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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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自慰-2

 勉強に疲れると自慰をした。

 爛れたあの頃から今の生活へ、唯一捨てずに持ちこんだものがオナニーである。Dと付き合っていた当時、オナニーとは「女が男を興奮させるために男の前でさせられる行為」であると、かなり大きな勘違いをしていたゆきだが、実は一人でこそ楽しめる行為なのだと今さらながら気がついた。

 勉学に打ち込み、好きな読書に没頭し、気が向けば自らを慰める。ベッドで、トイレで、風呂の湯船でゆきは股間に手を伸ばした。誰かが置いていった大人のおもちゃを使ってみたりもした。
 幸せだったころのDとの行為、DとEに前後から犯されたこと、二本のペニスを同時に咥えながら楓のクンニでイかされたこと、Dに隠れてのEとの密会、あるいは帰省中Cとラブホテルに入り浸り浮気セックスに耽った思い出――さまざまなことを想起し、下半身を震わせる。

 楓との交わりを想像することもあった。現実に二人だけで行為に及んだことはなかったが、複数人プレイの中で楓と肌を合わせるのがゆきは好きだった。自分の恋人とキスをし男女の交わりを行っていた女性と自分も唇を重ね、きつく抱き合うと、背徳的な切なさに胸が締め付けられた。Dのペニスの匂いをさせた楓の口を吸い、楓の美しい顔に飛び散った恋人の精液を舌先で掬い取り嚥下した。

 ゆきのオナニーは若い女性にしてはかなり激しいものだった。もともと超がつくマゾヒストであったうえに、Dに教え込まれた恥ずかしすぎるオナニーが、ゆきにとっての「普通」だったのだ。
 四つん這いで小ぶりな尻を突き出し、極太バイブを陰部に突き刺し、あるいはM字開脚で女性器を顕にして、ぐちょぐちょにかき回す。ディルドを窓ガラスや床に固定し、尻を振って立ちバックや騎乗位オナニーを楽しみながら、口にはバイブを咥え疑似3Pを行うこともあった。「おまんこ」「チンポ」などといった卑猥極まりない言葉を連呼し、CやDやEのペニスを涎を垂らして求める。
 幸か不幸か、突然訪ねてくるような友人もいない。誰にも邪魔されぬ孤独な環境が、ゆきのマスターベーションをより奔放なものにしていった。

 結局ゆきは、自らの自慰行為の変態性を自覚することなくOLとなり、人妻となった。
 夫は妻が性玩具を隠し持っていること、オナニーする習慣のある女であることを比較的早い段階で気がついてはいたが、妻の名誉のため詮索はしなかった。ただなんとなく、いつも清楚な妻らしい可憐なマスターベーションを想像していた。

 だからあの日、妻のオナニーに遭遇し、あまりのお下劣さに驚愕した。まさかFやZの「生チンポ」をおねだりする清楚妻を目の当たりにするとは思わなかった。それ以来妻のオナニーを盗聴するようになった。Zのアナル調教が進むと、妻は肛門にもおもちゃを突っ込むようになった。口、女性器、アナルのすべてに性玩具を挿し込み、イキ狂う妻。ときに夫が知らない男の名前が妻の口から出てくることもあった。元彼だろうか、OL時代の合コンでお持ち帰りされた例の男か、それとも職場で気になる男でもいるのか。
 決して明かされることのない妻の秘密に夫は興奮し、ペニスをしごいた。

  *

 孤独な生活を気に入りはじめていたゆきだが、辟易することもあった。「取り巻きの男たち」の存在である。

 ゆきにいっさい寄り付かなくなってしまった友人たちに変わり、この時期ゆきの周りに集まってくるのは、「ヤリマン」美人とヤリたいだけの、いわゆる「ヤリ目」男子ばかりという有様であった。

 悪いことに――話は少し遡るが――ゆきは秋の学祭の「裏ミス」に選ばれていた。「裏ミス」とは、ミスK大にエントリー「していない」女子学生の中からナンバーワンを勝手に決めるという、大学生らしい下品さに溢れたK大伝統の人気企画であり、無論今では開催できるはずもなく廃止された、伝説の企画でもある。
 非公式だが学内の全女子が対象となるため質はむしろ高く、「表」に負けず劣らずの盛り上がりを見せる。その「裏ミス」でゆきは、本人の当惑をよそに歴代最高の票を得て優勝した、つまりは学内でちょっとした有名人になっていた。

 そんな女子学生が、実は「清楚系ヤリマン美少女」であるとなれば、本人がいくら孤独を望んでいても、軽薄な男たちが寄って来るのは避けられない。

 あまりに連日煩いので、意を決してお洒落をやめた。入学後、ファッション誌や楓からのアドバイスを参考に買い揃えた化粧品もすべて捨てた。Dに買ってもらった少し高価なものも思い切って捨てた。それでも寄ってくる男は一向に減らない。
 可愛らしい服も捨て味も素っ気もない服に買い替えた。誰が着ても同じボディラインになる類の、色気とは無縁の服。それを野暮ったく重ね着する。それでも男は寄ってくる。どれだけヤれる女と思われているのだろう。苦笑いするしかない。

 コンタクトをやめ真面目なデザインの眼鏡に変えた。美人が眼鏡をしても美人に変わりないことに、ゆきは気がついた。嬉しいやら悲しいやら、鏡を見てため息をつく。
 髪型も変えた。何の変哲もないミディアムヘアを下の方できゅっと一つに束ねただけの、忙しい子育てママのような髪型にした。また、ため息がでた。美しい黒髪がきめ細かな白い肌に映える美少女が、鏡の中でこちらを見つめていた。
 すっぴんでもくっきり二重のまぶた、くるんと上を向いた長いまつげ、ぷっくり膨らんだ涙袋、くりっとした茶色の瞳、ほんのり赤みの指した頬。残念ながら、すべてが可愛らしい。

 表情を暗くしてみよう。今の自分なら普通にしていれば勝手に陰気になるから簡単だ。いや、だめだ。憂いをたたえた薄幸美人になってしまった。我ながら守ってあげたくなる。どうりで男たちが寄ってくるわけだ。あぁ、もう何をしても無駄。思わず吹き出した。笑うと自分の顔はあどけない少女顔になる。真面目な顔をすると、憂いをたたえた美人顔。どうしようもない。ゆきはもう一度笑った。


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