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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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自慰-3

 仕方ない。これで行こう。

「ヤリ目男子避け」には不十分だが、地味なメガネっ娘スタイルで登校することにした。まあ状況は変わらないだろうというゆきの予想に反して、「ヤリマン」という従来のゆきの評判は、たちまち変化した。

 ゆきに与えられた新しい呼び名。それは、「メンヘラビッチ」。

 小耳に挟んだときは内心笑ってしまった。もちろん笑い合う仲間など一人もいないので、吹き出さないよう口元をきゅっと結び、ことさら難しい顔をしているゆきを、同級生がニヤニヤ、ヒソヒソ眺めてくる。ちらと目をやると、慌てて目をそらす。

 たしかに「ヤリマン」が急に暗い顔をして地味な格好で登場すれば「ついに病んだか」と憐み蔑まれるのも無理はない。そんな女が学食で一人食事をしていると、ホストの成り損ないのような男たちが入れ替わり立ち替わりやってきて、粉をかけては去っていく。きっとこの中のタチの悪い何人かが「ゆきとヤッた」と吹聴する。「メンヘラビッチ」の名声はますます確固たるものとなるだろう。

 それでも不思議と気分は安定していた。ゆきにとって、人にどう思われるかはすでに重要事ではなくなっていた。Dに嫌われたくない、楓より自分を見てほしい一心で迷走していた頃とはまるで違う。そんな自分にまた少し励まされる。

 授業にしっかり出席するようになると、成績もすぐ持ち直した。だいぶ遅れていたので優良ともいえなかったが、さして苦もなく進級できた。二年次に入ると、ますます成績は伸び、そうなるとさらに学業が楽しくなる好循環に入った。

 余裕が出てきたところでアルバイトを始めた。K大生に会わないところにしたくて、自宅と大学の間に位置する書店を選んだ。大きくはないが、ゆきの好きなジャンルの本を多く取り扱っている、老舗書店である。

 ある日の休憩時間、バックヤードでショートケーキを食べていると、老店主の奥さんに「すぐそこの角の喫茶店に行ってみてごらん」と言われ訪ねてみたら、絶品の自家製ショートケーキに出会った。若い女性向けの雑誌では決して紹介されない類の、中年男性が好んで利用するような喫茶店である。
 アルバイト後にその喫茶店に立ち寄り、読書や勉強をするのが習慣になった。ある日の会計時に「今日のお代は結構です」と言われたので驚いていると、書店の店主のおごりということだった。それからもたまに、店主の粋な計らいを受けた。

 アルバイト仲間の新しい友人もできた。ゆきの悪評を知らぬ、他大学の友人との時間は気が楽だった。
 お気に入りの本と優しい老店主夫妻、美味しいショートケーキと新しい友人。誰に煩わされることもなくアルバイトと読書と勉学に明け暮れた。


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