっぱり君が掘られたい方なんだ。
その決定的な言葉に、ついに私も覚悟を決めるしかないのかと、ごくりと生唾を飲み込んだ。時刻はもう遅い時間だ。明日も仕事があるというのに、王川君の目からそのぎらつきが消えそうには見えない。
一回だけ、一回だけならいいかな。
枕元に置いてあるコンドームの箱をちらりと見上げて、そう言い聞かせる。
一回だけ。私を組み敷く立派な身体に手を添えて、王川君の耳もとで優しく呟く。私が彼の甘えたな声に弱いのと同じで、王川君も、私のこの声に弱いと知っているから。
「エッチ、しない…?」
「………する……」
儚げな表情は消えて、シーツについていた手に力が入った。私を逃す気はないらしい。王川君は身体を倒して、私の顔に顔を近づけたあと、目を閉じながらキスをした。
ぬるぬるの白濁液を間にはさんで、身体と体を擦り合わせる。
ベッドのスプリングの音に重なったその水音と、彼の小さな喘ぎ声は、大凡月曜日のこの時間から聴くものではないなと、どこか冷静な頭では、きちんと思っていたのだ。
思っては、いたのだ。