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テレビ出演
【二次創作 その他小説】

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テレビ出演-2

矢に刺さった的に書かれているのは『ワカメちゃんカット』
「えっ・・・」
杏子は茫然とした。
他のヶ所を見ると『0.5ミリ丸坊主』『スキンヘッド』『刈り上げおかっぱ』『モヒカン』とどれもバリカンカットの髪型ばかり。
「ワカメちゃんカットが決まりました!早速カット準備に入りましょう!」
「えっ・・・ええー!」
既に椅子が置かれ、ワゴンには鋏とバリカンと櫛とシェービングクリームとカミソリがスタンバイされていた。
「な・・・なんでっ・・・」
「さあ座ってね」
司会者に無理やり座らされ、このまま白いカットクロスを巻き付けられた。
(ランダムとは聞いていたけど・・・まさかこんな髪型にっ・・・)
杏子は泣きそうになったがぐっと堪えた。
「それではカットの達人!どうぞ!」
カットの達人が姿を見せると観客席から歓声が上がった。
「お嬢ちゃん、バッサリと行きますよ!」
達人がハサミを持つと左側の髪に鋏が入った。
バサバサと2回鋏を下しただけで耳上まで切りそろえられた。
「キレイな栗色の髪だね、刈りがいがあるよ」
容赦なく鋏を入れて行き前髪もまっすぐに額が見えるまで切られた。
さらにボリュームも落として耳上からトップまでの髪を結べないほどまでに落とされた。
(今時こんな髪型・・・笑われちゃうよ・・・)
テレビ出演と言うことはいずれこの番組は放送される。
いくら深夜番組とは言えども誰かが見てしまう可能性だってある。
さらには動画サイトに挙げられることもある。
杏子はもっと早く気付くべきだったと後悔している中、バリカンの音が響いた。
「次はがっつりと刈り上げるよ」
杏子の頭を固定するとうなじからバリカンが入った。
真ん中よりも上まで進んで行き栗色の短髪がわさっと床に落ちて行った。
杏子は必至で涙を堪えていた。
(泣くものですかっ・・・)
唇を噛み締めて堪え続けた。
耳上まで刈り上げるとバリカンのスイッチは切られた。
ブラシで髪を払いのけ、シェービングクリームを刈り上げ部分に塗って剃刀で丁寧に反り上げた。
「ううっ・・・」
初めてのバリカンと剃髪に杏子は最後の最後で耐えきられず涙をこぼした。
後頭部とサイドが剃り上がるとカットクロスが外された。
「さあ!どうでしょうか!」
スタンドミラーが出され、ようやく自分の姿が見られた。
「嘘・・・何でこんな髪型に・・・」
耳上からトップまではボリュームの無い栗色の髪、耳上からうなじまでは0ミリに剃り上げられた情けないヘアースタイル。
観客席からはドッと笑いが響いた。
杏子は恐る恐る剃り上げた部分を撫でた。
ツルツルした触感から徐々に上まで上げて行くとボリュームの無い髪が感じた。
「さあ?気に入りましたか?」
「気に入りませんよ・・・こんなのっ・・・」
いつもなら強く怒れるがとてもそんな気分にはなれなかった。
遊戯達仲間にテレビの事を伝えなかったのは不幸中の幸いだったが放送したらいずれバレてしまうのは目に見えていた。
「さあさあ、まだテレビは続いていますよ、次のコーナーは得意分野の披露です」
もう最後までやるしかなかった。
杏子はダンスを披露したがワカメちゃんカット姿にダンスなんか杏子にしてみればただのモノマネにしか見えなかった。
「ありがとうございました!素晴らしいダンスですね!」
「ありがとうございます・・・」
「この調子でダンサーとしての道、頑張ってくださいね」
「はい・・・」
どうにか最後まで終わらせることが出来た。
カツラはもらえてキャラもたっぷりと貰えたが杏子にとっては嬉しくなかった。
夢は一気に近づいた。
しかしこの番組で名を上げてもダンサーとして活躍することは出来るだろうか?
この不安だけが付きまとっていた。

案の定、放送日の翌日に動画サイトで挙げられていた。
しかしドミノ高校の生徒と教師たちは断髪系に関しては興味はなくむしろ険悪感を抱く者達ばかりだったので杏子がテレビに出たことは誰も知らずに済んだ。
またほとんどの人たちも断髪系のは外や人前では口に出さないため杏子を知っていても声をかけることはせず素通りしていた。
杏子はひとまずは安心した。
「オーディションは髪が伸び揃うまでお預けね・・・」
杏子はそっと呟いた。


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