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下屋敷、魔羅の競り合い
【歴史物 官能小説】

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艶之進、気張る肉刀-4

 さて、次なる競り合いは、四阿(あずまや)にほど近い草地に緋毛氈を敷いた所、そこで行われるようだった。幔幕が四面を覆っていたが、中に入ってみると二十畳ほどの広さで、内側から幔幕を見ると、四枚全てに春画、言わば男女交合の図が極彩色で大きく描かれてあった。

『格天井の女陰の絵といい、この幔幕といい、綾乃の悪趣味には困ったものだ』

 艶之進が苦笑していると、当の本人、下屋敷の奥様が幔幕を押し上げて入ってきた。老女の嵯峨野が仏頂面で付き従う。ゆかたびらを着た二人の腰元たちも一緒である。そのうちの一人は先程、艶之進の相手を務めた凜であった。もう一人は凜によく似た面差しの娘で、姉妹かもしれなかった。さらに見届け人が二名、試合開始の太鼓を運び込む者など、数名がぞろぞろと続いた。
 綾乃が床几に腰掛けると、

「では、三戦目の趣旨を説明いたす」用人が声を張り上げ、一瞬、間を置いた。上のほうで鳶の声がしていた。「こたびは、一戦目と同様、腰元を多く逝かせた者の勝ちじゃ。ただし、一人の腰元に二人掛かりで挑んでもらう」

「二人掛かりだと? そりゃあどういうことだ?」

 力蔵の半身がせり出した。

「この衆人環視の中、魔羅をおっ立て、交情するというのは、ある程度の剛胆さがなければ出来ぬこと。おぬしらは見事それを成し遂げ、この三戦目まで勝ち抜いてきた。しかし、一人の女を二人同時に攻めることは簡単なようでその実、容易ではない。一対一の時に比べて気が散るからの。それでも見事に勃起して女に挑み、十分に気をやらせることが出来るか……、それを見るためじゃ」

 用人の言葉を理解したのかしないのか、参戦者四人は黙っていた。その様子を見ながら綾乃はほくそ笑んでいた。

『本当の助平は、二人掛かりであろうが三人掛かりであろうが、裸の女を目の前にすればむしゃぶりつくもの。ここまで勝ち上がった者はその助平に決まっておる。この三戦目は、ただ単に、複数の男女の組んずほぐれつを、わらわが眺めたいだけのこと……』

 すると、二倫坊が聞いた。

「誰と誰が組むか、それはまた、くじ引きで決めるのかい?」

「さよう」用人が答えた。「手っ取り早く、くじ引きでそれぞれの組の人選をいたす。……ということで、さっそく引いてもらおうかの」

 紙縒(こより)が差し出され、艶之進ら四人は銘々選んで手に取った。
 
「『ら 壱』と書いてあるぜ」

 真っ先に力蔵が大声を出した。

「拙者は『り 壱』じゃ」

 艶之進が続く。

「おれは『り 弐』だな」

 二倫坊が言って、最後は小夜之丞がつぶやいた。

「『ら 弐』ですね」

 用人が奥様に一礼して言った。

「これで、ら組、り組の人選が決まりましてござる。ら組は力蔵、小夜之丞。り組は艶之進と二倫坊。この組み合わせで第三戦を争ってもらいまする」

 艶之進は力蔵と組まなくてすんだと安堵の溜め息をついた。
用人の言葉が続く。

「ら組の力蔵と小夜之丞には、こちらの腰元、蘭をあてがう。り組の艶之進と二倫坊には、もう一人の腰元、凜をあてがう。ちなみに、蘭と凜は双子じゃ。顔も似ておるが、あそこの造りも瓜二つ。凜は二戦目に於いて艶之進の相方となり女陰が火照っておるが、蘭は別室にて当家の剣術指南役から肉棒の稽古を受けておったので、これまた開(ぼぼ)は十分に潤っておる。二人の身体に差異はない。これは、競技に公平を欠くことが無きようにとの、奥様のご配慮じゃ」

「それは分かりましたが……」珍しく小夜之丞が言葉を発した。「こちらの組とあちらの組。勝ったほうの二人が決勝に進めると、そう考えてよろしいのですね?」

 用人はこっくりと頷いた。すると、力蔵が吠えた。

「おれの魔羅で女がヨガるのは当たりめえだが、そのおかげでこの小夜之丞とかいうやさ男も次へ進めるってえのは、何だかしゃくだぜ」

「あ、いや、二人力を合わせるという技量を見るのも競技の趣旨の一環で……」用人はあまり文句を言うなと力蔵へ目配せする。「獅子舞のごとく二人ひと組で見事な動きを見せるのが肝要で……」

「獅子舞と魔羅くらべと、どんな関係があるってんだ」

 怒鳴る力蔵のそばへ用人が慌てて駆け寄り、小声で囁いた。

「これ、力蔵どの。先ほどこっそり金子(きんす)を渡したであろう。騒ぎ立てず大人しくしているようにと……」

「へっ……、あれっぽっちの金じゃあ帰りの駕籠賃にもなりゃあしねえ」

「贅沢を申すな……」

 しかし、力蔵は用人を無視して叫ぶ。

「やっぱり二人掛かりってのが気にくわねえ。こんな仕組み、誰が考えたんだ? え?」

 すると、老女の嵯峨野が何か言おうと恐い顔で進み出た。が、それを押しとどめ、綾乃が立ち上がった。

「わらわが考えたのじゃ。この朱引き内魔羅くらべの勝者に渡す五十両はわらわの金。主催者の指図に文句は言わせぬ。それともそのほう、気に食わぬと、この場で棄権するか?」

「棄権? そんなことするわけがねえ。せっかくここまで来たんだ。決勝まで行って見事勝って、奥様よ、おまえさんを、おれの真珠魔羅でひいひい言わせてやるぜ」

 老女が「無礼者!」と叫ぶ。一瞬の沈黙が流れる。
 二倫坊が気まずい雰囲気を和らげるように言った。

「ま、ともかく、やってみようぜ。二対一というのも乙なもの……。ところで奥様にお尋ねしますがねえ」

「なんじゃ?」

「男二人に一人の女、ということは、腰元をどのように攻めてもいいのでございますね?」

「そうじゃ」

「……前の穴だけでなく、後ろの穴も?」

 奥様が用人を見て、薄く笑った。彼女の代わりに用人が答える。


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