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下屋敷、魔羅の競り合い
【歴史物 官能小説】

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艶之進、奮う肉刀-3

「魔羅の検分はいいが、それは、だらんとしたのを見るのか、それとも、かちんかちんになったのを見るのか、いったいどっちなんだ?」

  用人がおもむろに閉じた扇子で親玉を指し示した。

「そのほう、名は?」

「おれは千住一円を縄張(しま)に持つ青背の力蔵だ。……何? おれ様を知らねえってか?」

 力蔵はいきなり立ち上がると、パッともろ肌を脱ぎ、用人にグイッと背中を向けた。

「知らねえなら、今、その目ん玉にこの彫り物を焼き付けやがれ!」

  堅太りのその背中には、渦巻く雲から目を剥いて顔を突き出す昇竜の入れ墨が一面に彫られていた。皆が固唾を呑む中、用人も一瞬気圧されたようだが、また咳払いをすると鷹揚に答えた。

「力蔵とやらの問い、もっともである。魔羅は勃起したものを検分する。勃起しても四寸三分(約13p)に満たぬ者はその場で失格、即座に退場して頂く」

「待ちな待ちな」力蔵がまた吠えた。「勃起というがなあ、魔羅を調べるにも、そう簡単に立つわけがねえ」

 皆がコックリと頷いた。

「あ、いや、心配無用でござる。ここに控えし二名の腰元が、そのほうたちの魔羅を検分いたす」

「ほう……、その姐ちゃんたちかい。けっこう別嬪だが、おれはそう簡単にはおっ立たねえぜ」力蔵はニヤリと笑った。「せめてその綺麗なおべべを脱いで、すっぽんぽんにでもなってもらわねえとな」

  しかし用人、少しも騒がず、

「ふむ、当然のことじゃ。それくらいのことは、わきまえておる」

 左右に目配せをすると二人の腰元はスッと立ち上がり、着ている物を脱ぎ始めた。やがて一糸纏わぬ姿になった彼女らは、じつに見事な身体をしていた。双方とも背が高く乳房はたっぷりとした量感で、腰は適度に引き締まり、突き出た尻は何人でも子を生みそうな立派なものだった。陰毛の下からはわずかだが大陰唇の合わせ目が覗いており、二人とも上付きのようだった。

『そういう女は組み敷いて、本手(正常位)でどんどん攻めるに限る』

 艶之進は、喘ぐ彼女らを思い描き、早くも魔羅の疼きを覚えていた。

「さて、腰元たちも裸になったことだし、さっそく魔羅くらべをば始めようぞ」用人が厳かに言った。「この両名の検分に合格した者だけが隣の座敷へ移動することが出来る。そこでは敷きのべた夜具の上で各自一人ずつ腰元を抱いてもらう。半刻(一時間)の間に何回腰元の気をやらせるかを競うのじゃが、詳しいことは後ほど申し伝える。……さあ、おのおのがたは壁際に立ち並び、着物、下帯を外してもらいたい。両端より腰元たちが検分して参るゆえ、各自、心して魔羅を滾(たぎ)らせよ」

「ちょいと待ちな!」

 力蔵が声を張り上げた。

「またそのほうか……。何じゃ、申してみよ」

「両端から一人ずつなんて、かったるいことぬかすんじゃねえ。もっと人数を増やしな」

「左様、あと二名ほど検分の腰元を追加して下され」

 艶之進が口をはさむと、

「いいや、あと四人だ!」

 力蔵が邪魔をするなとばかりに叫び、艶之進を睨みすえた。彼も力蔵に(何だこの野郎)という顔つきをしたが、

「よろしい」用人が二人を制するように声を発した。「あと四名、腰元を呼ぶとしよう」

 パンパンと手を打つと、襖を隔てて、

「かしこまりましたー」

 くぐもった若侍の声が応えた。用人は座りなおし、扇子を広げてゆっくりと喉元を扇ぎ始めた。

「おのおのがた、追加の腰元が参るまで今しばらくお待ちあれ。……ところで、そのほう」用人の目が艶之進に注がれた。「そのほう、確か、先日の細川越中守の御前試合に出ておったのう」

「……はあ、御存知でございましたか」

 艶之進は少し面はゆい表情を見せた。

「ちょうど所用があって細川家の上屋敷に参っておった。いや、あの試合は惜しかったのう。紙一重の差じゃった。しかし破れたからといって恥じることはないぞ。何しろお主に勝った木村虎之助は北辰一刀流免許皆伝の腕前じゃからのう。お主も天然理心流の達人というではないか」

 用人の言葉に、周りの者がざわめいた。ひとり力蔵だけが「けっ」と吐き捨てるような顔をしていた。

「そのような腕前のそこもとが、魔羅くらべなどにも参加するとはのう……」

 用人の目に、わずかだが憐憫の色が浮かんだ。

「そ、それは……」

 艶之進はうつむき返答に窮したが、勢いよく顔を上げると挑むように大きな声で答えた。

「拙者、素浪人ながら、文武両道ならぬ性武両道を極めんと欲しましてな、この腕を、いや、この肉刀を試そうと思い立ったわけでござる。ワッハハハハハ」

 艶之進は笑いながら心の中で用人に舌打ちをした。

『高禄を食み、二日に一度の出仕で日々を安穏と暮らしている用人めが。おまえにはその日暮らしの浪人の気持ちなど到底分からないだろう。ふん、今に、目にもの見せてくれる。見事五十両を勝ち取り、江戸一番の魔羅の持ち主の称号を名乗ってみせるぞ』

 艶之進は拳を握りしめた。
 そこへ四人の新たな腰元が姿を見せ、用人の指図でためらうことなく着物を脱ぎ始めた。先程といい今といい、ここの腰元たちは脱ぎっぷりがいい。今日のために厳しい指導がなされたか、はたまた余程の淫乱娘たちを集めたものか。ともかく見る見るうちに皆、生まれたままの姿となった。

「ほおーー」

 男どもの溜息が漏れた。総勢六名の美しい腰元の裸体が居並ぶ様は壮観で、早くも下帯の前を膨らませている男も二、三人いた。

「さて、これで準備が出来申した。さ、おのおのがた、下帯を解き一列に壁際に並びませい!」

 用人の声が上がると、後ろのほうで、ドドンッと太鼓が大きく鳴った。すると、艶之進の背後で居眠りをしていた坊主頭がむっくりと起き上がった。


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