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香澄の本性
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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母(麗子)と娘(紗理奈)の軋轢-3

香澄は自問自答していた。
自分には果たしてそれができるかどうかと。
つまりは目の前にいる娘の真奈美を放っておいて、
しかも、真奈美が襲われていたり命の危機という時に、
真奈美を救うことよりも優先して、自分のセックスに夢中になれるものかどうか。

もちろん、正答は優先すべきは真奈美であり、真奈美の命だ。
しかし、正答が必ずしも、自分が取る答えではないことを香澄は知っていた。
取るべき答えを取らないのも、時として取れないのも、また、
人間なのだということを、香澄は知っていた。
(わたしだって、麗子のように、目の前の男に夢中になって、
 娘のことよりも優先してしまうことなどないと言い切れるだろうか。
 わたしにはそんな自信はない。)

性的な欲望に流されやすい。
そんな自分の弱さを知っているからこそ、香澄には、
麗子のことを頭から否定することはできなかった。
いや、それどころかそんな風にセックスだけに夢中になれる麗子のことを、
ある意味羨ましいとさえ思った。


ただ、香澄自身、そうした面が全くないとは言い切れない。
若い頃、夫の雅和が陰で見守る夜の公園で、
次々と行きずりの男たちにレイプされた体験は、
正に、相手は誰でもいい、という体験だった。

性的な満足を与えてくれるのなら、相手は例え……。
人間に限ったことではないのだ。
さすがに現実としての経験はないにしても、
香澄は夢の中では、平気で犬のペニスを咥えていた。
馬の巨大なペニスに貫かれながら、セイウチの終わりなき性欲を満足させる、
そんな性具に自分がなり下がった夢を見ては、股間を濡らした時期もあったのだ


しかし、香澄にとっては羨ましいとさえ感じたそんな麗子の姿は、
その娘として、
暴漢たちに無理やりレイプされているという事情を差し引いたとしても、
紗理奈には理解しがたかったのだ。

理解できないというよりも、そんな母親の姿を見たくなかった。
母親の、そして同じ女としてのそんな姿を認めることは、
その娘である自分の中にも、そうした血が流れていることを認めることにもなるのだ。
自分は母親とは違う。自分は親とは違うのだと、親を否定したくなる年齢。

それは香澄と紗理奈の単に年齢の違いだけではなく、経験の違いでもあった。

自分の娘が生きるか死ぬかという状況に立たされている時でさえ、
美奈子の母親である麗子は、田辺の荒々しい一突きに夢中だった。
田辺に辱められ、バックで責められながら、
田辺に強制されて、美奈子の様子を見守ったのだった。


自分の性欲を満足させることは、
自分の子どもの生き死によりも重大なことなのだろうか。
そして、あれが美奈子でなく自分だったら、敏明だったら、
母親はどうしたのだろう。

紗理奈は母親からそうしたテーゼを投げつけられた気がしていた。
(自分の欲望のために、どこまで自分は独善的になれるのだろう……。)

しかし、そのテーゼ自体に間違いがあるのかもしれなかった。
(自分の欲望のためなら、どこまでも自分は独善的になれる。)
もしも麗子がそう思っていると仮定したなら、
美奈子を前にした麗子の行動はごく当然の行動ということになるのだ。


紗理奈には、当然のことながら、まだ子どもはいない。
しかし、時として、
それでも自分の命と引き換えにしてでも守りたいと思う命があった。
美奈子の命。敏明の命。
そして、時には真奈美の命だった。

そんな自分を生み、ここまで育ててくれた母親には、
自分の命を捨ててでも守りたい命はないのだろうか。
そんなまわりの命よりも、
いや、もしかすると自分の命よりも、
セックスによる快感や快楽を、大切なものと考えているのではないだろうか。

その疑念は、まさしく母親の存在そのものに対する疑念へと変わっていった。
そして一つの疑念はさらに別の疑念を生む。

暴漢たちは、なぜかしら紗理奈をすぐに襲うことはしなかった。
紗理奈自身、暴漢たちの登場があまりにも突然であったことと、
自分たちのことについて妙に知っていることについて、妙な違和感を抱いていたのだ。

つまりそれは、麗子と美奈子を襲いながら、
自分のことを放っておくということ自体に、
何かしらの謎が隠されているのではないかと紗理奈は感じた。

しかし、予想もしなかった香澄の訪問に、麗子も紗理奈も心底慌てた。
征爾は香澄が家に来るということを麗子にも紗理奈にも伝えていなかったのだ。

(よりによって、こんな時に……。)
既にバイブオナニーに没頭していた美奈子を除いた2人は、
香澄の不幸を呪ったのだった。

しかし、暴漢たちはここでも不思議なことに、
来客者の香澄と微妙な距離を保っていた。
いきなり襲ったりせず、香澄が状況を掴むための時間的な余裕を与えたとも言えた。

その間、紗理奈は父親への連絡を試みて、失敗し、辱められることになる。
しかし紗理奈がいまだに理解できないのは、
自分がスマフォを父親に連絡をした瞬間を見計らったかのように、
背後からスマフォを取り上げられ、
そのスマフォは田辺の手へと渡った。
通話状態のままのスマフォを耳に当て、
田辺は何やら話をしていた。

もしかすると、それが征爾への脅迫だったのかもしれない。
あるいは、今の状況を告げ、征爾に何らかの要求、
つまりは薬のデータを渡すように脅したのかもしれなかった。

しかし、紗理奈が聞き取った僅かな言葉は、
そうした脅し文句などではなく、あまりにも意外な言葉だった。

「では、例の計画通りに。」


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