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美少女 羞恥徹底
【学園物 官能小説】

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桜と初恋と鉄の掟-1

 そうして春が訪れ、咲き始めた桜とともに恵理子は3年生に進級した。
「わあ、今年も恵理子と一緒で良かった!」
 これから中学生活最後の1年を過ごす3年A組の教室で、うららかな春の陽光が射すなか、仲良しの松谷ゆかりが朗らかに声をかけてきた。

「ゆかりちゃん!」
恵理子は微笑みを返した。

 もう何があっても心から笑顔になれるような気はしない。でもさすがに学校まで沼口の魔手が伸びてくることはないのだから、せめて学校にいる間ぐらいは学生生活を楽しもう。そんなふうに割り切ろうとも思いかけていた。それで親友と続けて同じクラスになれたことは嬉しいことだ。

「ほら恵理子、このクラスに村上くんも、い・る・よ」
 ゆかりは他者には聞こえないようなひそひそ声で、窓際の一番前に座る男子生徒の方を見やりながら耳打ちした。

 村上久之くん。今やバスケ部のキャプテンで、文武両道のイケメン。1年生の時のクラスメートで、その頃から恵理子がひそかに思いを寄せてきた人だった。あの頃に比べてもかなり背も伸びて、いっそう恰好良さを増している。

ゆかりとは去年の夏休み前にお互いに好きな人を教え合い、親友同士の秘密にしていた。ゆかりが恋していた一つ上の元生徒会長・宮寺淳先輩には相思相愛の相手がいることを知って、泣き濡れるゆかりを慰めたのは年の暮れだった。
 恵理子としては、親友の失恋には心から同情しつつも、そんな青春そのもののイベントに全力で一喜一憂できるゆかりのことが、ある意味では羨ましくも思えたことも覚えている。彼女はあんなことがあって以来、クラスも別だった村上への思いを育てることすらままならない境遇に置かれていた。

「あたしは宮寺先輩ダメだったけど、今度は恵理子の恋、全力で応援しちゃおうかな」
 そんなふうに笑顔で言ってくれるゆかりの友情は嬉しかったが、今の恵理子は、恋する乙女なんてやっていられる状況ではないのだ。

「ねえ恵理子、村上くん、今は付き合ってる人、いないみたいよ」
 始業式からたった3日で、ゆかりはこんな情報を持ってきた。
こんなふうに手際よく探りを入れられるゆかりちゃんの行動力や人脈って、相変わらず凄いな……。私なんか、とてもできない。
 でも、いくらゆかりちゃんが応援してくれても、今の私じゃどうしようもないのに。
 そう、自らの境遇をかみしめる恵理子であった。

 そんなふうに思っていた折、恵理子にとっても思いもよらぬことが起きた。なんと村上の方から告白されたのだ。始業式からわずか10日後のことだった。
前から恵理子のことはずっと気になっていたが、2年ぶりに同じクラスになったのをきっかけに告白を決意したという。実は両思いだったのだ。

「長橋って頭もいいしピュアで優しいし……凄く可愛いもんな。きっと学校で一番の美人だよ」
 好きだった男の子からこんなふうに褒めてもらえるなんて、あんな事がなかったなら最高に幸せだっただろう。

だが恵理子は迷った。沼口から処女を守れとは厳命されたが、恋愛禁止とは言われなかったはずだ。もしOKしたとしても、身体の関係さえなければいいのではないか。もとより清純な彼女は、中学生のうちから、いや高校生になってもそんなことをするなんて考えたこともなかった。
でも純粋にプラトニックな関係だとしても、果たして沼口は許してくれるのだろうか。もし隠れて付き合って、沼口に知れたらどうなるだろうか。もちろん沼口のことを村上くんに話すわけにはいかない……。そう思うと、もちろんOKはしたくてたまらないけれど、即答はできなかった。

「ありがとう……本当にありがとう……でも少し、時間をください」
 いろいろな意味での胸のドキドキを抑えられないまま、そう答えるしかなかった。
「わかった、待ってるよ」
 村上としては、急な告白で、彼女が心を決めかねているとでも受け取ったのだろう。村上はそんな彼女の気持ちを尊重し、ここで回答を迫ったりなどしない、誠実な男だった。本当なら、恵理子もますます心惹かれたに違いない。

 そうして、恵理子はその場を後にした。好きな人から告白された嬉しさと、いまの自分の境遇ゆえの悲しみとが入り混じった涙が零れ落ちそうだった。それを当の村上にだけは、見られたくなかった。

 ちょうどその週末、沼口からまた呼び出しが入っている。3年生になって初めてだ。その機会に確かめてみるしかない。

 でも、どうして好きな人と付き合うのに、あんな男の許しを求めないといけないの?
 恵理子の両親は、娘の恋愛に干渉などしない。もし彼氏ができたら紹介しなさいとは言われていたが、交際そのものは何も禁止していない。さすがに思春期ただなかの少女、まだ実ってもいない村上への恋心は親にも秘密で、ゆかり以外には話したことはない。でも付き合えるなら、真面目な彼女はちゃんと親に話すつもりだった。反対されることはまずないだろう。

 それなのに、なんであの男なんかに……。その理不尽さを呪いながらも、呼び出された金曜日の放課後、恵理子はいつものギャラリー・ユピテルに向かった。


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