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夢と現の狭間の果てに
【OL/お姉さん 官能小説】

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日常と非日常-1


 「おはようございまーす!」

 私は元気よく挨拶をすると先に出社していた皆から返事をもらい、いつものようにデスクへ着いてバッグを置くと早速私の側へ寄ってきて、声を掛けてくる男が居た。

 「サクちゃん、今夜暇?空いてたら一緒に」
 「無理です」

 さっくりと断る。
 声を掛けてきた男は樋口克彦(ひぐちかつひこ)。32歳で尊敬はしてないが一応私の先輩ではある。
 人当たりが良いし誰とも仲良くなれるけど、裏の顔はとんでもない女ったらしだ。今までもこの男のせいで何人もの女の子が犠牲になった。

 「つれないなぁ。ただちょっとご飯食べて、お酒でも飲んでホテル行くだけだよ?」
 「最後が余計だから行かないんです」

 ホテル行こうだなんて言いにくいことを簡単にさらっと言えてしまうからモテるのかもしれない。ただ私はこういうチャラ男が苦手だ。嫌いというわけではないけど、どうもそういう気持ちになれない。苦手意識を持ってしまう。

 「じゃあ明日は?」
 「おはようございます櫻木先輩!」

 樋口に割って入ってきたのは新入社員の成瀬薫(なるせかおる)。25歳で初々しく可愛い感じの男の子。樋口とは違った人懐っこさがある。イケメンというよりはショタ顔。捨てられた犬のように擦り寄ってくるのでつい面倒を見てあげてしまいたくなる。

 「ちっ、何だよ薫。今俺がサクちゃんと話ししてんの分かるだろ?」
 「すいません、でもちょっと仕事で分からないところがあって」
 「んなのは飯塚さんに聞け。俺は今サクちゃんをあと一歩で落とせるとこまできてんだ」
 「あと百万歩ほど足りませんが?」

 言ってやった。あと一歩で樋口に落ちる訳がない。

 「嘘!?百万歩ってあとどれくらいなのサクちゃん!」
 「樋口先輩すいませんけど、仕事中にそういうのは良くないと思いますよ」

 薫くんも可愛い顔して結構言うタイプなんだと感心した。

 「あのな、これも仕事の一環なわけ。新人には分からないかもしれないけどな、これは所謂スキンシップやコミュニケーションと呼ばれるもので、楽しく円滑に仕事を進ませるのに必要不可欠な」
 「それでなに?薫くん」
 「あ、すいません。このデータなんですけど見方がちょっと分からなくて」
 「データ?ちょっと見せて」
 「あの、俺を無視して話し進めないでくれる?」

 ぶちぶちと文句を垂れる樋口を無視して、薫くんの差し出してきた書類に目を通した。

 「────となるわけ。それでこの山なりの所が人口の推移。ほら、寒気になるとこっちは下がるでしょ?逆にこっちは上がってる。分かった?」
 「あ、そっか!ありがとうございます先輩!」
 「こんなのも分かんなかったら大変だよ?樋口さんみたいになるよ?」
 「それは嫌ですね」
 「あれ?もしかして今俺ディスられてる?」

 そんなやり取りもし、各々が席に戻ると私は漸くパソコンを起動させて仕事を始めた。


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