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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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爛れた日々-5

 大学一年生のあの時期を思い出すと、ゆきは今でも暗い気持ちになる。考えぬようにしてもかえって意識して鬱々とした気分に浸ってしまう。

 こういうとき、いつもなら夫に甘えてみる。夫の腕に抱かれ、夫の匂いに包まれると、嫌なことを忘れてぐっすり眠れた。夫はゆきの男性遍歴の中で唯一、ゆきの方から――実際には相手からも、だったらしいが――好きになった異性であり、何より肉体的満足なしで男女の関係を築けるという自信をゆきに与えてくれた存在である。大学入学後から夫と付き合うまでの五年弱、C、D、E、F、Gの五人の男と人に言えない変態セックス、浮気セックス、異常性行為ばかり行ってきたという事実は、元来常識人のゆきをときに苦しめた。そのような関係に少し疲れていたゆきにとって、後に夫となる「Oくん」との出会いと交際は、清く正しく甘酸っぱく、まさに癒やしとなった。今でこそ、夫とも様々なプレイを楽しむようになったが、ベースには性愛抜きの深い愛情があることに変わりはない。

 今日、Fとラブホテルに泊まったことを、ゆきは少し後悔した。早くパパに会いたい――。

  *

 複数人プレイがエスカレートしていくと、気持ちよさに反比例して心は重く沈んでいった。幸せの絶頂にいたはずなのに、いつからこうなってしまったのだろう。Dと付き合って本当に楽しかった時期はせいぜいはじめの三、四ヶ月だけだった気がする。
 生活は乱れた。勉強も疎かになっていく。秋も深まる頃には、周りにもゆきが身を持ち崩しかけているのがわかった。授業やアルバイト、サークルを休むことが増えていたからだ。気にかけてくれたり、諌めてくれる友人もいたが、まさか3P、4Pに溺れているなどと言えるわけがない。「大丈夫。ありがとう」と返すしかできなかった。

 悪いことに、Eの部屋からゆきが一人で出てくるところを目撃された。噂が広まると、今まで味方でいてくれた大切な友人もゆきを見限り、一人また一人と去っていく。人気と人望を備えたDを裏切り、誠実で素朴なEをたぶらかし、誰からも好かれていた楓の恋人を寝取った女として、ゆきの評判は地に落ちた。
 つまらぬ中傷の域を出ていなかった「ヤリマン」、「都合のいい女」などといった悪評が、動かぬ事実とともに尾ひれをつけて、定着していった。

 ゆきの精神はいっそう病んだ。直視できぬ現実、このままでいいのかという自問をセックスで打ち消す毎日。

 何かにつけて複数人プレイをしたがり、ときに楓とこそこそ会おうとするDへの不満が膨らむ。もっと二人きりの時間がほしい。何度かDに訴えるも、徒労に終わった。「ゆきも楽しんでるじゃん」「めちゃくちゃ感じてたよね」「この前Eと二人でヤッてただろ」。そう言われると返す言葉がない。第一、あまりしつこく言って嫌われたくない。そう思うほどにはDのことがまだ好きだった。

 楓だけはゆきの自我崩壊の危機に気がつき、相談にも乗ってくれた。ゆきとEの噂が立ったとき、まさか「公認です」とも言えず、助け舟を出せなかったことを気にもしていた。賢明な楓は、結局は自身とDへの嫉妬が邪魔をして身動きがとれなくなっているのだと察し、4Pから身を引いていく。Dとも会わなくなっていった。「こんなこと言えた立場じゃないけど、ゆきちゃん、もっと自分を大切にして」。自分も辛い思いをしているはずなのに、楓はいつでもゆきを優しく包んでくれた。
 このときばかりは、ゆきの気持ちは少し救われた。しかし結果として、ゆきが一人でDとEの相手を務めることが増え、Dへの不信はかえって膨らんだ。もっと二人で、恋人らしい時間をたくさん過ごしたい。しかも楓は、Eが今でも自分と関係していることを知らない。今までの経緯から薄々感づいているのかもしれないが、何も言ってこない。心が傷んだ。

 十二月、ゆきの不安と自己嫌悪、Dへの不信感はついに限界を迎える。クリスマスにまで3P、いや久しぶりに楓も交えての4Pを画策するDに我慢ができなくなり、ゆきはDに別れを告げた。

 あまりにも遅すぎた。失われた時間、友人は戻ってこなかった。


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