鈴木家での出来事 ２-9
未来は大きくうなずき、自分の意思を伝えた。
（潤一さんも、次もわたしと、って思ってるんだわ。）
潤一の愛撫にも挿入の仕方にも、優しさが溢れていた。
それでいて、女の性感帯を、というよりも、
未来の一番感じる場所を、
ちょっと触れただけで見極め、的確に刺激してきた。
未来は思った。
（征爾おじ様も、麗子おばさまも。
子どもの紗理奈さん、美奈子さん、敏明君。
そして紗理奈さんの婚約者の潤一さんまで、
鈴木家の人たちはみんな優しい。
思いやりも、気遣いも、優しさが基本にあるんだわ。
それでいて、セックスとなったら、時には荒々しく、とことん快楽を追及してくる。
うちの家族とはずいぶん違うみたい。
うちは、お父様は無骨というか荒っぽいというか。
相手に対する思いやりややさしさなんて、なかなか感じられないわ。
お母さまも、人とのかかわりは、どこかしら割り切っているというか、
時には冷たく感じることもある。
お兄様はどちらかと言えば我が道を行くタイプだし。
それぞれ、同じ家族であっても、全く違うんだわ。
でも、こうして出会って、ふれあい、身体を重ね合うことで、
それぞれの違いやそれぞれの良さに改めて気づくのかもしれない。）
未来の思考を遮るかのように、潤一が腰の動きを一段と激しくした。
未来の腰を持ち上げ、挿入角度をペニスが外れるぎりぎりまで浅くしていく。
それによって、潤一が動くたびに、未来の膣壁を削り取るようにペニスが動くのだ。
未来はたまらずに潤一に抱き付き、潤一の耳たぶを舐め回した。
潤一はそれに応えるようにさらに腰の動きを激しくした。
「アッ、アッ、アッ。」
未来はいつになく速いペースで絶頂へと駆け上がっていった。
その瞬間、ストロボライトが一瞬、地下室全体を明るく照らした。
未来は一瞬だったが、自分を抱きしめる相手の顔を見た。
間違いなく潤一だった。
ライトがついた瞬間、二人は互いの顔を見ていたのだ。
潤一も、自分が抱いている相手が未来であることを確認したはずだ。
周りからは人が動く気配が伝わってくる。
しかし潤一は腰の動きをやめる様子は全くなかった。
未来も、それが当たり前であるかのように潤一にしがみつき、
腰の動きを合わせていた。
今から２０分ほど前のこと。
潤一は、自己紹介したときに、自分のことを熱く見つめる視線に気づいた。
真奈美よりも少し年上だろうが、
どこかしら真奈美の雰囲気を持ったその女性は、
田辺の娘、未来と名乗った。
潤一には紗理奈という婚約者がいる。
結婚式に向けての準備も着々と進んでおり、
紗理奈との結婚については何の不服も不安もなかった。
ただ、紗理奈と結婚したあとも、互いの男女関係には変わりはない。
今まで通り、気に入った相手と身体を合わせ、
時には互いに紹介し合い、ベッドを共にする。
相手の意思は大切にしつつも、
条件さえ合えば家族ぐるみの付き合いへと進展していく。
結婚前も、結婚後も、それは変わらない約束だった。
だとすれば、自分が目指す相手は未来以外にはない。
潤一は心の中で紗理奈に詫びながら、未来の位置をしっかりと頭に叩き込んだのだ。
紗理奈との約束。
それは結婚後も、お互いが自分以外の異性と関係を持つことを認めるというものだった。しかしそれは約束というよりも、二人にとって、ごく当たり前のことだった。
目の前にどんな女性が現れようと、
紗理奈との結婚は揺るがない通過点であり、
紗理奈に対する潤一の気持ちも普遍のものだった。
しかし、身体だけの関係は全く別だ。
抱きたい、抱いてみたいと思った相手がいたのであれば抱いてみる。
それは紗理奈にしても全く同じで、
もしも目の前に、抱かれたい、抱いて欲しいと思った男性がいたならば、
紗理奈は潤一になんら遠慮することなく、その男性の前に跪き、
熱いフェラチオを始めるはずだ。
結婚後であっても、出会った異性との関係を深めていく中で、
相手の、セックスに対する考え方や嗜好、
お互いの身体の相性などを確かめていく。
そのうえで、互いの思惑が一致したのであれば、さらに特別な関係を築いていく。
自分にとって未来は、まさにそういう相手だと、潤一は瞬間的に感じたのだ。
周りの動きがひと段落し、そこここでピチャピチャという音や、
女性の控えめな喘ぎ声が聞こえ始めた。
それぞれ新しいパートナーを見つけ、さっそく愛撫を始めたのだろう。
潤一はストロボが光った後に一度中断していた腰の動きを再開した。
その間も未来は自分の中に納まった潤一のペニスをキュッ、キュッと締め付けていた。
（ああ、いい感じ。サイズも、硬さもわたしのにピッタリだわ。
それに、何よりも反応の素早さが最高だわ。
こうして締め付けるだけで、それに敏感に反応してくれる。）
未来は自分の中で一段と太さと硬さを増していく潤一のペニスを、
もう一度頬張りたくなった。
しかしその一方で、このまま一気に絶頂へと上り詰めたいという気持ちもあった。
（時間が限られているんだもの。今から約15分。
次はさすがにパートナーチェンジしないとダメよね。
ほかのみんなは誰としているのかしら。）