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蜜戯
【SM 官能小説】

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蜜戯-12

「女性の経験はあるのかしら……」そのときのわたしはとても残酷になっていた。
 彼ははにかみながらも、戸惑うようにしばらく黙っていた。
「正直に言うのよ……」
 少し時間をおいて、はにかむように首を横に振った。
 安堵に似た感情と残酷な気持ちが渦を巻くように微かに胸の奥に浮かんでくる。そのときわたしは、彼がわたしのためにいることを感じた。いや、彼をわたしだけのものにしたかった。
手にした杖の先は無意識に彼への愛おしい欲望の矢となり、性器の陰嚢に突き刺さり、淫猥に珠玉に絡まり、戯れる。彼はわたしにそうされることを望んでいるように肉幹を堅くし、先端をもたげ始めていた。
「わたしの目の前で自慰をして欲しいわ……」
 彼は驚いたように視線をわたしに向けた。
「できないことはないわね、ほら、こんなに堅くなっているのだから」わたしはとても意地悪く言った。
彼の指が添えられるペニスを見たかった。美しい指に掬い上げられ、指と睦みあうペニスを。彼はわたしを愛おしく見つめていた。従順で礼儀正しく、わたしと初めて会ったときの同じ瞳で。
ワインの酔いがわたしを大胆にした。わたしは、彼の視線をわたしの中に誘い込むように白いナイトガウンの胸元を開き、脚を開いた。ガウンの下にわたしは何も身につけていなかった。
「わたしを縛ったときのように、しっかり見て欲しいわ……」
わたしのあらわになった胸や下腹部をひんやりとなぞる彼の視線がわたしの開いた太腿のつけ根で微かに戸惑った。そして立ちすくんだままわずかに前かがみになった彼は、自分の性器に指先をふわりと添えた。陰毛が微かになびき、しなやかな指は彫塑のような性器の幹に触れ、絡まり、掌となって肉幹を包み込んだ。
それはあまりに美しすぎる姿だった。まるで絵画の中から飛び出した彫塑がわたしを賛美するように彼の掌の中でペニスがそそり立っていた。指は音もなく静かに蠢きはじめる。指が立ち、性器のあらゆる輪郭を這うようになぞり上げていく。
幹を擦り上げていく指と性器がひとつのものとなって蠢き、同じ色に染まり、彼の肉体全体に拡がっていく。彼はわたしの視線に操られるように五本の指でペニスを包み込み、掌を上下させて擦り、ゆるやかにしごき、握り締め、ゆるめた。
わずかにのけ反った彼の瞳が潤み、唇から微かに嗚咽が洩れる。それはわたしへの愛おしい囁きにさえ聞こえてくる。
彼の自慰の姿はわたしの中の何か懐かしいもの疼かせた。彼とわたしがとても近いところにあり、わたしの心は彼の輪郭に滲み入り、体温を感じ取る。
ペニスは喘ぎながらも美しくなびいている。わたしだけに向けられた自慰の時間がゆるぎなく刻まれていく。彼の自慰はわたしだけに捧げられ、逆にわたしを自慰に誘っているようだった。わたしは彼のペニスに今すぐにでも身をゆだねたい甘美な錯覚に駆られる。

彼はわたしにじっと視線を向けたまま、なめらかに、しなやかに、掌を動かした。自慰の挙動が彼のすべての肉体を巻き込み、その美しい指の動きはうっとりするような、これまでわたしが見たこともない眩しい彩りに充ちあふれていた。
彼の性器は十分にわたしを迎える準備が整っていた。いや、それは彫塑のようにあまりに精緻に、優雅に整い過ぎ、堅く、麗しく、しなやかに漲(みなぎ)っていた。わたしの中が新たな鼓動を始める。わたしは指を自分の下腹部の中心へと這わせていく。それはまるで彼がわたしの指を握り、導いていくようだった。ゆるんだ肉の合わせ目が微かに湿っている。薄い湿り気がしだいにしっとりと濡れたように濃さを増していくのが自分でわかった。わたしは微かに指を動かし、肉唇をなぞった。


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