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アイドリング2ndシーズン
【フェチ/マニア 官能小説】

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アイドリング2ndシーズン-11

チャプター11



 そんな出来事があった二日後、熱も下がり、すっかり元気を取り戻した友里はレンタルショップの事務所に呼び出された。体調不良で休んでいるあいだに、友里をレンタルしたいという客が殺到したらしいのだ。

「すごく言いにくいんですけど、もう辞めようかと思うんです」

 深刻な顔で友里が言うので、店長は腰を抜かしそうないきおいで仰天した。バイト仲間の藤崎も顔面蒼白で伸びている。二人とも何か勘違いしているようなので、友里は訂正する。

「辞めるっていうのはお店じゃなくて、あたしの貸し出しのほうです」

「そっちの話だったか。それならよかった。友里ちゃんのいないレンタルショップなんて考えられないもんね」

 店長の機嫌が直った。

「そうそう。神社に巫女さんがいないのと同じだよ」

 意味不明だが、藤崎の調子も戻ったようなので一安心だ。

「ところで店長、あたしのアパートに差し入れが届いていたんですけど、店長がお見舞いに来てくれたんですか?」

「いいや、僕じゃないよ」

「じゃあ、藤崎くん?」

「まさか」

「ですよね」

 少し棘を立てておどける友里に、藤崎が文句を言おうとするが、そこへ店長が割り込んできてこんなことを言う。

「そういえば友里ちゃんに会いたいっていうお客さんが来てね、熱を出して休んでるんですって教えてあげたら、その彼、それじゃあお見舞いに行ってみますなんて言うんだよ」

「それ、一昨日の話ですか?」

「うん。正午くらいだったかなあ。なかなかの二枚目だっからおぼえてるよ。まあ、僕は男には興味ないけどね」

 おそらくその人物が差し入れを届けてくれたのだろう、と友里は思った。しかもアパートの住所を知る人物となると、かなり絞られてくる。

 そっか、あたしに会いに来てくれたのは、あの人だったんだ──友里は淡い気持ちに浸りながら鏡の前でポニーテールを結い、遠く離れた場所から声援を受け取ったつもりでレジに立った。

 すると間もなく入り口の自動ドアが開き、一人の紳士が颯爽とやって来たのだが、癒やしに満ちたその笑顔と対面した瞬間、友里の心臓が早鐘を鳴らし始めた。

「いらっしゃいませ」

「すみません。じつは僕、どうしても借りたいものがあって一昨日にもここへ来てみたんですけど、なかなか見つからなくて困ってるんです」

「そうでしたか」

「見つからなくて当然なんです。だってそれは、目に見えないものなんですから。いや、これから見えてくるもの、と言うべきでしょうか」

 何のことだかわからずに友里が黙っていると、紳士はあの日と同じようにマーガレットの花を手の平に出現させ、よく通る声で愛の言葉を添える。

「水越友里さん、もし迷惑でなければ、君の未来をレンタルさせてください。できれば無期限で」

 友里は、「えっ」というふうに右手で口を隠す仕草をした。その場に居合わせた数人の客も足を止めて恋の行方を見守っている。

 誰もが二人を祝福し、ハッピーエンドを願っているに違いなかった。

 


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