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ある復員兵の夏
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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ある復員兵の夏-4

 妻に続いて後ろから出てきたのは、見知らぬ壮年の男。
 ずんぐりと小柄な男だ。肥満体とまでは言わないが、この物資不足の状況を鑑みれば随分と栄養の行き届いた体格をしている。身なりは一般的な白シャツとズボンだが、いかにも狡猾で下品な雰囲気の持ち主であることは、遠目からでもよく窺い知ることができた。
「くっ……!」
 正一は咄嗟に身を翻すと、近くの草むらで息を潜めた。
(な、何だ? 何なんだ、あいつは……?)
 頭の整理もおぼつかないまま、微動だにせず二人の様子を見つめる。
 圭子は腰を抱かれるような体勢で男に密着すると、特に嫌がる素振りもなく家屋に隣接した小さな納屋へと入っていった。
「っ……」
 正一は周囲に誰もいないのを確認すると、銃弾を避けるような体勢で身を屈めながら納屋の窓辺にそっとへばりついた。
「……」
 気配を殺し、さびれた建物の内部にそっと目を向けてみる。
「!!」
 直後、正一は後ろから頭をがんと殴られたような衝撃を受けた。
「んっ……んんっ、んんーーーっ!」
 鮮やかな橙色の陽光がスポットライトのように差し込むその先に見えたのは、立ったままで男の剛直に貫かれる、妻の姿。
「そら、そら、そら、そら」
「んっ、んんっ、うぅん、んっ!」
 圭子は服に右腕を突っ込まれたままスカートをまくり上げられ、左足を膝から抱えるように持ち上げられていた。さらけ出された柔らかな脚部と、反るようにしなった足の甲でひらひら舞う白の下着が、不思議なほど眩しく輝いて見える。
「なっ……んなっ……!」
 正一にとって、それはあまりに信じがたい光景であった。
 目の前がみるみるうちに真っ暗になって、足元もおぼつかない。ちょっとでも気を抜けば、そのまま倒れ込んで意識を失いそうな気がした。
「圭、子……」
 近くのカフェで給仕をしていた圭子を見初めた、あの日。
 周囲の反対を押し切って結婚を決めた、あの時。
 息子にも恵まれ幸せな家庭を築いた、あの頃。
 懐かしくも美しい数々の思い出が、正一の脳裏をぐるぐると、走馬灯のように巡る。
「なん、で……?」
 引き絞るような声が、胃の奥から漏れた。
 何とかなると、思っていた。
 徴兵されても、死んだことにされていても、とにかく戦争は終わり、自分はこうして無事に帰ってきたのだ。
 命さえあれば、苦しくてもまたやり直すことができる。
 正一は今の今まで、何の疑いもなくそう信じていた。
 ――なのに。


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