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I KNOW……
【純愛 恋愛小説】

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I KNOW……-1

 愛情に永遠なんてないものだと、私は思っていた。
 たから、恋人に「永遠」を求められても、私は決して首を縦に振ることは出来なかった。
 時間は流れているのだ。普遍であるものなんて、この世には、ない。それとも、私は間違っていたのだろうか。嘘でも、相手が望むように約束してあげればよかっただろうか。
 アナタガスキヨ。エイエンニアイシテイルワ、と。
 あの人と出会ったのは、記録的な猛暑だった夏の日。太陽が高く上った真昼。海水浴にきている子供達のハシャギ声がよく耳につく、防波堤の前だった。始めて出逢ったのだから、それが偶然であることは間違いない。それなのに、彼の顔を目にした瞬間。そのひとコマで私は確実に恋に落ちてしまっていた。
 彼は、ケンと言った。栗色の短い髪のせいで肌の白さが際立って見える、小柄な男性だった。年齢は、後で知ったのだけれど二十八らしかった。もっと若いのかと思った、と私は思わず声をあげてしまったのを覚えている。
 薄暗い地下のバーで、天井からの薄明かりの中、少年のようなケンの顔が笑顔を作った。
 「よく言われるよ」
 私もつられて笑ってしまった。
 「ま、若く見られるならいいわよね」
 「ナオコさんはいくつなの?」
 「二十七。あなたの一つ下ね」
 ふうん、と瞳の上で弧を描く眉が片方上がる。
 防波堤で海を見ていた私に、彼が声をかけたのがきっかけで知り合い。その日から私達は頻繁に約束を重ねては顔を合わせ、それに比例して感情も高めていった。そしてそれが恋愛の域に達するまで、そうたいした時間を要さなかった。信じられないことに、私はいっぺんに彼のことを気に入ってしまった。いや、どんなに控えめに言ってもそれは惚れたの領域に達していた。
 こんなこともあるのかと、自分がまるで別の人間に見えたほどだ。
 多分、だからだと思う。私は、私のこの恋が絶対に終わらないと感じた。成就すると本能で悟った。
 ケンのためなら、私はどんなに忙しい時でもノーとは口にせず、彼の要望にこたえてきた。会いたい、会いたい、会いたい、会いたい・・・。別れて五分も経っていないのに声を聞きたい。それはもう、ケンという名前の麻薬そのものだ、と私は思った。彼なしでは、もうこの先やっていけない。絶対に。彼を失ってしまうことを想像したら、気が狂いそうだった。それだけ私はケンに狂っていた。だけど人は貪欲だから、いつしか私は「今」だけでは満足しきれず、ついに「未来」まで手を伸ばしてしまった。それが失敗だった。そう。私は、過去に出会った男達と同じ弱さを身に付けてしまった。ケンの未来を手に入れたくて、そうでないど自分の未来がないような気がして、どんどん遠慮をなくし、気がつくと私は、私の嫌う人間になってしまっていた。それに気づいても、もはや止められる状態ではなく、結局、ケンは私を避けるようになり、こぼれ落ちる砂のように消えてしまった。
 私は一人になった。
 恋をしていたのだ、と思う。
 正真正銘の恋。
 不安になるくらい強い恋を。
 もろくなるくらい完璧な恋を。
 愛だ。きっと愛だったのだ。だけど、私にその獣を飼いならすすべはなく、愛した人を失ってしまった。私は、しばらくの間、死人のような生活を送っていた。外へ出たくなくなった。気力も食欲も、なにもかもを持っていかれた。けれど、頭の片隅。
失恋の鐘の一方で囁くようにして鳴り始めた音にも気がついていた。私はきっとまた恋をする。出会うんだ。誰かと。見苦しいくらい、その人を好きになって、かっこ悪いくらいに幸せになるのだ、と。


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