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夢と現の狭間の果てに
【OL/お姉さん 官能小説】

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日常と非日常-2


 誰がどこに行って何をする。基本的にそういった段取りを決めるのが私の仕事。
 代官山の一等地にあるビルの一階が私の仕事場になる。旅行代理店の支部になり、本社は六本木だ。

 「サクちゃん、ランチでもご一緒しま」
 「リカちゃんカフェ行くよー」

 ランチタイムになりまたも私に声を掛けてきた樋口を遮るようにして口を挟んできたのは佐々木文香(ささきふみか)。二人居る係長の内の一人で新卒の生え抜き…所謂プロパー社員だ。
 年齢は47歳で一人いる娘さんは高校生になったそう。ご主人のパワハラが酷いらしく、今は別居してるとか何とか…。

 「久しぶりですね、カフェ行くの。行くのはUrth caffeですか?」
 「そう、あそこのパンケーキが食べたくなってきちゃって。もちろん付き合ってくれるよね?」
 「行きます!私も食べたいなって思ってたところです」
 「リカちゃんのそういうとこ好きよ」

 47歳にもなってウインクする文香さんに少しだけ違和感を覚えるけども、そこは突っ込まずにさらりと流した。

 「あの、俺もご一緒しま」
 「結構よ。行きましょ、リカちゃん」

 哀れ樋口は最後まで語れないまま、私達に置いていかれた。


………………………
………………
………


 「でね、グーよグー。分かる?殴るんだよ」
 「うわ、それは無いですよね」

 かれこれ20分は聞いた旦那さんへの愚痴。不平不満が溜まってるんだなぁと思う。ただ幸いなのはもう別居してるから被害は無くなってるってこと。
 私は文香さんのそんな愚痴を聞きながらチョコレートバナナワッフルを頬張る。

 ワッフルと言っても私は追加料金の270円を支払ってワッフル生地をパンケーキに変更してもらっている。パンケーキの上には生クリームが山のように乗せられていて、その中には輪切りにされたバナナがいくつか入っている。
 生クリームの上にはチョコレートソースが渦巻き状にかけられていて、アイスクリームも添えられている。
 飲み物はアイスティー。紅茶とレモネードがハーフ&ハーフで入っている。適度な酸味と紅茶の風味が味わえる何とも不思議で爽快な味。
 〆て1,920円。ランチにしては少し贅沢過ぎる金額かな。

 「それで?リカちゃんは相変わらずなの?」
 「相変わらず、ですね」

 苦笑いを浮かべる。相変わらずというのは今彼氏が居るかどうかということで、つまりその相変わらずの意味は今もなお彼氏は居ないという事を指している。

 「勿体ないなぁ。可愛いのにね。おっぱいも大っきいし」
 「おっぱいだけじゃ釣れないもんですよ」
 「うちの部署にはまともな男居ないしねぇ。樋口とかどうなの?実際声かけられてるじゃない」
 「分かってて聞いてますよね?」
 
 意地が悪い。樋口のナンパ癖を知ってて、それに苦手意識を私が持ってることも知ってて文香さんは言ってるのだ。

 「バレた?」
 「もう、バカにして」

 「てへ」っと舌を出す47歳に少しだけイラッとした。全然可愛くない。私はわざと少しむくれた顔を作ってそっぽを向いた。
 そこへほんのりと冷たい風が頬を撫でて、ちょっとだけ気分が晴れた。オープンテラスのここはよく風が通る。お店自体も窓をほとんど開放していて、店内でも風通しが良い。
 文香さんもその風を浴びて気持ち良さそうに空を見上げていた。
 私も早く彼氏でもつくって文香さんに自慢してやろうと、密かに心に誓った。



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