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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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アナルヴァージン喪失 (1)-1

 下着姿の妻が、鏡の前で身だしなみをチェックしている。

 年齢相応の慎ましさと可愛らしさを兼ね備えたランジェリーがよく似合う。
 脇の下から肉を寄せブラジャーのカップに収め、Vゾーンの左右にはみ出た陰毛を指で押し込む。と思ったら、クロッチ部分をそっとつまんでガニ股で何かもぞもぞやりはじめたのは、秘唇に絡まり突っ張った陰毛を解きほぐしているのだろうか。滑稽な動作で下(しも)の体裁を整える美人は、どことなくエロチックである。

 朝の遅い私は、出社準備でいそいそ動き回るゆきをベッドの中から覗き見ている。

 若い頃からひと回りボリュームの増した尻肉を持ち上げ、ショーツの中にするりと収める。パツンパツンになった布地が丸い尻にぴたりと張り付き、ぷるんと揺れる。
 続いてストッキング。身をかがめ尻を突き出したとき、妻の股間から陰毛がまだ少しはみ出ているのが見えた。本人には見えない部分なので仕方ないが、あんなに確認していたのにと思うとちょっと可笑しいし、これだけの美貌を持つ女がふさふさの陰毛を湛えている事実に興奮してしまう。

 黒のストッキングを穿くと下半身全体がきゅっと引き締まる。美脚と美尻がより強調され、我が妻ながらすらりと格好いい。ストッキングの下に透けて見えるショーツもいやらしくて良い。ゆきは、夫に気持ち悪い目線で視姦されているとも知らず、手際よく「本日のオフィスコーデ」を完成させていく――。

 年の瀬も押し迫った十二月。
 今日、ゆきはまたFに抱かれる。

 先月の再会以来、三度目のデートになる。相手も既婚者とあってペースはZほどではないものの、今回わざわざ示し合わせて午後半休を取得しデートするという妻は、気のせいかウキウキしているようにも見える。
 そういえば昨夜も夫婦の営みを終えた後きちんとシャワーを浴び直していたし、今朝は今朝でわざわざショーツを穿き替え、それとお揃いのブラジャーを着用していたゆき。Fに渡された例のランジェリーでないことにほっとしつつも、私にはあまり見せることのない、いわゆる勝負下着を選ぶところに、妻の中の「女」を感じてしまう。

 こういった何気ない「デート仕草」がいちいち堪えるのだ。セックスで激しく乱れる姿よりも、私以外の男ににっこり微笑んだり、恥ずかしそうに手を繋いだり、抱かれたときに自分も男の背中に手を回してみたり、キスするときに唇が尖らせたり、可愛いと言われて表情がぱっと輝いたり、そういった何気ない瞬間にこそ気持ちが抉られるのが、私という人間である。

「おはようゆき。デートの準備?」

 化粧台の奥から「浮気用」コンドームを補充しポーチにしまうところを狙って私は起床した。

「あ、パパおはよう。もう、変なとこで起きてこないでよー」
「へー、FさんもXLサイズなんだ」
「うん。Zくんと同じで助かるー」
 手にもった箱をカラカラ振ってみせるゆき。皮の剥かれた巨大バナナの写真があしらわれている。
「じゃあ俺も含めて全員同じので済んじゃうってことか」
「いーえ。愛する夫のだけは特別なものを用意してるに決まってるでしょ? ほらこれ」
「おいバカやめろ。わかったから出さなくていい」
 ゆきが引き出しからもうひとつ取り出した箱には皮を被ったポークビッツの画像。しかもシワシワにしなびてお辞儀している。
「なんだよそれ。売る気ないだろ、そのメーカー」
「あら。私が買うのはいつもこれよ?」
「選ぶほうも頭おかしい」
「なんでー? 可愛いのにー……ってあれもうこんな時間! いかなきゃ! 朝ごはんは昨日の残りだから!」

 フレックス勤務で八時出社のゆきは、七時過ぎには家を出る。前日の家事当番が、翌日の朝食を決定し――といっても「夕食の残り」か「食パンとブロッコリー」か「シリアル」のせいぜい三択――実際に子どもたちに提供するのは、出勤の遅い私の役割である。

「じゃあ、あとよろしくねー」

 不倫デートしてくる人妻とは思えぬほど、健康的かつ爽やかに出かけるゆきを玄関で見送る。

「今日はクリスマスデートだね。楽しんできて」
 クリスマスまであと十日ほど。きっと街を歩くだけでロマンチックなデートになるのだろう。
「うん、ありがと。七時には帰るね」
「もっとゆっくりしていいのに」
「そうね。でも明日も早いから」
「そっか。プレンゼント交換もするの?」
「大したものじゃないけど。いちおう買ってある」
「えー? 見たい!」
「うふふ。ひ、み、つ」
 まったくいつの間にそんなものを。Fのことを想いながらプレゼントを選ぶ妻の姿を想像するだけで辛い。
 なにかひとこと言ってやりたかったが「二人して仕事干されないように気をつけて」などとつまらない嫌味を言うのが精一杯だった。

 もちろんゆきは余裕しゃくしゃくで、心配ご無用とばかりにスカートをひらりとなびかせて行ってしまった。

  *

 実際なんの心配も要らないのだろう。ゆきもFも不倫に溺れず、憎らしいほどきちんと社会生活、家庭生活を営んでいる。夜遅くまで楽しんだのも結局最初の二回だけ。

 三回目のこの日のデートでは、なんとホテルで仕事をしていた。まずは入室してすぐ、着衣のままセックスを一度済ませ、その後打ち合わせ。ノートパソコンをパチパチやったり電話する音もさかんに聞こえてくる。一段落するとまた怪しげな雰囲気に変わり、やがて湿ったキスやフェラチオの音がしてセックスが再開される、といった具合である。セックス中に電話がかかってきて、挿入したまま応対するなんていうこともあった。

 燃え上がった不倫カップルにありがちな破滅的な行動は取らない。二人それぞれに築き上げてきた幸せと社会的地位があるのだから当たり前かもしれないが、終始節度を持って「大人の恋愛」を楽しんでいるのだ。


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