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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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深夜のオフィスで (1)-2

 風呂から上がり、夜の身支度を済ませベッドに入ってきたゆきが、私の背中越しにぽつりとつぶやいた。

「あのね……。今日私、キスされちゃった……」

 心臓がドクンと音を立てる。とっさに言葉が出てこない。重苦しい沈黙を破るようにゆきが言葉をつなぐ。後輩のYという男と残業中に二人きりとなり、キスをされた。もちろん妻は拒否したが、男の力には抗えず半ば強引に唇を奪われた。

「ごめんなさい……」
「謝らないで。ゆきが悪いわけじゃないんだから」
 ようやく言葉を振り絞る。
「私びっくりしちゃって、しばらく動けなくて……」
 それはそうだろう。ボイスレコーダー音声でも、ゆきに気のあるような言動をとる男は大勢いたが、いきなりキスという大胆な行動に出るとはよほどのことである。
 怖い思いをした妻を少しでも安心させたくて抱きしめる。
「大丈夫ゆき? 突然でショックだったよね?」
「ありがとう」
「あの……嫌だったら無理して答えなくていいんだけど、されたのはキスだけ……?」
「うん」
「触られたりも、してない?」
「うん。触られそうになったけど、やめて、だめだからって……」
「そっか、よかった……。あ、ごめん、よかったなんて言って。キスだけでもよくないのに……」
「ううん、大丈夫。ありがとう……」

 女性にとって男に無理やり迫られるのは恐ろしい体験に違いない。寝取られマゾの私だが、それはあくまでゆきの同意があればこそ。愛する妻への性的加害行為など許せるわけがない。

「パパ……?」
「ん?」
「本当に心配してくれてるんだ」
「もちろん」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「あの……」
「ん?」
「間違ってたらごめんなんだけど……」
「ん?」
「硬くなってない?」
「なにが?」
「あれが」
「あれって?」
「これ」

 ゆきが私の股間に手を重ねてきた。

「あ……」
「やっぱり」
「……」
「……」
「はは……おかしいな……」
 妻の視線が少し痛い。
「ご、ごめん……。ゆきのこと心配なのは本当だし、へ、変なことなんかまったく考えてなかったよ」
 これは本心だ。信じてほしい。しかしゆきの口元には呆れたような笑みが浮かんでいる。
「とにかくごめん! ゆきが『嫌な思い』をしたのにこんなふうになって……」
「ふーん……」
 どうしよう、きっと軽蔑されている。
「じゃあさ、パパ……」
「はい」
「……もしゆきが……『嫌な思い』なんかしてないよって言ったら、もっと硬くなるのかな……?」
「……え? どういうこと? キスされたのは嘘ってこと……?」
「ううん。ゆきが今日キスされたのは本当だよ」
「え? それなのに『嫌な思い』してないって……どういう……」
「なーんちゃって。ふふふ」

 いつのまにか、ずいぶん楽しそうな表情のゆき。
 キスされたけど嫌じゃなかった? まさか、ゆきも後輩に気があるのか。Yの名前は言われてみればボイスレコーダーでも聞き覚えがあり、仲良さそうに会話してはいた。もちろんあくまで「同僚との会話」の範疇を超えるものではなかったはずだが――。

  *

 いや、待て――そうではない。
 Y――? どこかでこの名前を聞いた気がする。職場ではない、他のどこかで。ああ、そうだ。思い出した。やはり私はYの名前を聞いたことが、たしかにある。
 ふたたび心臓がドクンと音を立てた。顔面から血の気が引き、そのすべてが股間に流れ込む。
 今日ゆきがキスされたYとは、もしかして「あのY」のことだろうか――。

 ゆきが私のパジャマのズボンの中に手を入れパンツの上から股間を撫で回してきた。
「あ、やっぱりむくむくうごいてる……もうー」
 ゆきの華奢で細い指が股間を這い回るたびに、私のペニスは敏感に反応する。
「ほら、これが今日、旦那さん以外の男の人とキスしちゃった人妻さんの唇だよー」
 おちょくるように、唇を尖らせ迫ってくるゆき。この唇で「あのY」とキスをしたとき、ゆきはどんな気持ちだったのだろう。
「あー、びくんてしたー……!」
「あ、いや……」
 いつもより色っぽく見える妻の唇が、私の唇にそっと触れる。
「ひょっとしてエッチもできちゃったりして……」
「それは……」
 するすると私のパジャマのズボンとパンツを下ろし、ペニスを手のひらでさすってくる。
「パパがどのくらい変態さんか確かめてあげる……」

 いつになく積極的なゆき。Yとキスして、気持ちが昂ぶっているのだろうと邪推をしてしまう。無理もない。なにしろゆきは、自らを慰めるとき、その名を口にすることがあるのだ。
 私はゆきのオナニーの盗聴音声で、Yの名前を何度か聞いた。

「Yくん……挿れて……」
「ぁあ……気持ちいいよ、Yくん……」
「いいよ。中に出して……Yくんの精子、ゆきの臭いまんこにいっぱい出して……」
 耳を塞ぎたくなるような言葉を吐いて、下半身を濡らして果てる妻。
 私だってゆき以外の女性をおかずに抜くことはあるし、そもそもオナニーのおかずなど他人に詮索される筋合いのものではない。とはいえ、ZでもFでもない、知らない男の名前をゆきが連呼しているのはやはり心中穏やかではいられなかった。

 そんな男に、今日ゆきはキスされた。単なる好意以上の感情を持つ男、セックスを想像したくなるほど異性として意識している男に――。


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