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此処にある幸福
【ボーイズ 恋愛小説】

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此処にある幸福-1

俺に寄り掛かり、静かな寝息をたてている悠紀。
揺れる電車は俺達を乗せて何処までも続く路を走って行く。何処に行く?わからない。
悠紀と一緒なら何処だっていいんだ。



工藤家に双子として生まれてきた俺と悠紀。いつも、どんなときでも行動を共にしていた。

小学生の時はそれでよかった。中学に入ってからも、相変わらず一緒に風呂に入ったり、寝たりしてて俺は気付いた。悠紀のことを弟に対するもののではなく、特別な人への愛情だということを…。

気付いてしまったのは中3の時。俺は、自分の欲望を抑えるために、悠紀との距離を拡げた。
風呂、寝るときはもちろんのこと、学校に行くときさえも、一人だった。
急に離れていった俺に、悠紀は混乱していた。
「なんで一緒にお風呂入ってくるないの…?」「なんで先に学校行っちゃうの?」「オレの事嫌いなの…?」
そんな悠紀からの問いを無視していた。

高校に入るころには、俺達は全く話さなくなっていた。

高校は同じとこだ。悠紀が受験するとこを調べて俺も受けた。悠紀を監視するために。
高校に入れば悠紀が彼女を作る事くらい安易に予想できた。その時に邪魔するため。自分勝手なのはわかっている。でも、悠紀を誰にも渡したくなかった。

そして、その予想を裏切ることなく女を作った。俺はその女と寝て悠紀と別れるように言った。
でも、悠紀に言い寄る女は絶えなかった。その度に俺は同じ手口で別れさせてきた。

そんなことが続いた高1の夏、悠紀が女を家に連れてきた。そんな事は初めてで、それだけ悠紀は本気なのかもしれない、とは思った。でも、俺はいつものようにその女を抱いた。

数日後、俺の部屋の戸をノックする音が聞こえた。懐かしい…。一年前、悠紀がよくやっていたこと。
少し緊張したが、扉を開けた。そこには不機嫌なオーラを全身から放つ悠紀がいた。
「…何?」
「何じゃねぇよっ!尚紀!てめぇ、オレの彼女と寝たんだってなぁ!」
今更…?
「あぁ、寝たよ。みんな、すぐに足開いたよ。まぁ、この間連れてきた子は少しは抵抗してたけどな。お前だって、あんなバカ女達の事本気だったわけじゃないだろ?」
悠紀の顔が歪んだ。
「本気だったよ!みんな真剣に考えてたんだ!なのに、みんなすぐにオレから離れていった…。ずっとなんでだろうって考えてたんだ。そしたら…電話がかかって来て、尚紀と寝たからもうオレとは付き合えないってさ…」

悠紀が落胆しているのは明らかだった。俯いている顔をそっと上げ、キスをした。
「ばっ…!?何すんだよっ!」
驚いている。でも、悠紀だけではない。俺も自分の行動に驚いた。もう、俺は我慢出来ないかもしれない…。
それなら、悠紀にこの気持ちを告げた方がいいだろう。
俺は悠紀の瞳を見つめ、軽く息を吸ってから静かに告げた。
「俺は…悠紀を愛してる」
「はぁ?」ワケがわからないという顔をする。
「中学生の時に、お前に対する感情が何か気付いた。気付いたから、今まで通り接することはできなくなった。お前は俺の弟にだからな。でも、お前の事が好きだから…、だから、近付く女達をお前から離れるようにしたんだ…。ごめん。許してくれなくてもいい。……けど、俺はお前を、悠紀を愛してる」
そう言って悠紀をしっかり見つめた。でも、悠紀は俯いて何も言わずに出ていってしまった…。


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