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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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お持ち帰りされる女子大生-1

 暗闇の中、じりじりとした熱気がゆきの身体にまとわりつく。肌はじっとり汗ばみ、長い髪が額やうなじにへばりついている。蚊の鳴く音が近づいてはまた遠ざかる。そんなことを幾度か繰り返した末に、二の腕にむず痒さを感じて振り払う。あざ笑うかのようにまた聞こえてくる甲高い飛翔音。
 タオルケットを体に巻き付け汗を吸わせても、暑くてすぐはだけてしまう。いまどきエアコンのない宿など珍しい。生まれてはじめて自分で予約した宿だが、エアコンなしの表記に気が付かなかった。昭和の遺産のような首振り扇風機だけが頼りだが、回ってくる間のじれったさがまた暑さに拍車をかける。

 寝苦しい熱帯夜。しかしゆきの気分は悪くはなかった。むしろ胸は高鳴り、浮ついた高揚すら感じている。ゆきの隣には二ヶ月ほど前に付き合いはじめたサークルの先輩Dが寝ていて、襖を隔てた向こうには同じサークルのEとその彼女である楓が枕を並べている。
 今日、ゆきたち四人は、夏休み最後の思い出にと、若者に人気のビーチに二泊三日で遊びに来ている。楽しくないわけがない。

 寄せては返す波の音が心地よいボリュームで部屋を満たす。潮の香りが鼻腔をくすぐる。

 今回の小旅行に当たり宿の選定を任されたゆきは、目の前がビーチという絶好の立地と格安の料金、そして気さくなオーナー手作りの食事を皆に褒められ、鼻高々だった。デザートにこれまた手作りのショートケーキが出てきたときは「これが目的だったのか」と若干白い目で見られたが、美味しかったので問題なし。エアコンがないのには皆辟易しつつも、誰もゆきを責めなかったし、夜遅くまで部屋で飲み、大騒ぎして楽しんだ。

 憧れの大学に合格し、サークルでは素敵な先輩から熱烈な求愛を受け、恋に、勉強に、サークル活動にすべてがバラ色の大学生活。多少の暑さや寝苦しさも、時が経てばいい思い出になる予感しかしない。

 寝返りをうったDの手がゆきの手に触れた。心臓がトクンと鳴る。まだ起きているだろうか。指を絡めてみると握り返してくれた。嬉しくなって身を寄せる。腕枕で迎え入れてくれた。向かい合って抱き合うと、Dの大きな手のひらがゆきの腰から背中へ、尻から太ももへと這い回る。

「汗かいてて恥ずかしい……」

 隣に聞こえないよう声を潜めて訴えるが、黙殺される。愛撫が止まらない。ゆきも男の背中に手を回すと同じように汗ばんでいた。もういい、汗は気にしない。男の顔が近づきキスされる。あぁ、嬉しい。大好き。全身の毛穴が開いて、玉のような汗が吹き出した――。

  *

 はっと目が覚める。

 隣を確認するとFがゆきを腕枕しながら寝息を立てていた。そうだ、今日私はこの人とデートしてラブホテルに泊まっているのだ。妻子ある男性との不倫――夫に許可を得てのこととはいえ、冷静に自分のしていることを思うと気分は重い。

 大学一年生のころの、甘酸っぱくもほろ苦い記憶が夢に出てきたのは、きっとこの気分のせい。Fとの会話で久しぶりにDのことを思い出してしまったのも、影響している。

 それにしても――。ゆきは小さなため息をついた。

 今日のデートでゆきは、夫に許可されていない行為をしてしまった。絶対に知られてはならない、死ぬまで秘密にしておかねばならない「行為」。ゆきの下半身に深く刻まれた異物感が、その事実を突きつけてくる。二の穴のうち後ろの方が、ひりひり、じんじん疼いている。

 人妻の身でありながら、夫以外の男と肛門でセックスをしてしまった。しかも二人の男と。二人目の男はただ通りすがっただけの男である。男はXと名乗り、またよろしくと大胆にも名刺を置いていったが二度目などあるわけがないだろう。不潔で太っていて汗臭くてタバコ臭い、あんな気持ち悪い男としたいなどと思うわけがない。Xが目の前に現れた瞬間からそう思っていたし、すべての「事」が済んだ今もそう思う。
 それなのに、ただ行為の最中だけは違った。身体がXのペニスを欲していた。挿れてほしい――認めたくないことだが、たしかにそう思ってしまった。理性では拒否をして、口でも「だめ」と言いながら、結局は女性器にも肛門にも、男根の挿入を許したのは自身の意思だ。レイプされていたわけでもなし、拒否ならいくらでもできた。なのに行為中のゆきは、乱暴に犯してほしい、自らの身体の奥に精を放ってほしい、むせ返るような臭いペニスを口の中に突っ込んで射精してほしい、本能でそう願うと、ゆきの心の中のマゾヒスティックな部分が痺れ、下半身が震える感覚を味わえた。自身が汚れれば汚れるほど、得られるオーガズムは強烈なものとなった。真冬の刺すような寒さの中、Xのペニスを挿し込まれたその一箇所だけが熱く燃えていた。

 思い出すと、後悔とは裏腹に下半身は熱くなる。手をそっと股間に伸ばし、生い茂る陰毛をかき分け花びらの間に指先をすべらせる。くちゅり――ゆきの細い指にぬめりのある液体が付着した。そっと塗り伸ばす。陰核には触れないよう、優しく指先で円を描き花びらをめくっては折りたたむ。指を花芯のほんと入り口まで差し入れては引き返す。
 孤独だった大学時代の一時期に編み出したゆきお気に入りの自慰方法。こうすると、性的快楽を感じながら眠りにつくことができるのだ。

 Fの腕に抱かれてまどろむゆき。女性としての悦びが、静かに寄せては返す。あの日の波の音のように――。


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