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夢と現の狭間の果てに
【OL/お姉さん 官能小説】

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目醒め-7


 どうかしている。
 外からの刺激に内なる欲望が目を覚ましたのかもしれない。普段の私はペルソナ(仮面)を被っていたのか、それとも元々は私はこんなだったのか。無意味な自問自答だ。今はただ………。

 リクライニングシートに座っているのは私ではない。中年の男がそこに座っている。
 私はパソコンデスクの下へ器用に収まって、男の露出した下半身へ顔を埋めていた。

 「へへ…今日はなんて日だ。仕事をサボって漫喫に来てみりゃ……ううっ」

 右手で根本から握り、下から上へと舌で唾液を擦りつけていく。
 こんなだったか。久しくオトコのものを見ていない。硬くなったそれは小刻みに震えて、先端から汁が溢れている。雄の匂いが鼻腔を擽(くすぐ)り、クラクラする。
 少し黒ずんだ鈴口に唇をそっと当てて、垂れた汁をちゅっと吸った。味はしない。不味いとも美味しいとも思わない。その筈なのに私は緩慢に幹を、根元まで咥えていく。
 咥内で舌は逞しい棒に絡み、焼きとうもろこしの出汁を吸うように、催促するように吸い続ける。
 何でだろう。こんなおっさんの汚い性器に私は何故欲情しているんだろう。

 「お、おう……こらこら、そんなに吸ったら出てしまうよ」

 男は私の頭を撫でながら言う。
 出る…とは、射精(だ)すということか。精を放出して私の口を汚すつもりなんだ。
 精液は今もまだ出続けているカウパー腺液よりも、もっと濃厚な匂いと味がする。遠い記憶だ。私はその味を忘れている。もう少し若かった頃の私はその味を好んでいなかったように思う。
 でも、今の私はきっと。今の私なら…。
 中年男は「うう」と呻く。カウパー腺…ガマン汁とも言ったか。その量も少しずつ増えている気がする。やっと味を感じられた。塩っぱいような、甘いような、どっちものような。言葉で説明するのが難しい味。
 そのガマン汁が増えていって私は喉を鳴らしてそれを飲み干していく。

 漸く、何となくではあるけど実感した。

 私は飢えているんだ………と。

 「うう、ダメだ、イく!!」

 頭を両手でガッチリと掴まれて、喉の奥までペニスを挿しこまれた。嗚咽が出て、同時に勢いよく性液が放たれる。鼻での呼吸しかできないからか、匂いが直接鼻の奥から嗅ぎ取られた。口腔内で痙攣をし、幾度かに分けて精が射出される。
 唇で感じる男の脈動。歯を立てず、窄めた唇でペニスを包み込む。最後の一滴まで搾り取ろうと強く吸い、根元まで握った右手を短く前後させる。まだ、射精(で)る。生臭い精液の香りは私の雌としての本能を呼び起こすのに充分な効果を与えた。
 全て出しきったのか、男は逸物を私の口から引き抜こうとする。私はでも後を追うように口から離さず股間深くへ顔を埋める。

 「ちょちょ、もう降参。おじさんもう無理だよお嬢ちゃん」

 ………は?
 と、声に出しかけた。おじさんは手伝うって言った。私の不満を解消するのを手伝うと言った。
 口腔内の逞しい男の象徴(シンボル)は、徐々に力を無くしていって、やがて小さく萎(しぼ)んだ。
 なに勝手に一人でスッキリしてるの?私は?ここまで興奮させておいてお預けなんて…。
 もうすっかりと縮まった男性器は私の口から離れて、いそいそとパンツの中に仕舞われた。それを恨めしそうに見て、私はやり場の無い欲求をどう収めるかだけを考えていた。

 「じゃ、じゃあこれあげるね」

 そう言って中年おじさんは財布から雑にお札を取り出して私に無理やり手渡すとそそくさと部屋から出て行った。手の中には千円札が10枚ほど入っている。
 私はお金を求めていたわけではない。勝手に娼婦扱いされた事に苛立ちを感じた。
 ………このお金は………、そうだ。私を満足させなかった “迷惑料” として受け取ろう。決して性的なサービスを提供した “報酬” ではない。そうやって私が納得しないと私自身のプライドが保てない。私には私という価値がある。その価値を決めるのは私か、私が認めた誰かでなければならない。
 私はでも、口内に残る精の香りにまだ酔いしれていた。


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