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夢と現の狭間の果てに
【OL/お姉さん 官能小説】

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既視感-6


          ※


「イくよ!出すよ!」

 三回目の射精を受けて、漸く樋口は落ち着いて私の上で脱力した。私も肩で息をするくらい疲れ果てて微睡んでいる。

 あれからカラオケ屋を出て場所を変え、今はラブホテルに居る。カラオケ屋でのセックスでは物足りなかったのか、樋口に連れ出されて結局ホテルで続きをしたのだ。

 うつ伏せて呼吸を整える私のお尻をペンと軽く叩いて彼はベッドから降り、ソファへ移ってペットボトルの水をラッパ飲みする。

 「本気なの?」という言葉が口から出かかって、私はその言葉を飲み込んだ。私のこと好きというのは本当なのか、やっぱり気になった。でもそれを聞いて期待している返事が返ってこなかったら怖いので、だから…やめた。
 私の体が好きという意味かもしれない。可愛いとは言われたけど、特段自分が可愛いと思った事は無い。
 お互い、今日のことは忘れた方がいいと思った。一度だけの過ち。エッチは一度だけではなかったけど…。そう、これはお互いの胸の内に仕舞って無かった事にするのが一番良い。
 性欲を発散できた。それでいい。そうやって自分に言い聞かせる。

 私はゆっくりと身体を起こして浴室へ向かった。温いお湯を頭からかけて少しずつ冷静さを取り戻していく。

 「ほんと…何やってんだろ…」

 情けない。欲に駆られて仕事仲間に身体を許してしまった。自分が情けなくて、苛立ちさえも覚える。こんな気持ちになるくらいなら最初から毅然と断れば良かった。今更そんなことを思っても遅いけど…。
 ガチャっと扉が開く音。樋口が…彼が入ってきた。そのまま背後から抱き締められる。お尻に彼のが当たってる。また…硬くしてる。

 「リカ、あのさ」
 「先輩」
 「ん?」
 「もう、今日のことは忘れて…帰ろ?」

 シャワーは出続けている。私も彼も何も話さない時間が流れる。抱き締められたまま流れる無為な時間。人肌の温もりもまた、幸せを感じる。
 名残惜しい。このまま終わってしまうのは嫌だとも思っている。たった一度の関係で終わりたくないと、今まで嫌っていた男にそんな想いを抱くのは自分でも不思議だった。

 「リカは本当にそれでいいのか?」

 そんな聞き方ってない。私が強がってる事なんかこの男ならよく分かってる筈だ。百戦錬磨…かどうかは分からないけど、何人もの女の子を手篭めにしてきた男というのは周知の事実なんだから。
 私は頭(こうべ)を垂らしたまま黙している。抱き締める彼の腕にそっと手を添える。
 刹那、抱き締めていた手が離れて両の肩に置かれるとそのまま身体を180度回されて壁に押し当てられた。
 樋口は私をじっと見つめる。私はどこか後ろめたさを感じて目を逸らしてしまう。

 「サクちゃん、俺マジだよ」

 呼び捨てからまたいつものあだ名へ変わったのは、いつもの樋口を見せて私を安心させる為?何か思惑があって変えてる筈と勘繰るのは私の悪い癖かな。
 お臍の下辺りに彼の少し硬くなっているモノがちょいちょい当たる。何がマジなんだか…。

 「やりたいだけでしょ?」
 「やりたいのを隠すつもりはない」
 「正直ね」
 「サクちゃんも正直になるべきだよ」
 「私は…」

 口を噤む。私は正直じゃない。



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