先輩に溺れて-1
(ーーいつも真面目な先輩がアンナコト…)
佐田金治(さだかねはる)は、Sという大企業の下請けに勤めており、この四月で入社八年目になった。
先日の出来事から約二ヶ月。
会社の先輩の時任真由美(ときとうまゆみ)には、特に誘われることもなく、二ヶ月が過ぎていた。
秀次がいなくなったあとも、金治は、真由美や同期の田中朝美(たなかあさみ)と何度か飲むことがあった。
その度に、思わず思い出してしまうのだ。秀次に片思いを暴かれ、真由美の体を無理やりーーー
「佐田くん?大丈夫?」
朝美がとんとん、と肩を叩く。ここは小さな居酒屋のカウンターだ。
金治が真ん中、右に朝美、左に真由美が座っているかたちである。今日は金曜日で、数名の新入社員の歓迎会を行い、そのあと三人で二次会をしていたのだ。
「あ、いや、俺、フリーズしてた?」
「佐田くん、酔ってるの?珍しいじゃない」
左側の真由美がそう尋ねる。
「そこまでではないはずなんですけど。ちょっと考え事してました。すみません」
ビールのジョッキを持ちながら、金治は作り笑いをする。
「真由美先輩、今日車は?」
朝美が話を切り替えた。助かった、と金治は思った。
「今日電車で通勤したよ。久しぶりに電車乗ったらさ、何か、最近流行ってるというか痴漢とは微妙に言い難いやつ?あれにあっちゃった…超気持ち悪かったんだけど」
はぁ、と真由美がため息をついて、ハイボールのグラスを口につける。